宮澤賢治、風の世界

宮澤賢治の作品を彩る言葉と風を追って宮澤賢治の世界を訪ねよう。 賢治は風という言葉に何を託したか。風を描くためにどんな言葉を選んだか。 賢治は何を求めて風の中に身を置いたのだろう。 そこに少しでも近づきたくてページを埋めていく。
 
永野川2021年4月中旬
16日 11:00〜13:00 薄曇 15℃
  日曜日に行こうと思っているのですが雨の予報なので、少し遅れましたが出かけました。
 赤津川の工事は、橋梁工事を残すのみとなり、水も増えてきました。
 今日のトピックスはバンです。
 赤津川、栃木陶器瓦の前で1羽、橋の下流で1羽、見事に額板が赤くなっていました。バードリサーチのお話では今年はバンが少ないとのことです。ここでも昨年の11月以来です。その前は3月、9月でした。これは河川工事によるもの、と思っていましたが、数としても少ないのかも知れません。水とともに来てくれました。
 ヒバリも赤津川両岸で2羽くらいの声3カ所で元気です。
 カワウも戻って、バンのいた水域に2羽、もう1羽が下流に向かって飛んで行きました。
 シメの声、確かに聞き分けられるようになりました。滝沢ハムの近くのサクラ、公園のサクラで2カ所、まだ3羽確認出来ました。シメは自分で確認出来るようになった鳥なので、見つけるのは嬉しいことです。
 公園の芝生で、ツグミが転々としていて、12羽まで確認出来ました。木に飛び乗ったり下りたり、遠くへ移動する様子ありません。そろそろ渡りの準備で集まっているのでしょうか。
ウグイスの囀りも増えて来ました。滝沢ハム付近林、大岩橋河川敷林、山林、永野川、水道庁舎前、睦橋付近、二杉橋付近と大体昨年と同じ場所で囀っていました。二杉橋〜上人橋間は休工中の所もあって戻って来たのかも知れません。
 ワンド跡でホオジロの地鳴き、少し離れたサクラ並木で囀る個体確認。季節が変わっていきます。
 今日のもう一つのトピックスは、鳥では無いのですが御衣黄です。水道庁舎の庭に変わったサクラがあり、記憶にあったのですが、最近これが御衣黄かも知れないと知りました。
 今日見ると確かに薄緑色の花びらが控えめで,いくらか薄桃色の部分があり、美しいものでした。20年近くも通っていて、緑色を見たのは初めてです。
 御衣黄を見たいと言っていて人がいたのを思いだし、早く教えてあげられればよかったと思いました。栃木女学校に在籍していた吉屋信子『花物語』の第八作「鬱金桜」に登場する鬱金桜も同種で,栃木女学校に植えられていたといわれます。しかし、「鬱金桜」には「黄蝶のごとく散りかゝりしは、鬱金桜の葩」という記述があります。御衣黄も鬱金桜も散り際は白いので、これは作者の言葉の彩なのかも知れません。栃木女子高に見に行ったときは既に枯れていました。
 このサクラも、少し元気がない気もします。もっと手入れをして、観光資源にすればよいのに、と思います。
 実は20日に、もう1度見に行きました。
 もうすっかり白と桃色に変わっていて、緑の片鱗もありませんでした。でも最後を飾るように華やかに咲いてました。
 八重桜は満開で、まだ散るのを我慢しているようです。色も薄くなって私としては快く眺められ、満開の花の大きさは華やかさも飛びきりです。
 
 
カルガモ:赤津川で2羽、2羽、公園東池7羽、西池4羽、永野川上人橋〜二杉橋3羽計18羽。
コガモ:赤津川9羽、1羽、6羽、滝沢ハム池4羽、計20羽。
 
カワウ: 赤津川2羽、1羽、計3羽
バン:赤津川で1羽、1羽、計2羽。
キジバト:滝沢ハムから公園の樹木に向かって2羽。
アオサギ: 赤津川岸辺で、1羽、2羽、計3羽。
ダイサギ: 赤津川1羽。
イカルチドリ: 永野川睦橋下で1羽。
モズ:赤津川河畔で1羽、公園芝生の木で1羽、計2羽。
カワセミ:
コゲラ:滝沢ハム林で1羽、 公園サクラ並木で1羽、計2羽。
ハシボソカラス・ハシブトカラス:とくに目立ちませんでした。
ヒバリ: 赤津川西岸田で2羽+ 栃木陶器瓦店付近で2羽+計4羽+
ツバメ: 二杉橋〜上人橋4羽、公園2羽、1羽、滝沢ハム林2羽、1羽、赤津川1羽、2羽、1羽、1羽、計15羽。
ヒヨドリ:数は増えているが目立った群れを見なかった。
ウグイス:滝沢林1羽、大岩橋河川敷林1羽、山林1羽、1羽、永野川水道庁舎前1羽、睦橋付近1羽、二杉橋付近1羽計7羽。
スズメ:あまり目立ちませんでした。
セグロセキレイ:赤津川で1羽。
カワラヒワ:公園川で水浴び1羽。
ムクドリ: 滝沢ハム林で7羽。
ツグミ:公園芝生で12羽、赤津川で1羽、滝沢ハム林で1羽、計14羽。
ホオジロ:公園ワンド跡で地鳴き1羽、サクラ並木で囀り1羽、計2羽。
イカル:公園で囀り1羽。
シメ: 滝沢ハムクヌギ林で1羽、公園サクラ並木で2羽、計3羽。
 
