宮澤賢治、風の世界

宮澤賢治の作品を彩る言葉と風を追って宮澤賢治の世界を訪ねよう。 賢治は風という言葉に何を託したか。風を描くためにどんな言葉を選んだか。 賢治は何を求めて風の中に身を置いたのだろう。 そこに少しでも近づきたくてページを埋めていく。
 
永野川2025年11月下旬
24日 9:30〜12:00 晴 16℃

 風がほとんどなく歩きやすい探鳥日和です。
 合流点で工事はお休みだったので歩いてみました。遠く永野川のワンドの近くにヒドリガモが2羽、カイツブリが1羽見えました。
 
 久しぶりで、赤津川でケリ1羽見つけました。どこからかケリらしい声がしきりに聞こえ、しばらく待ち、遠くの畔にハト大の影を見つけ双眼鏡でやっとケリと判明しました。少しして飛び立ち羽の白さで確実になりました。
 近くにダイサギ2羽、耕運機の作業についてい歩いていました。
 
 カルガモが久しぶりに戻ってきて22羽、上空を5羽、安心しました。
 ここでは珍しいキセキレイが1羽、セグロセキレイと争うように動いていました。
 水田にいろいろな鳥が入り混じって飛んでいました。カワラヒワ5羽、スズメ7羽判別し、みな飛び去っていきます。
 水田を少し大きめの鳥がゆっくり歩いていて、タヒバリでした。ビンズイの特徴も捉えられない中で、場所からタヒバリと思います。高い空を名前を判別できない小鳥が30羽ほどの群れで飛んで、悔しい思いをしました。
 
 今日は、鳥たちがにぎやかで、滝沢ハム付近のサクラ並木ではシジュウカラが7羽、鳴きながら動いていました。コゲラも近くにいました。
シメも3羽、林の方へ移動していきました。
 
 大岩橋の上から、河川敷の草地を見ました。林の無くなったのは悲しいのですが、今日はそこにたくさん小鳥たちの群れと声を聞きました。
スズメが多かったのですが、一瞬マヒワの群れが飛びこみました。1羽が上の方にとまっていてまぎれもなく鮮やかな黄色い個体でマヒワでした。   先日の記録が間違いではなかったようで、少し安心しました。

 永野川は静かで、鳥影も少なかったのですが、二杉橋の少し上で少し長い事ホバリングしている小さな影があり、一瞬水に飛び込んだあと石にとまりました。カワセミが小さな光る魚を咥えていました。カワセミも久しぶり、魚を取る姿もほんとに久しぶりでした。以前は、公園の川の岸は低木やヨシなどで砂留されていて、流れも豊かで、カワセミの採餌がよく見られたのでした。
 二杉橋付近の永野川もすっかり変わってしまいましたが、鳥たちを支える魚の健在なのがわかり嬉しくなりました。
 公園から太平山を眺めると、それぞれに紅葉が静かに始まっていて、暖かな日差しが、すべてを包んでくれるような、充実した探鳥になりました。
 
カイツブリ:合流点1羽。
カルガモ:赤津川22羽、5羽、公園東池19羽、西池10羽、6羽、 
 計62羽。
ヒドリガモ:合流点2羽、公園西池34羽、東池6羽、計42羽。
コガモ: 赤津川3羽、公園東池19羽、計22羽。
ダイサギ:合流点1羽、赤津川1羽、1羽、大砂橋1羽、永野川1羽、1羽、 
 計6羽。
アオサギ:赤津川1羽、1羽、2羽、滝沢ハム池1羽、計5羽。
ケリ: 赤津川水田1羽。
イソシギ:赤津川1羽。
モズ: 赤津川1羽、大岩橋河川敷1羽、計2羽。
カワセミ: 永野川二杉橋付近1羽。
コゲラ:滝沢ハム付近サクラ並木1羽。
スズメ:合流点15羽、赤津川7羽、大岩橋河川敷25羽、計47羽。
ハシボソカラス:合流点1羽。
ハシブトカラス:合流点1羽、赤津川1羽、計2羽。
ヒヨドリ:滝沢ハム林2羽、
ウグイス:滝沢ハム付近1羽、大岩橋河川敷1羽、永野川1羽、計3羽。
セグロセキレイ:赤津川1羽、3羽、公園3羽、計7羽。
ハクセキレイ: 合流点1羽。
キセキレイ: 赤津川1羽。
タヒバリ: 赤津川水田3羽。
カワラヒワ:赤津川4羽、滝沢ハム林16羽、公園35羽、計55羽。
マヒワ: 大岩橋河川敷21羽
シジュウカラ:滝沢ハム付近サクラ並木7羽、大岩橋河川敷1羽、3羽、
 計11羽。
ツグミ: 公園エノキで2羽。
シメ: 滝沢ハム付近で3羽。

