宮澤賢治、風の世界

宮澤賢治の作品を彩る言葉と風を追って宮澤賢治の世界を訪ねよう。 賢治は風という言葉に何を託したか。風を描くためにどんな言葉を選んだか。 賢治は何を求めて風の中に身を置いたのだろう。 そこに少しでも近づきたくてページを埋めていく。
 
永野川2022年9月上旬

7日 5:30〜7:30 曇22℃
 
 また昨日あたりから暑さがぶり返してきました。
曇っていて暗く、出かけるのが躊躇していて少し遅くなりました。
 
 5:30ころ、サギのコロニーには、サギの姿が見えず、中からも声が聞こえませんでした。繁殖が終わったのでしょうか。
 
 二杉橋から入りました。
 少し登ったところにチュウサギ1羽、嘴で確認できました。
 セグロセキレイが1羽、2羽鳴きながら飛んで、上人橋までに5羽になりました。
 睦橋の手前で、セグロセキレイにまじって動きの違うものが1羽、よく見るとカワセミで、両岸を行き来しながら上に登って行きました。陽射しがあまりなかったので青さは今ひとつでした。
 同じところにダイサギ1羽、流入孔のところにハクセキレイ1羽、やはり、このあたりの鳥の多さは変わりません。
 公園の池にチュウサギが12羽、手前の岸にいたですが、人が近づいたので、飛び立って対岸の桜に留ましました。追ってみたのですが、西池にも近くの公園にも見えませんでした。何処へ行ったのでしょう。チュウサギは他のサギに比べて警戒心が強いのは、かつてドクターヘリがききたときに、他のサギは逃げないのに、チュウサギのみが逃げたことで知りました。
 公園のサクラ並木を、キジバトくらいで少しスレンダーで尾が長めのものが並木を横切って行きました。公園を飛び出してしまったので、追跡できませんでした。もしかして杜鵑、と思うと心が弾みます。視力の衰えはこの頃痛感するところです。
 公園の川で、アオサギ1羽。
 イソシギが川面に添って低空を鳴きながら昇って行きました。
 大砂橋下流の河川敷、イカルチドリが2羽、今日は川の近くを飛んで、はっきり確認出来ませんでしたが、飛び方はさっきのイソシギとは違って旋回しています。
 少し離れてアオサギ2羽、ここも鳥が戻ってきています。
 大砂橋へ通じる道が、通り抜けられるようになりました。ここは6年前の洪水で崖が崩れたままになっていたところに、さらに3年前の洪水が襲い、大きな工事が始まって厳重な通行止めになっていました。こんどは少し時間をここに割いて、山林に近づきたいと思います。
 モズが山林でよく鳴いています。3カ所、高鳴きかも、と思いましたが、シーズンは九月末ということで、声も確証がないので、もう一度確認することにします。年に1度のシーズンなので学習できずに終わってしまいます。
 滝沢池で、アオサギの綺麗な個体と、明らかにに幼鳥でボサボサした羽のものがいました。整った個体のほうが小さかったようにも見えましたが、これも学習不足です。
 カルガモがここに来て初めて3羽。あとは赤津川のみ。
後にしてから見えたのですが、滝沢ハム近くの公園にハシブトカラスが13羽群れていました。これだけの数でも揃うと不気味です。また赤津川の岸の電柱にはハシボソカラスが16羽群れていました。今日は何があったのでしょうか。公園の方は猫の餌撒きのせいかも知れませんが。
 赤津川でファミリーらしいカルガモ3羽、6羽、二組いました。もう親とは区別がつかないくらい成長していました。
 セッカが鳴いていましたが、もう稲刈りも始まりました。
 