20日
永野川赤津川 13:30〜14:30 晴 22℃
 午前中出られず、午後、ちょっとだけでかけました。
 一つの目的は、御衣黄です。もう一つはバンです。
 4日前に見た緑の片鱗もなく、白とピンクの花に変わっていました。今まではこの色を見ていたのです。
 公園と赤津川のみ廻りましたが、バンはいませんでした。
 
カルガモ:公園池には10羽(東)、3羽(西)赤津川で2羽のみ。
コガモ:赤津川で12羽。
キジバト:公園で1羽、大岩橋河川敷林で2羽。
ウグイス、大岩橋河川敷林で1羽、谷渡りで鳴いた。
ツグミ:公園のサクラ並木で、樹上で5羽、大岩橋河川敷林で1羽。
シジュウカラ:公園サクラ並木で1羽
セグロセキレイ、公園の川で1羽,滝沢ハム林で1羽。
ハクセキレイ、赤津川で1羽。
ホオジロ、大岩橋近く田で1羽。
 







永野川2021年4月上旬
3日 晴 18℃ 
錦着山 9:30〜10:00
 ヒヨドリが15羽、賑やかでした。
  東側のモミジとサクラで、メジロが6羽ほどで囀っていました。
  シジュウカラも3羽確認できました。
 もっとたくさんいてもいいと思いますが、意外と鳥が見えません。
 
赤津川、永野川 10:00〜12:00
 3月下旬後半に来られなかったので、初認ではありませんが、トピックスはツバメです。栃木工業高校の南の田で1羽、二杉橋の近くで3羽、1羽確認しましたが、少ない気がします。
 
 赤津川の工事は、橋の架け替え工事2カ所だけとなり、水も少し戻っていました。
 どこかでキジの声が聞こえました。また土手の草地に雄が1羽飛び出しました。滝沢ハム池近くでもペア、大岩橋河川敷林でもペア、もう繁殖期になったのかも知れません。
 カルガモも赤津川ではペアが5組、永野川でもペア2組、と目立ちました。
 
 上空をアオサギが1羽悠々と飛んでいきました。久しぶりにダイサギも2羽、1羽、と戻ってきました。水が増えて来たせいでしょうか。
 ヒバリはいつもの西側の田で3羽ほどの声、それと少し上流の陶器瓦の手前の東岸でも2羽ほどの声が聞こえました。
 滝沢ハム林で、メジロの囀りが聞こえました。囀らないときは姿を確認出来ず、残念です。
 イカルの囀りがクヌギ林で聞こえました。見つけようとしたのですが、姿は確認できませんでした。1羽だけ残ったのでしょうか、賑やか、という感じはなく、少し淋しそうに聞こえました。
 カワセミも戻ってきました。公園の川で小さな声が何回も聞こえ、待ちました。でもそこでは認出来ませんでした。もう一度、二杉橋少し上で、鳴き声と共に、川から岸に飛び移る姿が見えました。
 公園の川で久しぶりにカルガモ10羽、3羽が確認出来ました。
 公園のワンド跡で、ここでは初めてコジュケイの声が聞こえました。あちこちの工事で環境が変わり、場所を移動しているのかも知れません。
 公園の西池には何もいませんでした。東池にヒドリガモ8羽、カルガモ5羽、ぐっと少なくなりました。
 睦橋付近、中洲でイソシギ1羽、首を振るいつもの姿でかなりゆっくりと歩いていてくれました。久しぶりです。川と水平くらいに少し低く飛ぶ姿も見えました。
 二杉橋少し上は水が多く、コガモ8羽、2羽、ハクセキレイ1羽と久しぶりに賑やかでした。
 第5小のサクラでは、今日の唯一のツグミ、カワラヒワの囀り、鳥は敏感の水の豊かさに反応して動くのでしょうか。人の作った環境の中で、鳥たちは巧みに、しっかり生きていくのです。
 ソメイヨシノが桜吹雪を作っていました。紅しだれは満開、八重桜は色濃い蕾を大きくしています。広葉樹の芽吹きが始まり、これから最も美しいになります。
 