 
 







永野川2025年11月中旬
 15日 9:00〜11:30 晴 16℃
 
  風もなく絶好の探鳥日和です。
 睦橋から川へ出ると、セグロセキレイが4羽、縺れるように飛んでいました。少し下ると、ハクセキレイが1羽現れ、キセキレイも混じりました。ここはセキレイの名所?周囲は頑丈な護岸ですが幾らかの中州と、草地があるせいなのでしょうか。
 公園の東駐車場の樹木がかなり色づいてきたので、小鳥に会えないか、と回ってみましたが見えませんでした・。
 公園の川に先に回ると姿は見えないのですが。キョッキョッキョという声が岸の草むらから聞こえます。川沿いまで行ってしばらく待ちましたが、声は続いていたのですが姿は見えませんでした。先週の上流ですからクイナはここで棲息しているのでしょうか。クイナが目的でビギナー探鳥会に見える方もいるので、ぜひ長くいてほしいです。
 カワラヒワが15羽くらい北から飛んできて川を越えて児童遊園の方角へ飛びました。更に別の群れが30羽ほど上流に飛んでいきました。風の流れのように鳥が飛び交い、北からシメ3羽岸の大木に飛び込みました。今季初です。

 池に行ってみました。東池にはカルガモ4羽、1羽、カルガモが極端に少なく今日はこれだけでした。コガモは5羽、何とか確認しました。 西池には日ヒドリガモが33羽、やっと増えてきました。
 カイツブリが1羽元気なのが救いでした。
 もう一度川の高い土手を戻り、ふと川の方を見るとカワラヒワが15ほど舞っている中にワシタカが1羽見えました。カワラヒワを追っているのでしょうか。ハト大ですが、下面から見えて、白っぽく細い尾には黒い横線があり、この地域だとおそらくハイタカだと思います。念願のワシタカを見ました。
 土手の広葉樹の中にシジュウカラが飛び交っていましたが、じっと動かない大きめの1羽、ツグミでした。初飛来です。これからはますます枝の中をみる力をつけなくては。
 今日は双眼鏡を手にした方に出会って、少し話すことができました。アカゲラなども見ているそうで、頻繁に歩いているのかと思いました。またお会いできればいろいろお話しできるかな、話下手で臆病な私は、なかなかうまくいきません。
 今日は最高のお天気の中、鳥の飛翔が素晴らしかったのですが、もっと確実に鳥名を当てなくてはなりません。
 
カイツブリ:公園西池1羽
オオバン:
カルガモ:公園東池5羽。
ヒドリガモ:公園西池33羽。
コガモ: 公園東池1羽、3羽、1羽、計5羽。
ダイサギ:合流点1羽、公園1羽、大砂橋付近1羽、滝沢ハム池1羽、
 計4羽。
アオサギ:永野川睦橋付近1羽、合流点1羽、計2羽。
ハイタカ:公園で1羽。
モズ: 赤津川1羽、公園1羽、計2羽。
コゲラ:滝沢ハム付近サクラ並木2羽。
スズメ:永野川二杉橋〜睦橋7羽、公園25羽、計32羽。
ハシボソカラス: 永野川二杉橋〜睦橋2羽。
ハシブトカラス: 公園1羽。
カケス: 大砂橋付近林縁で1羽。
ヒヨドリ:公園3羽、大岩橋付近3羽、滝沢ハム林5羽、計11羽。
ウグイス:公園草むら1羽。
セグロセキレイ:永野川二杉橋〜上人橋4羽、1羽、1羽、1羽、
 大砂橋付近2羽、赤津川2羽、計11羽。
ハクセキレイ: 永野川睦橋付近2羽。
キセキレイ: 永野川睦橋付近1羽。
カワラヒワ:公園15羽、15羽、30羽、計60羽。
シジュウカラ:公園エノキで3羽。
エナガ: 公園サクラ並木で3羽。
ツグミ: 公園エノキで1羽。
ホオジロ: 公園草むら1羽。
シメ: 公園エノキで3羽。
 