カルガモ:滝沢池で3羽、赤津川で2羽、5羽、3羽、6羽、計19羽。
キジバト:滝沢ハム池付近で1羽
アオサギ:永野川睦橋付近1羽、大岩橋河川敷2羽、滝沢ハム池2羽、計5羽。
ダイサギ:二杉橋〜上人橋1羽、公園で1羽、計2羽。
ゴイサギ:
チュウサギ:二杉橋〜上人橋で2羽、公園池で12羽、滝沢ハム池1羽、赤津川1羽、計16羽。
イカルチドリ:大砂橋少し下の中洲に2羽。
イソシギ: 公園、川で1羽。
モズ: 大岩橋河川敷林に1羽、1羽、1羽、赤津川2羽、計5羽。
カワセミ:永野川睦橋付近1羽。
ムクドリ:赤津川泉橋付近4羽。
ハシボソカラス:赤津川岸電線に16羽。
ハシブトカラス: 滝沢ハム付近公園に13羽。
ツバメ:赤津川1羽、1羽、永野川1羽、1羽、1羽、計5羽。
ヒヨドリ:特に目立った群れはなかった。
セッカ: 赤津川田で1羽。
セグロセキレイ:永野川二杉橋〜上人橋で1羽、1羽、2羽、1羽、1羽、公園川で2羽
ハクセキレイ:永野川睦橋付近で1羽。
ガビチョウ:永野川岸の 遠い山林に1羽。
 
付記
7日、我が家のキジバトは2羽育っていました。いつもと反対側から覗いたら、親鳥と同じ色のものが並んで2羽留っていました。よく見ると嘴が大きく目立ち、不完全な幼い顔でした。写真を撮ろうと少し長くいたら、急に飛びたち、1羽は巣の方に、1羽は同じ木の別の場所に移りました。これで巣立ちしてしまったとしたら、驚かせて気の毒だったと思います。
9日、10日、雛は見えなくなりました。木の中で動きも感じられますが、分かりません。成鳥が時折出入りしているので、まだいるのかも知れません。

 
 







永野川2022年8月下旬
29日  5:30〜7:30 薄曇 19℃
 
  曇の予報でしたが、晴れる予感もあったので、出かけました。
 錦着山裏から入ります。
 田んぼ脇の電線に、スズメ28羽が群れていました。久しぶりです。稲の実りのシーズンが近いのでしょう。
 保育園脇の川沿いの道を通れるようになったので、合流点を別の方角からみようと、行ってみましたが、残念ながら、前回のように鳥はいなくて、セグロセキレイが2羽いたのみでした。
 赤津川の田で、ツバメが30羽纏まって旋回していました。群れに入らないものも2羽ほどいたので、別種―例えばイワツバメか、と思いよく見たのですが、腰の白さはありませんでした。いつも見るツバメよりも腹部が白く太めで、一見イワツバメかと思ってしまいました。バードリサーチのお話では、若鳥はまだ郊外の河川などで群れているとのことでした。ネットで確認すると、若鳥は胸の赤みも薄く全体に丸みを帯びているとのことで納得できました。
 モズが所々で鳴いていました。こちらももうじき高鳴きのシーズンでしょうか。セッカもまだ鳴いています。チュウサギは3羽きていました。
 ゴイサギの幼鳥が川を2羽、1羽とくだって行きました。今年は多い気がします。やはりコロニーの影響でしょうか。コロニーが何時からあるか知りたいのですが、現場で人に会ったことがありません。
 合流点には、ダイサギが2羽、チュウサギ1羽のみでした。
 滝沢ハムの池の周囲の高い草が刈られ、近づけるようになりました。池にコサギ1羽、ダイサギ1羽、カルガモ4羽がいました。縁でキジバト3羽が一緒に行動していました。小さめで、一緒に行動しているのは、幼鳥でしょうか。
 公園の草地に、渡りの途中の鳥がいないかと思い、近くを歩いてみました。草地のすぐ側の草刈りが終わったばかりのところに、久しぶりにキジが1羽来ていました。他の鳥は見つかりませんでした。
 大砂橋近くの川岸に降りたら、イカルチドリらしいもの5羽飛び立ちました。川岸にいると思わず近づいてしまい逃げられそれ以上の確認ができませんでした。こんなにたくさん一度に見るのは初めてです。今後は重要な水辺の鳥の場所として、注意して動こうと思います。
 岸の草の中でホオジロの、はっきりした地鳴きの声が聞こえました。
 ここでも、山林近くでモズが、かなり大きな声で鳴いていました。
 ガビチョウは少し遠い山林で2カ所ごく普通に静かに鳴いていました。
 公園の池は、依然として水が退いていて、チュウサギ1羽のみでした。
 永野川では、工事もまだ始まっていない時間で前と同じ条件なのに、セグロセキレイが、1羽、2羽、1羽、ツバメ5羽、のみでした。
赤津川を別としてもツバメ多い日でした。
 鳥種の少ない日でしたが、ツバメの幼鳥の群れを確認出来たことは嬉しことでした。
 