キジ:赤津川で声1、田で♂1羽、岸の土手で ♀1羽、滝沢ハム付近で2(ペア)、大岩橋河川敷林で2(ペア)計7羽。
コジュケイ:公園ワンド跡草地で声1羽。
カルガモ:赤津川で2羽、2羽、2羽、3羽、2羽、2羽、滝沢ハム池で3   
 羽、公園川で10羽、3羽、公園東池5羽,永野川上人橋〜二杉橋2、1、2、計39羽。
コガモ:赤津川2羽、滝沢ハム池で3羽、二杉橋付近で8羽、2羽、計15 
 羽。
ヒドリガモ:公園の東池8羽。
アオサギ: 赤津川上空1羽。
ダイサギ: 赤津川2羽、1羽、計3羽。
イソシギ:永野川睦橋付近1羽。
モズ:赤津川河畔で1羽。
カワセミ: 公園川で1羽,二杉橋上で1羽、計2羽。
ヒバリ: 赤津川西岸田で3羽+ 栃木陶器瓦店付近で2羽+、計5羽+。
ツバメ: 栃木工業高校付近で1羽、二杉橋付近で3羽、1羽、計5羽。
ヒヨドリ:数は増えているが目立った群れを見なかった。
ウグイス:二杉橋付近で1羽、公園草地で1羽、計2羽囀り。
スズメ:数は多いようだが、あまり目立たない。
ハクセキレイ: 二杉橋付近で1羽。
セグロセキレイ:公園で1羽、睦橋付近で1羽。
カワラヒワ:第五小桜の木で1羽囀り。
シジュウカラ:公園で2、大岩橋河川敷林で2羽、計4羽。
メジロ: 滝沢ハム林で2羽囀り。
ツグミ:第五小サクラで1羽。
イカル:滝沢ハムクヌギ林で声のみ1羽。
 
10日
永野川赤津川 10:00〜12:00 晴 15℃
 先回が3日と少し早かったので、もう一度出かけてみました。 よく晴れて風もなかったのですが、肌寒い日になりました。
 二杉橋付近はかなり水が戻って、カルガモのペア4組と1羽、コガモ3羽が採餌していました。
 ホオジロが東岸の草むらで地鳴き、ウグイスも2羽囀っていました。
 
 今回のトピックスはやはりツバメです。
二杉橋すぐ上で、1羽、1羽、1羽、と分散して飛んだほか公園で3羽、3羽、滝沢ハム付近林1羽、2羽、、赤津川で4羽、計16羽。数は増えてきていますが、以前のような大きな群れはまだ見えず、イワツバメもまだいません。初回を見落としたので、気にかかるところです。
 ヒヨドリの7羽の群れが上人橋付近で横切って行きました。
 公園の池のカモは減ってきています。カルガモが東池6羽、西池で3羽、ヒドリガモが西池6羽、7羽、ヒドリガモは渡りが始まり、カルガモも場所を移しているのでしょうか。
 ツグミも公園で1羽、滝沢ハム池付近で水に濡れた1羽を発見。色が変わっていて一瞬見分けがつ来ませんでした。数はめっきり減って、もう渡ってしまったのかも知れませんが、少し早い気もします。
 滝沢ハムクヌギ林で、イカルの囀りと地鳴きを1羽ずつ聴き、シメも2羽確 認出来ました。渡りが遅れて残ったのでしょうか。
 公園のサクラ並木を通るとコゲラの声が2カ所で聞こえました。ここはいつも見るようにした方がよいのかも知れません。
 赤津川の工事は大分終わったのですが、今日は一カ所工事車両が道にあって通れないところがありました。対岸から見ると廃屋の大木にモズが見えました。ここもいつも鳥が多いところなので、今度はうまく外さないようにしたいと思います。
 種類の多様さを実感させるようにサクラがそれぞれの時期に咲き、次々にバトンタッチしていきます。今は色濃い八重桜が七分咲きです。
 いつもサクラの時季に、紛争地を思います。サクラが咲き、石油がなければ、子供たちはもっと幸せになれるのではないかと。でもそれはサクラが咲ける気候がないと言うことなのでしょう。
 明日は都合がつかないのですが、今度はなんとかして日曜日、工事のお休みの日にきてみたいと思います。
 