 







二、外山詩群の言葉たち
 背景は、夜、目的地、種馬検査所に向かいながらひたすら歩く林の中、風は様々な感覚でとらえられる。音、味、色、香り、その他の印象、と多様を極め、後の詩群での表現とは違って一つの特徴を示す。ここに賢治の共感覚的表現が生まれたのではないかとさえ思われる。
 詩の流れに沿って展開する様々な風の風景を、追ってみると、T音 U色と香り V透明化する肉体 W味 X組成 Z光と香り [月光とエステル \感触 ]日の出と希望, Ⅺ明るい風、かぐはしい風、「やさしい化性の鳥」と「石竹いろの時候」と―賢治の現実、になろう。一つ一つ考えてみよう。
 
T
 ◎風のやうに峡流も鳴る
 〔どろの木の下から〕 一九二四、四、一九、では、作者の歩行の始まり、林の中にいて、川の流れの音を聞いている。他の多くの作品のように、作者は風に吹かれてはいない。遠くで聞こえる渓流の音に対する直喩である。
 川は遠く目にすることはできないが、静かに続けて流れてくる音は風の音に似ている。遥かな距離を渡ってくる音として風に喩えたのだろうか。
 詩の締めくくりの言葉として、小さな一つの安心の表現だろうか。

U色と香り
 ◎青い風、紫蘇の香り
 
 「一七一 〔いま来た角に〕 一九二四、四、一九、」では、青く香りを持つ風が描かれる。
 
  ……シャープ鉛筆 月印/紫蘇のかほりの青じろい風……
 
 前章でふれたように、「シャープ印鉛筆」はないが、すでにシャープペンシルは徳川家康の時代に輸入され、日本でも1877年、三菱 小池で製造され1915年年早川から繰り出し式鉛筆として発売された。 
一方、月印鉛筆は1908年ドイツ、ステッドラー社の鉛筆が岩井商店から輸入されている。(注ジャパンアーカイブス1850〜2100)   
 1914年には真崎市川鉛筆で製造された「ウイング(羽車印)」も「月星印」である。当時、鉛筆は大切なもの、貴重なものとして、童話「みじかい木ペン」、「風の又三郎」にも描かれ、賢治がいつも鉛筆を携えて湧き上がる詩情をノートに書き留めていたことはよく知られている。
 ふと自身を振り返り携帯している鉛筆を眺め、周囲の風を確認したのであろうか。「青白い風」は忍び寄る夜更けの風の冷たさ、そこから紫蘇の香りを連想したか、冷たさに紫蘇を感じたか、どちらかであろう。高原の林の中に、実際に紫蘇が自生することはないであろう。
 
 ◎うゐきゃうの香りの風
 
……だまって風に溶けてしまはう/このうゐきゃうのかほりがそれだ……
 ここでも「うゐきゃうのかほり」の風が一つの風景を作る。
溶けてしまいたい風、そして「骨、青さ」につながる風と眠り。鈴の音、これは眠さの中の心象だろうか。
 「うゐきゃう」(ウイキョウ)はセリ科ウイキョウ属ウイキョウで、ハーブとしての名、洋名はフェンネル、独特の香りを持つ。
香辛料として栽培、葉、種、肥大した株元も使われる。茎葉の旬は5月から10月である。 中国から10世紀に日本に伝来し、江戸時代には主に薬用として用いられた。
 ウイキョウの香りを伴う風である。シソと同様、山中に自生するという確証がない。
 「うゐきゃう」は下書稿及び手入れ稿七稿にすべてあり、賢治の納得いく表現だったようだ。
 もう一つ、賢治が詩に描くものに、「ミヤマウイキョウ」がある。こちらは セリ科シラネニンジン属ミヤマウイキョウで、亜高山帯から高山帯の岩場に生える高山植物、本州では早池峰山、至仏山−中部地方などに生育する。 葉がウイキョウに似ているので命名された。ミヤマウイキョウが登場する詩は 早池峰山を描いた「山の晨明に関する童話風の構想(定稿)(「春と修羅第二集」)では
 
……みやまうゐきゃうの香料から /蜜やさまざまのエッセンス そこには碧眼の蜂も顫える
さうしてどうだ /風が吹くと 風が吹くと 傾斜になったいちめんの釣鐘草 (ブリューベル) の花に……
 
があり、この作品を改稿して作品番号日付を失ったもの(春と修羅第二集補遺)、 〔水よりも濃いなだれの風や〕(下書稿)補遺、にも「みやまうゐきゃう」が使われる。これを文語詩化した〔水と濃き雪崩の風や〕下書稿一、下書稿二「早池峰中腹」では、「うゐきゃう」になっている。これは音律を考えてのことと思う。
 早池峰山は1917m、橄欖岩や蛇紋岩でできていて高山植物の宝庫となり、外山高原は標高800mの高原地帯で、植生は明らかに違い、二つを混同はしないであろう。賢治は農学系の勉強をしているので、栽培植物としての「うゐきゃう」、「フェンネル」を知っていたと思われ、この詩では、風の印象から細い葉の密生する「うゐきゃう」という言葉を当てたのであろう。
 
V体にしみこむ風、透明化する体
同詩で 
……
風……骨、青さ、/どこかで鈴が鳴ってゐる/どれぐらゐいま睡ったらう
……
 
 作者の意識の底には眠気がある。林の中をひたすら歩くなかで、風によって目覚めるが、ここに現れる「骨」はなにか。身近には、骨に染みてくるような林の空気、あるいは寒さ、ととれる。「青さ」も身に染みる空気でなないだろうか。
 さらに小川には斧が落ちていて、連想は友達につながり、さらに風景は透明な風、木の葉、自身も透明になり「骨」といったのかもしれないが、生身の人を感じさせる言葉である。
 
W味
 ◎酸っぱい風
 さらに同詩では
 
……なんでもそらのまんなかが/がらんと白く荒さんでゐて/風がおかしく酸っぱいのだ……/風……とそんなにまがりくねった桂の木……
 
 同時に「酸っぱい風」も登場する。林はますます深くなり、頭上の空が見えるだけなのであろう。11時ころ曇、とあるので、月の光も漏れてこなくて、「白く荒んだ」空だったのか。風は、その心情と風景を映して「おかしく酸っぱい」と表現される。感じられるのはマイナスイメージである。
 「酸」は、すっぱいこと。また、すっぱいもの。また 水溶液中で水素イオンを放出する物質、電離して水素イオンを出し、塩基を中和して塩を生じる物質である。
 賢治の詩中では、腐敗などを連想する「酸っぱい」というマイナスイメージと化学物質の形状からくる印象を形容に使う場合がある。化学を専攻した賢治ならではの知識と詩的感覚とが相まって多くの形容を生み出しているといえる。
 範囲を広げて、『春と修羅』、「春と修羅第二集」に登場する「酸」は、肥料の名前として 燐酸、過燐酸石灰の二例がある。化合物の名前としてカルボン酸 仮睡珪酸2例、希硫酸、炭酸瓦斯、酸素、脂肪酸、水酸化礬土、炭酸二例、無水亜硫酸、燐酸、珪酸、硼酸、がある。
 
 ……雪沓とジュートの脚絆/白樺は焔をあげて/熱く酸っぱい樹液を噴けば……
 
 この外山詩群の最後の詩「北上山地の春」では、樹液の形容として、風景のあかるさのなかでは、新鮮なイメージを持つ。
 

Y光と香り 
 ◎香り
 「七三 「有明  一九二四、四、二〇、」では、明け方の月に目が向けられ、同時にそこに香りを感じていく。
 
……月は崇厳なパンの木の実にかはり/その香気もまたよく凍らされて/はなやかに錫いろのそらにかゝれば
東の雲ははやくも蜜のいろに燃え/……/あゝあかつき近くの雲が凍れば凍るほど/そこらが明るくなればなるほど/あらたにあなたがお吐きになる/エステルの香は雲にみちます/おゝ天子/あなたはいまにはかにくらくなられます
 