キジ:赤津川で声のみ1羽。
コジュケイ:公園ワンド跡草地で声のみ17羽。
カルガモ:赤津川で5、2羽、3羽,滝沢ハム池で2羽、公園東池6羽、西池3羽、永野川上人橋〜二杉橋2羽、2羽、1羽、2羽、2羽、計30羽。
コガモ:二杉橋付近で3羽。
ヒドリガモ:公園の西池6羽。
アオサギ: 赤津川岸辺で、1、1、計2羽。
ダイサギ: 赤津川1、1計2羽。
トビ:公園上空で1羽。
モズ:赤津川河畔で1羽。
コゲラ: 公園サクラ並木で2羽。
ハシボソカラス・ハシブトカラス:特に目立った群れはない。
ヒバリ: 赤津川西岸田で4羽+ 栃木陶器瓦店付近で2羽+、計6羽+
ツバメ: 二杉橋〜上人橋1羽、1羽、1羽、公園3羽、3羽、滝沢ハム林2羽、1羽、1羽、赤津川4羽,計17羽。
ヒヨドリ:数は増えているが目立った群れを見なかった。
ウグイス:二杉橋付近で2羽、公園草地で1羽、大岩橋河川敷林で1羽、1羽、計5羽。
スズメ:数は多いがあまり目立った群れは見ない。
ハクセキレイ: 公園芝生で1羽。
セグロセキレイ:赤津川で1羽。
カワラヒワ:公園川の対岸の木で3羽、赤津川で7羽、計10羽。
ツグミ:公園芝生で1羽、滝沢ハム林で1羽、計2羽。
ホオジロ:第五小付近川岸の草むらで1羽地鳴き、公園ハリエンジュで幼鳥1羽、大岩橋付近で1羽。
イカル:滝沢ハムクヌギ林で囀り1羽、地鳴き1羽計2羽。
シメ: 滝沢ハムクヌギ林で2羽。
 







「楢ノ木大学士の野宿」―風のもとに広がる大地、 命あるものたちの声
 「楢ノ木大学士の野宿」は、宝石商から極く上等の蛋白石(オパール)を見つけてくるよう依頼された地質学士の「楢ノ木大学士」が、葛丸川周辺とみられる山に分け行って、様々の地学的体験をする様が描かれ、大正12年ころの作と推定されます。
 賢治は大正7年(1918)3月15日、盛岡高等農林学校卒業と同時に盛岡高等農林学校盛教第八号により「地質土壌、肥料」研究のための研究生として在学することが許可され、地質調査を行っています。
年譜(注1)によると、この年の地質調査は次のように行われました。
4月10日から稗貫郡年調査決まる。
4月15日から20日:花巻近郊調査、豊沢、鉛温泉、台温泉 (書簡53父宛、1918年4月)
5月1日から5月3日:石鳥谷、葛丸川沿いに割沢、割沢より石鳥谷(書簡60父宛、1918年5月2日)
7月21日〜25日:豊沢川、葛丸川、岳川、稗貫川林業調査
9月21日〜26日:稗貫郡東北部土性調査
この間、6月に肋膜炎と診断されて山行きは中止するように薦められ、申し出により8月に実験指導補助の職を解かれますが、保阪嘉内宛書簡83(1918年7月25日)では、予定された地質調査だけはするという意志が述べられています。
 またこの時期、家業の質・古物商を継ぐことを嫌い、将来的な仕事として、地学に関する仕事―セメントの原料を掘り当てて売る、県内産の土石、ウラニウム、チタニウムの生成、香水、油類の抽出など―をあげています。(書簡72父宛 1918年6月)また人造宝石への関心を持っていました(書簡131父宛 1919年1月)。このような賢治の思いも、作品の根底にあるものと思います。
 