 下書稿一のタイトルは「普光天子」である。普光天子は法華経における三光天子の一つ、金星を神格化したものである。法華経『序品』には、 「爾その時に釈提桓因、其その眷属二万の天子と倶なり。復、名月天子、普香天子、宝光天子、四大天王有り。其の眷属万の天子と倶なり」があり、日天・月天・明星天の三天を仏法守護の神として説き、日天(太陽)・月天(月)・明星天(星)の三つをいい、天とは「神」を意味する。
 下書稿一では、「お月さま」という呼びかけではじまり一夜共に過ごした月の運行が意志をもって人に働きかけることへの賛歌を歌う。
 エステルは 有機酸または無機酸のオキソ酸と、アルコールまたはフェノールのようなヒドロキシ基を含む化合物との縮合反応で得られる化合物で、単にエステルと呼ぶときはカルボン酸とアルコールから成るカルボン酸エステル (carboxylate ester) を指すことが多い。また、低分子量のカルボン酸エステルはバナナやマンゴーの果実臭を持つ。
 明けがたの月光に香果物の香りを感じたことになる。前詩の香りよりも明るく心地よい香りは、今まで共に歩いた月への賛歌による香ではないだろうか。
 
Yモナド
 七三「有明」では明け方の月の光が描写される。空は昼へと変わり始め、目覚めて思い切り空気を吸い込み、また空に空気の稠密さを感じ、光は香りとともに感じられるなかで、そこに「モナド」を感ずる。
 
あけがたになり/風のモナドがひしめき/東もけむりだしたので/月は崇厳なパンの木の実にかはり/その香気もまたよく凍らされて/はなやかに錫いろのそらにかゝれば……
 
 モナドは「単子」で、G.W.ライプニッツ(ドイツ哲学者1646〜1716)「モナド論」で、現実に存在するものの構成要素を分析したとき、それ以上分割できない、延長を (ひろがりも形も) 持たない実体を「モナド」としてとらえた。
 賢治も、風をモナドの集合体としてとらえている。これはこの抽象的論議を賢治が意識していたといえるのではないだろうか。
 「モナド」は賢治詩において10例が出現する。「モナド」については別稿で詳述したのでここでは避けるが、詩作への入口となった「冬のスケッチ」から『春と修羅』、さらに「春と修羅第二集」、農業の実践時代の「春と修羅第三集」、そして最晩年の自らを顧みるように再編成した文語詩まで変わることなく、イメージとして作品に重要な場面を作っている。
 賢治の描く「モナド」は「風」「光」「空」で、まさに宇宙につながるものである。それを構成する最小単位のモナドの集まりと捉えたことは、心象をつきつめて描こうとする賢治にとって究極の表現だったのではないだろうか。よって、その光の中に自分の感情を注ぎ込み、その時に応じた周辺の表現に「モナド」に託したのである。
 
Z滅びの前の極楽鳥
 さらにこの詩において高地から眺めた盛岡の風景を「滅びの前の極楽鳥」といい、「野原の草をつぎつぎに食べ/代りに砂糖や木綿を出した/やさしい化性の鳥であるが/しかも変らぬ一つの愛を/わたしはそこに誓はうとする」という。
 この神話が実在しておいるか不明だが、この時点で賢治は一瞬現実を肯定したのであろうか。
 
[感触
 ◎楔形文字
 「北上山地の春 一九二四、四、二〇、では、賢治の旅は目的地に近づき、朝を迎える。
 
……風の透明な楔形文字は/ごつごつ暗いくるみの枝に来て鳴らし……
 
 楔形文字(くさびがたもじ、せっけいもじ、)とは、紀元前3400年ころから。メソポタミア文明で使用されていた古代文字で、水で練った粘土板に、葦を削ったペンが使われ、のちには楔型の尖筆を用いて書かれた、繊細で鋭利な形状である。
 「ごつごつ暗い」と形容されるのはクルミの木の枝と対比して、そこに吹く風の音と肌触りを象徴している。
 「(新)ひまわり青空文庫」中に「楔形文字」は14例ある。文字そのものを表し、このような象徴的な意味では使われるのは、この例のみである。
 賢治の感性による表現で、楔形文字のバランスのある統一のとれた形状が、密やかな風を表すのではないか。 
 