 この作品の舞台は5月の地質調査地です。
 歌稿B668(大正七年五月より)「葛丸/ほしぞらは/しづにめぐるを/わがこゝろ/あやしきものにかこまれてたつ」は、この時の心情を詠みこんでいます。
 野宿第一夜、「ラクシャン四人兄弟」と名づけられた周辺の岩頸が、地球の創成という大きな規模で話し合っている場面に出会います。岩頸火山体の大部分浸食されたあとに、火道埋めていた溶岩火砕岩浸食から取り残されて塔状に突出し地形を言います。この場所について、細田嘉吉氏の論考(注2)がありますので、簡単に援用させていただきます。
 早川典久『岩石鉱物鉱床学会誌』(日本岩石鉱物鉱床学会 1952)からの引用として、「第四紀の始めころ、第三紀の地層を突き破って現在の北の股沢と西の股沢の合流点付近に火口を持つ葛丸元山 (仮称) ができ、その後葛丸元山が陥没して葛丸カルデラをつくった。その時の外輪山は噴火と崩落を繰り返して、現在の青ノ木、高狸、無名峰、塚瀬、権現、諸倉など、葛丸諸山を形成した。」とあり、賢治の没後30年近い著作ですが、賢治はこの作品制作時に既にここの事実を看破していたのではないか、と思われます。
 第一子は青ノ木森、第二子は高狸山、第三子は無名峰、第四子は横瀬森、4兄弟が「生まれるときになくなられた」父親は葛丸元山、となります。
さらに第四子が想いを寄せる「ヒームカさん」は東方にあって「カンランガン」(橄欖岩)が水と作用して蛇紋岩になった日向居木山(ヒナタオリギ山)、「ヒームカさんのおっかさん」は蛇紋岩の早池峰山としています。
 擬人化された四人兄弟の岩頸―怒りっぽく未だに噴火を目論む第一子、睡っている第二子、優しい第三子、遙かに見える山ヒームカに憧れている第四子―話しています。楢ノ木大学士が聞いているのを前提で話していると言う設定もユーモアが感じられます。
 自分たちが地殻の底で岩漿や蒸気の力で瞬間に地上へ飛び出して誕生することや、九つの氷河を持っていた四人の父や、自分たちを削っていく水や空気のことを語ります。語りながら、怒りっぽかった第一子も穏やかな気分になっていき、自分たちを削って行く空気や水のことを語りながら「きらきら光って」笑うのが印象的です。突然起こる野火、岩頸たちは色めき立ちますが、最後には飛んでいた鷹の子供の心配するまでに穏やかな気持ちになっています。
 ここには風の言葉は三例あります。

  鷹によく似た白い鳥が、鋭く風を切って翔けた

 楢ノ木大学士が見た地上の風景です。鷹の飛翔の鋭さを「風を切る」ことで描きます。
 
「ヒームカさんのおっかさんへは白いこぶしの花をあげたんだよ。そしたら西風がね、だまって持って行って呉れたよ。」    
 
 おとなしい第四子が敬愛する山への花のプレゼントについての表現です。あげたものは、一枝のコブシなのか、花の香りか、それとも白い花の輝きなのか、はっきりしませんが、風が運ぶのは、きっと「白いこぶしの花」すべてなのでなはいかと思わせます。
 
今こそ地殻ののろのろのぼりや風や空気のおかげで、おれたちと肩をならべているが、元来おれたちとはまるで生れ付きがちがうんだ」
 
 これは、噴火の後、地上で岩頸に変化をもたらす風、「風化」を意味するものです。
 
……地殻の底の底で、とけてとけて、まるでへたへたになった岩漿や、上から押しつけられた古綿のやうにちぢまった蒸気やらを取って来て、いざといふ瞬間には大きな黒い山の塊を、まるで粉々に引き裂いて飛び出す。/煙と火とを固めて空に投げつける。石と石をぶっつけ合わせていなづまを起こす。百万の雷を集めて、地面をぐらぐら云はせてやる。……
 
 風という言葉は使われませんが、地底から溶岩を噴き上げる噴火のエネルギーにも風を感じてしまいます。眼に見ぬところで強烈に吹き上げるもの、それも風です。
 
 第二夜では石切場で野宿した大学士に、周囲の石たちの話が聞こえてきます。ホンブレンさん―ホルンブレンド(角閃石)、ジッコさん―磁鉄鉱、バイオタさん―バイオタイト(黒雲母)、オーソクレさん―オーソクレース(正長石)、プラヂョさん―プラヂオクレース(斜長石)と擬人化して描かれます。
 ホンブレさんとバイオタさんが喧嘩、バイオタさんはジッコさんに仲裁を求めます。大学士は話の内容から石たちの種類を確定していきます。これらの話の内容には、晶出順序、結晶の形、風化の知識が正しく織り込まれているといいます(注3)。
 石は次第に風化がもとになって最後には次第に声が聞こえなくなってしまいます。ここで描かれる風は「風化」の比喩です。
 
お前こそこの頃はすこしばかり風を呑んだせいか、まるで人が変ったように意地悪になったね。   
 
その他風にあたれば病気のしょうけつを来します。

うむ、私も、うむ、風病のうち
 
けだし、風病にかかって土になることはけだしすべて吾人に免かれないことですから。けだし。
 
 風の一つの作用として、風化を描いたのは、「風」というものの、多面性を捉えて、なおその上で崇敬の念をえがいたのです。
 
 第三夜では、洞窟に野宿して洞窟人類になったつもりの大学士は、蛋白石のことを忘れこの旅の目的が恐竜の骨格を探すことだったと思い込んだ結果、白亜紀の恐竜、雷竜の足跡を発見、雷竜に遭遇して食べられそうになる夢を見ます。
 賢治は、泥岩層が露出する北上川と猿ヶ石川の合流点から南の北上川西岸を、その白い泥岩層から、イギリスのドーバー海峡に面した白亜の海岸を連想し、イギリス海岸と名づけました。1923(大正12)年作と推定される、童話「イギリス海岸」は農学校の生徒との課外授業の様子を描いたものです。そこでは、そこでクルミの化石や偶蹄類の足跡の化石を見つけたことが記されています。
 そして少し後、1925(大正14)年1月、三陸海岸への旅の際、羅賀(平井賀)の漁港で、露出する白亜紀の地層に直に触れ、船上から海岸線に連なる地層を眺め、白亜紀の地層に、雷竜の化石の存在を確信していたことが、その時の詩「発動機船一」、「発動機船三」(「口語詩稿」)、「発動機船二」(「春と修羅第二集」補遺)に感じられます。
 その後、1978(昭和53)年、その近くの岩泉町茂師の白亜紀宮古古層郡で日本初の恐竜化石が発見され、モシリュウと名づけられました。それは作品中に「雷竜」として登場させていた竜脚類でした。賢治は、発掘のはるか以前に、それを予想し物語を展開させたことになります。
 また〔川しろじろとまじはりて〕(「文語詩稿五十篇」)下書稿、初期短篇「復活の前」などでは修羅意識の具体的イメージとして爬虫類を描きます。そして〔胸は今〕(「疾中」)では、そこからの救済も爬虫類が鳥へと進化することによってなされるという結論に達しています(注4)。
 
 大学士は、上等の蛋白石を収集しないで帰り、宝石商とは喧嘩別れします。大地の声を聞くことで、大地の中に宝石ばかりを求める人間に疑問を持ったのです。
 賢治はその思いも込めて、生成の物語を描いたのではないでしょうか。描かれる風や雲、野原、星も現時点だけでなく、その生成以来という進化論的発展の流れで捉え、作品のスケールを大きくしています。
 さらにここでは岩頸も岩石も皆を命あるものとして描かれ、すべてのものに命を感じ取る賢治の本質(注5)が感じ取れます。書簡10(高橋秀松宛1915(大正7)年、8月29日 遠野ニテ)には
今朝から十二里歩きました 鉄道工事で新ら(ママ)しい岩石が沢山出てゐます 私が一つの岩片をカチツと割りますと初めこの連中が瓦斯だった時分に見た空間が紺碧に変つて光ってゐる事に愕いて叫ぶこともできずきらきらと輝いてゐる黒雲母を見ます 今夜はもう秋です スコウピオも北斗七星も願はしい静な脈を打ってゐます。
 
 この年、岩手軽便鉄道、花巻―仙人峠間が開通しました。鉄道マニアだったと言われる賢治は、すぐに新しく開通した軽便鉄道に乗ったのでしょう。ここには黒雲母を発見した賢治の喜びと重ねるように、黒雲母が命あるもののように描かれ、さらに黒雲母の生成までの50億年の長い歴史までも一瞬にして感じ取っていたことがわかります。第一夜で、暴れん坊の岩頸の第一子が、風によって次第に土となっていく大地を知っても、怒ることなく「きらきらと笑って」いたこととも共通することと思います。
 高橋秀松(注6)によると、盛岡高等農林学校入学当初から土曜日の午後から日曜日の夕方まで泊りがけで鉱物等の標本採集に出かけ、持ち物が五万分の一の地図、星座表、コンパス、手帳、懐中電灯、ハンマー、食料はビスケットをポケットに詰め込んでいたと言われ、大学士がビスケットを食べて夜を過ごしていたことを思い出しました。
 「楢ノ木大学士の野宿」には、壮大な地球の歴史を描きながら、それを感じて生きていた賢治自身の時代をも描いていると思います。
 そして風は、地上という平面と同時に、歴史という縦の世界にも吹いているのを感じることができます。
注1堀尾青史『宮沢賢治年譜』筑摩書房 1991
注2細田嘉吉「地学からみた「楢ノ木大学士の野宿」
(『宮沢賢治研究Annual vol.9』 宮沢賢治学会イーハトーブセン 
 ター 1999)  
注3平澤信一「楢ノ木大学士の野宿」(『宮沢賢治大事典』 
  勉誠出版 2007)
注4大塚常樹「楢ノ木大学士の野宿」(『国文学 解釈と教材の研究』
 48−3 學燈社 2003年2月)
注5「アニミズムの系譜」(浜垣誠司氏HP 2021年3月28日)
注6高橋秀松「賢さんの思い出(一)」
 (川原仁左ヱ門『宮沢賢治とその周辺』1972)
参考:「白亜紀宮古層群」(化石・海底地層) たのはたジオワールドHP
 
    
 
 