[ 明るい風、かぐはしい風、「やさしい化性の鳥」と「石竹いろの時候」と―賢治の現実
「七五 北上山地の春」では、目的地の種馬検査場での風景が描かれる。
 ◎明るい風 かぐはしい風
 
……明るい丘の風を恋ひ/馬が蹄をごとごと鳴らす
 
 周辺の厩の中では馬が外の風を思うかのように蹄を鳴らす。ここでは風は見えないが、大切に育てられた馬を思う賢治の想いと風が結ばれている。大事な馬は孔雀の石、孔雀石のような美しい空の下を進んでいく。そして、そこで生活する人の姿が、歌いあげられる。

  ◎かぐはしい風、雲滃を運ぶ風、燃える頬を冷やす風
 
……おぼろな雪融の流れをのぼり/孔雀の石のそらの下/にぎやかな光の市場/種馬検査所へつれられて行く……
 
 ……かぐはしい南の風は/かげらふと青い雲滃を載せて/なだらのくさをすべって行けば/かたくりの花もその葉の斑も燃える/黒い廐肥の籠をになって/黄や橙のかつぎによそひ/いちれつみんなはのぼってくる
 
 そして雲の影をなだらかな丘の上に映して吹くのは「かぐはしい南の風」、丘いっぱいに豊かに流れる風であろう。人々は、馬の晴れの日を祝って、自身も美しく装うのである。風は「その大きな栗の陰影に来て/その消え残りの銀の雪から/燃える頬やうなじをひや」し、労わるのだ。 
 
 ◎石竹いろの時候
さらに、この詩の最終章では、輝かしい牧場の風景から一転して自分に向けられる言葉「石竹いろの時候」の示すものは、賢治の内面の動揺なのであろう(注1)
 
……しかもわたくしは/このかゞやかな石竹いろの時候を/第何ばん目の辛酸の春に数へたらいゝか
 
と続く。
 生れ出る春の神々しさとそこに生きる人や馬の輝きのまえで、見つめた自分の姿は肯定も否定もできなくて立ちすくむのであろうか。生身の賢治を描く伝記的な事実(注2)よりも、賢治がいかにその心情を作品に描いたか、を私は感じ取りたい。
 この詩群で描かかれる風は、何を意味するか。
 「希望の場所」、種馬検査所に向かって、ひたすら歩きながら、周辺の風景の中に、自己は埋没されていく。
 風は、触感を刺激する唯一のものである。共感覚を刺激し、香りや、形状、色を伴うものとなる。
 光は、夜明けに向かい、月は一つの崇拝の対象となる。一方で、科学的知識によってエステルの香りも感じる。
 この象徴的表現は、この詩群を特徴づけ、この時代の賢治の心象を描くものではないだろうか。また「異途への出発」詩群、「種山ヶ原」詩群、それぞれの時代に違った風を描いているのではないか。
 これから考察を進めていきたい。
 
注1大塚常樹『心象の記号論』228ページ〜233ページ) 「桃色の花の記号論 二章 
石竹の花―ピンクの記号論」)
注2『賢治隋問』角川書店 昭和45年 131ページ 「賢治の横顔 禁欲」

 
 