永野川2021年3月下旬
26日 9:30〜11:30 晴 15℃ 
  二杉橋から入りました。まとまった雨が降ったので、少し川に水が戻っていましたが、いつもは鳥のいる橋のすぐ上の流入口のところには何にもいませんでした。少し遡ったところでコガモ6羽の、久しぶりで泳ぐ姿を見られました。あまり元気のないウグイスのさえずりが聞こえました。第五小のサクラの木でコゲラが1羽木を叩いていました。
 公園の東池にカルガモ8羽、ヒドリガモ2羽、アオサギ1羽、西池ヒドリガモ14羽、カルガモ3羽で、カモが少なくなりました。
 
 今日のトピックスはカンムリカイツブリです。赤津川で、カワウが舞い降りた先にいた一羽がカワウではなく、冠毛があり色もカワウとは違っていました。カンムリカイツブリです。カワウと同じくらいの大きさに見え、首の白さが図鑑よりはっきりしなかったのですが、冠毛の形は間違いなくカンムリカイツブリでしたから、あるいは第一回冬羽だったのかも知れません。写真を撮ろうとしたのですが、カワウに追われるように飛び去りました。追ってみたのですが、先には工事現場が続いていて、下りる場所もなかったせいか、見失ってしまいました。ここでは初めての記録です。
 水が増えてきたとは云ってもあまり望ましい環境とは言えませんが、飛来してくれたことはとても嬉しいことでした。
 公園の広場の芝生にツグミが合わせて8羽点々として、近くのサクラに次々に飛び移っていきました。そろそろ渡りでしょうか。
 公園のハリエンジュにシメが2羽、このところ群れでは見えません。今日はここのみでした。
 シジュウカラが賑やかで、ハリエンジュに5羽、ワンド跡の草むらで1羽、滝沢ハム付近で5羽、計11羽となりました。シジュウカラの声は元気で楽しいものです。
 久しぶりに、公園の川を横切ってヒヨドリが8羽移動していきました。
 ホオジロの声が公園の対岸の草地で3羽分くらい聞こえました。
 カワラヒワは公園の川付近では3羽、滝沢ハム林では3羽でしたが、赤津川には、38羽の群れと8羽の群れ、計52羽となりました。いつもながら群れの飛ぶ様は黄色が冴えて美しいものです。
 公園のエノキに動きがありキジバトが1羽、少し離れたところでモズ1羽、   
モズも動き出したようです。
 大岩橋上では川まで工事が進み、工事車両が出入りするので、養護施設の手前までで、あとは進めませんでした。
 山林で甲高い声がするので見ると、ノスリが1羽、トビと争っていました。トビとノスリの羽の対照的な模様をはっきりと見ることができました。
 大岩橋から河川敷を見ると、アオジが3羽木々の間を飛び交っていました。川ではイカルチドリが1羽鳴いていました。
 どこかでイカルのさえずりが聞こえたので、いつもの滝沢ハムのサザンカ垣根に行ってみましたが全くいませんでした。公園にいたのかも知れません。反対側の道を通ればよかったのかもしれません。
 滝沢ハムの池にはカルガモ7羽、コガモ2羽、ダイサギ1羽、このごろここも鳥が少なくなりました。
 赤津川でも水が増えてきて、セグロセキレイ1羽、貴重な今日の1羽です。
田にもヒバリが戻っていました。
 
 日曜日は河川工事がお休みなので、今度はなんとか都合を付けて日曜日に来てみようかと思います。鳥の交代時期を逃したくありません。
 ツバメには会いませんでした。
 ヒメオドリコソウが一斉に咲き出し、森の小人の群れのようです。ソメイヨシノは5分咲き。これからが見頃です。
 
カルガモ:滝沢ハム池で2羽、公園東池8羽、西池3羽、赤津川で4羽、5羽、5羽、計32羽。
コガモ:赤津川1羽、3羽、滝沢ハム池で2羽、二杉橋付近で6羽、計12羽。
ヒドリガモ:公園の東池2羽、西池14羽、計16羽。
カワウ: 赤津川で1羽。
カンムリカイツブリ:赤津川で1羽。
キジバト:公園エノキで1羽。
アオサギ: 公園東池1羽。
ダイサギ: 滝沢ハム池1羽。
イカルチドリ: 大岩橋付近で1羽の鳴き声
トビ: 赤津川1羽、大岩橋付近山林で1羽。計2羽。
ノスリ: 大岩橋付近山林で1羽。
モズ:公園で1羽、滝沢ハム林で1羽、計2羽。
コゲラ: 第五小桜の木で1羽。
ハシボソカラス・目立った群れはいなかった。
ハシブトカラス:公園で7羽のむれ。
ヒバリ: 赤津川の田で4羽+
ヒヨドリ:公園を横切って8羽の群れ。」
ウグイス:二杉橋付近で1羽、公園草地で2羽、計3羽。
スズメ:数は増えているが目立つ群れは見えない。
セグロセキレイ:赤津川で1羽。
カワラヒワ:公園で3羽、滝沢ハム林で3羽、赤津川で38羽、8羽、計52羽。
シジュウカラ:公園で3羽、2羽、1羽、滝沢ハム付近林2羽、3羽、計11羽。
ツグミ:公園芝生で8羽。
ホオジロ: 公園草地で3羽。
アオジ:大岩橋河川敷林3羽。
イカル: 公園で声のみ1羽。
シメ:公園ハリエンジュで2羽。
 
付記
27日に、永野川の下流、町田橋付近(大平町真弓)でツバメ2羽と会いました。
もう、緑地公園にも来ているかも知れません。
 
 







永野川2021年3月中旬
18日  晴 12℃ 
錦着山 9:30〜10:00
少し肌寒い日です。
あまり鳥影がありません。
頂上の草むらでホオジロ1羽、ウグイスの地鳴きと、カケスの声が聞こえました。
北面の木で、シメ1羽のみでした。
 
永野川赤津川 10:00〜12:00
錦着山裏、田の上空でトビ1羽かなり低空を旋回して羽の模様も見えました。
田ではヒバリにぎやかに囀っていました。このごろ赤津川よりもこちらの方がにぎやかです。ここは住宅地に囲まれた狭い田ですが、ヒバリにとっては魅力のある場所なのでしょうか。
赤津川は橋の架け替え工事二カ所、護岸工事三カ所で、ほとんど水がありません。水のある場所で、カルガモ7羽、コガモ11羽、よく水のある場所を探して集まるものだと感心しますし、同情します。
ホオジロが囀っていました。
滝沢ハム付近林まで来ましたが、シジュウカラが1羽のみでした。
 
大岩橋から河川敷を眺めていたら、林が動き、カシラダカ1羽、ジョウビタキ1羽、見つけることができました。
山林でエナガの声が聞こえ暫く待っていましたが、姿は見えませんでした。ウグイスが地鳴きしていました。涼しくなったせいか、或は雌だったのか分かりませんが、今日は全く囀りは聞こえませんでした。ちなみに栃木女子高付近、その少し南の我が家でもこの頃よく囀っています。
公園の川は幾分水が増えてきました。
対岸で何か小さな声が聞こえ、もしかしてカワセミ?と見ていると、岸の低木に飛び移る姿を捉えることができました。横向きで鮮やかな青は見えませんでしたが、川が戻ってきたようで嬉しくなりました。
上空をハシブトカラスが10羽舞っていました。確実にこの頃増えています。
公園の芝生に来て、今日初めて、ツグミが3羽駆け回っていました。
ハリエンジュにシジュウカラが3羽、元気な声に少しホッとします。
 
公園の東池で、ヒドリガモ47羽確認、この数にもホッとします。
カルガモは4羽のみ、全体でも15羽に止まりました。
イカルやシメの群れも見られませんでした。そろそろ旅立ちでしょうか。
カワヅザクラはほぼ満開です。
 
カルガモ:赤津川で1、4羽、2羽、滝沢ハム池で2羽、公園東池4羽、二杉橋付近で3羽計15羽。
コガモ:赤津川、9羽、2羽、滝沢ハム池で3羽、二杉橋付近で7羽、計21羽。
ヒドリガモ:公園の東池47羽。
カイツブリ: 公園の東池で1羽。
トビ: 赤津川1羽、公園上空2羽、計3羽。
モズ:赤津川で2羽。
カワセミ: 公園池の対岸樹木に1羽。
ヒバリ: 錦着山裏田で4羽+
ヒヨドリ:声は聞こえるが目立った群れは見えない。。
ウグイス:大岩橋河川敷林で1羽地鳴き。
ムクドリ:睦橋付近で3羽。
スズメ:あまり目立ちませんでした。
ハクセキレイ:
セグロセキレイ:赤津川で1羽、公園で1羽、1羽、計3羽。
カワラヒワ:公園で10羽、赤津川で8羽、2羽、計20羽。
ムクドリ:睦橋付近で3羽。
シジュウカラ:滝沢ハム付近林2羽、大岩橋河川敷林で2羽、公園ハリエンジュで3羽、計7羽。
エナガ:大岩橋河川敷林3羽。
ジョウビタキ:大岩橋上林に1羽。
ツグミ:公園芝生で3羽。
ホオジロ: 赤津川で、1羽囀り。
カシラダカ:大岩橋河川敷林で1羽。
シメ:滝沢ハム林で1羽