2025/11/10 10:23:31|その他
永野川2025年11月上旬
7日 9:30〜12:00 晴16℃
 
 風が心配でしたが、無事全行程微風で、暖かく気持ちの良い晴の日でした。
 トピックスはタヒバリです。赤津川水田で、セキレイくらいの大きさ、でも茶色系の鳥が動いていました。セキレイと同じ動きです。気になったので帰りにもう一度行くとまだいてくれて、双眼鏡で見るとタヒバリでした。今季初、やっぱり来てくれた!という思いです。
少し田の中を採餌しているのか動き回っていましたが、飛び立ち、3羽確認できました。ここで、この数は初めてです。
 混軍を探しましたが、滝沢ハム付近で、シジュウカラの小さな声と動き、しばらく待つとエナガの声とともに3羽確認できました。まだまだいそうですが葉がたくさんあり暗い場所でそれ以上はあきらめました。
 大岩橋上の河川敷林は無くなって、背の高い雑草で繁るばかりです。そこから姿は見えないのですが、おそらくホオジロの3度繰り返す声が3か所で聞こえました。大砂橋の近くの中州には、キセキレイが来ていました。
 大砂橋近くの山林の近い場所で、カケスの声が3羽くらい聞こえました。近づくと遠くへ行ってしまうので、眼で見ることはできませんでしたが、近くに元気でいることが確認できました。
 この辺は周囲の川岸の工事が始まっているようで、この冬、どのくらい鳥見ができるかわかりません。対岸は河川敷も川も遠く、周囲は水田で、山林がないので、やはりこちら側を歩きたいのですが。
 公園の川にも背の高い雑草が茂って、川の流れが見えなくなっています。でも中に鳥がいっぱいのようです。
 まずカワラヒワ30羽、一斉に飛び立ち、旋回して公園の方に飛びました。そのすぐあと、やはり同じような鳥が30羽くらいの群れで飛び立って上流に向かいました。声がスズメのような気がして最後の1羽で、スズメの頬が確認できました。この数の群れの飛び立ちはスズメとはいえ壮観です。
 永野川の二杉橋と睦橋の中間のあたりで、突然キョッ、キョッ、キョッという声がして、水中からこちらの岸にないかが飛び込みました。一瞬で手前の岸なので見えにくく、カラス大で茶色系の背中しかわかりませんでしたが、声からしてクイナだと思います。ここの場所で見たのは初めてです。今までは、少し上流の公園のなかの小さな流れの川と赤津川でした。
 永野川沿いの大きな民家の大木でドラミングが聞こえました。低い場所だったので、探してみましたが見つかりません。でもこの大きさ、コゲラではないような気がします。コゲラも結構大きな音ですが、それよりももう少し太い音のような……。技量のなさを恨みます。
 工事にもめげず、今年も鳥たちが元気で嬉しいことです。カモや猛禽が増えてくれるよう、本格的な冬を待っています。
 
カイツブリ:合流点2羽、赤津川1羽、計3羽。
カルガモ:永野川二杉橋〜上人橋1羽、合流点3羽、赤津川6羽、2羽、
 2羽、公園西池7羽、8羽、東池6羽計35羽。
ヒドリガモ:公園16羽。
コガモ: 公園東池8羽。
マガモ: 赤津川1羽。
ダイサギ:合流点1羽、赤津川1羽、1羽、滝沢ハム池2羽、計5羽。
アオサギ:合流点1羽、赤津川1羽、永野川睦橋付近1羽、計3羽。
モズ: 滝沢ハム付近1羽。
スズメ:赤津川3羽、25羽、17羽、公園30羽、公園池15羽、計90羽。
ハシボソカラス: 公園1羽。
カケス:大砂橋付近林縁で3羽。
ヒヨドリ:滝沢ハム林3羽。
セグロセキレイ:赤津川2羽、1羽、大砂橋付近2羽、
 永野川睦橋付近2羽、計7羽。
ハクセキレイ: 合流点1羽。
キセキレイ: 大砂橋付近1羽。
タヒバリ: 赤津川水田で3羽。
カワラヒワ:大岩橋河川敷1羽、公園で30羽、計31羽。
シジュウカラ:滝沢ハム付近1羽。
エナガ: 滝沢ハム付近3羽。
ジョウビタキ: 大岩橋河川敷1羽。
ホオジロ: 大岩橋河川敷3羽。

 
 







永野川2025年10月下旬
28日 9:30〜11:30 晴 20℃
 
 久しぶりに気持ちの良い晴天になりましたが、朝から風が窓を鳴らすくらい吹いています。心配だったのですが、予定や天気を考えると今日しかないので、思い切って出かけました。
 風は時々強くなりますが、あとは体に感じる程度でした。
 睦橋から永野川に出ると、少し軽めのセキレイの声が聞こえ3羽が群れて行き来していました。確かめると久しぶりのハクセキレイでした。橋の欄干の1羽もハクセキレイで、セグロセキレイの姿はその時は見えませんでした。
 睦橋近くで、カルガモが11羽、先回にはほとんど見えませんでしたので、ほっとします。さらに二杉橋近くに17羽群れていました。
 中州にイカルチドリも1羽やってきました。
 かなりおなかが緋色に見える鳥が2羽で鳴きながら追いかけ、あたりを回っていました。動いていて細かい部分は見えなかったのですが、鳴き声と、観察例からしてジョウビタキ♂ではないかと思います。
 大きな民家の林でヒヨドリの声が盛んにして、見上げるとどんぐりがまだ若いですがたくさんなっていました。ヒヨドリ以外のものがここにはたくさん来るのでしょう。
 上人橋を渡っていると、付近の山林の手前をカケスが1羽、特徴のある羽ばたきで林に消えていきました。ほんの少しですが青い羽が見え、嬉しくなりました。
 公園の東池に行ってみるとカルガモのほかに、ヒドリガモが3羽見え、コガモも4羽いました。初飛来です。何か池の面が暗く感じるのはなぜでしょう。濁っているばかりではないのです。西池は浮草が沈んでは来ましたがまだ一面にあり、ヒドリガモが1羽いました。
 嬉しかったのは、カイツブリの幼鳥が1羽いたことです。ここで生まれたものだと思います。こんな条件の悪いところでも頑張って育ってくれたのです。
 公園の川の上流から、黄色い小さな鳥の群れがこちらの岸の木の中に飛んできました。25羽、鮮やかな黄色、おそらくマヒワと思います。年1度は記録があります。ずっといてくれるか、よく見てみたいと思います。10分くらい後に公園の中央部の草むらの中に飛び込みました。
 今回、チュウサギは季節が過ぎていなくなり、あちこちでダイサギが8羽見えましたが、アオサギは1羽のみでした。
 合流点の堰をイソシギガ1羽渡っていました。こちらも久しぶり、面白い風景でした。
 赤津川に入ると、さすがに西風が吹き付け、自転車に乗れませんでした。陶器瓦店の手前で諦めて、遠目でカルガモの数を確かめて帰ってきました。
 この頃はなぜ夏のような暑さから、突然冬の寒さになるのでしょう。冬鳥たちは結構暑いときから来ていました。温度で動くのではないらしいのですが、不確かな温度の中で生きるのは大変でしょう。
 もう少しで、本格的な冬鳥のシーズン、待ち遠しいです。
 
カイツブリ:公園西池1羽。
カルガモ:永野川二杉橋〜上人橋 11羽、17羽、合流点10羽、公園東池13羽、赤津川12羽、計63羽。
ヒドリガモ:公園東池3羽、西池1羽、計4羽。
コガモ: 公園東池4羽。
ダイサギ:永野川睦橋付近1羽、合流点1羽、公園1羽、1羽、
 滝沢ハム池3羽、赤津川1羽。計8羽。
アオサギ:赤津川1羽。
イカルチドリ: 永野川睦橋付近1羽。
イソシギ:合流点堰で1羽。
モズ: 永野川、二杉橋付近1羽、公園1羽、計2羽。
スズメ:永野川二杉橋〜上人橋、3羽、5羽、公園7羽、計15羽。
ムクドリ:赤津川水田に6羽。
ハシボソカラス: 〜上人橋1羽、公園1羽、大岩橋付近1羽、
 滝沢ハム付近1羽、計4羽。
カケス: 上人橋付近山林へ飛び込む1羽。
ヒヨドリ: 永野川二杉橋〜上人橋2羽、4羽、公園3羽、大岩橋付近3羽、  
 計12羽。
セグロセキレイ:永野川二杉橋〜上人橋1羽、1羽、1羽、公園2羽、
 計5羽。
ハクセキレイ: 永野川睦橋付近3羽、1羽、1羽、計5羽。
マヒワ: 公園25羽。
シジュウカラ:大岩橋付近山林2羽。
ジョウビタキ: 永野川睦橋付近2羽、駆け巡る。公園草むら1羽。
 計3羽。

 
 
 







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