キジ: 公園の草地で1羽。
カルガモ:滝沢池で4,合流点で4,赤津川で2,計10羽。
カワウ:滝沢ハム池1羽。
キジバト:滝沢ハム池付近で3羽。
アオサギ:赤津川1羽、滝沢ハム池で1羽、計2羽。
ダイサギ:合流点で2羽、公園で1羽、滝沢ハム池で1羽、計4羽。
ゴイサギ: 赤津川で幼鳥3羽。
チュウサギ:赤津川で3羽、合流点で1羽、 公園池で1羽、計5羽。
コサギ:滝沢ハム池に1羽。
イカルチドリ: 大砂橋少し下の中洲に5羽。
モズ: 大岩橋河川敷林に2羽、赤津川2羽、計4羽。
スズメ:錦着山裏の田の電線で28羽の群れ。
ハシボソカラス:特に目立つ群れはいなかった。
ハシブトカラス: 特に目立つ群れはいなかった。
ツバメ:赤津川田に30羽の群れ、1羽、1羽、永野川5,1羽、計38羽。
ヒヨドリ:特に目立つ群れはなかった。
セッカ:赤津川田で1羽。
セグロセキレイ:永野川二杉橋〜上人橋で1羽、2羽、1羽、合流点で2羽、赤津川で2羽、計8羽。
ホオジロ:大砂橋近くの川岸の草むらで1羽地鳴き。
ガビチョウ:大岩橋山林付近2羽。
 
7:30ころ、サギのコロニーは、白いサギが多いが、あまり上部の目立つところにはいませんでした。
 
付記
 我が家の庭で、キジバトが営巣始め、28日2羽の雛が見えました。初めて見た雛は黄色い産毛に覆われていて親鳥もいました。雛は動いていましたが、声は出さないのを初めて知りました。
 けれども、29日には、親がいないことが多く、雛も1羽しか見えず、あまり動いていない気がします。近くにカラスもいて、襲われたのか、と心配です。
 

 







永野川2022年8月中旬
滝沢ハムのクヌギ林で、白くて10センチほどあるキノコが10本ばかり群生していました。ここでは初めて見ました。帰って調べると、キチャハツのようです。ブナ科の林に生える、とありました。
20日
5:00〜7:30 薄曇 20℃
 
曇りがちでしたが、次第に晴れ、明るく過ごしやすい朝でした。
今日は水辺が豊かでした。
二杉橋上は、カルガモ3羽、カワウ1羽、セグロセキレイ、ハクセキレイ幼鳥などが、飛び交い、上空をダイサギが南の方角に8羽下っていきました。
公園の調整池は水が抜かれて、浮いていた水草が繁って湿地状態になっていました。そこにダイサギ20羽、チュウサギ5羽、アオサギ3羽で、水面が一面覆われている、と言った感じでした。ここでのサギの群れは初めてです。コロニーから飛来しているのかも知れません。
合流点にかなり広い浅瀬が出来ていました。
カルガモ4羽、カワウ2羽、ダイサギ1羽、アオサギ2羽、コサギ1羽、それから久しぶりにイソシギが2羽、ハクセキレイ2羽、かなり多様です。これから期待しても良さそうです。それに加えて、圧巻はカワセミ、2羽が追いかけるように、飛び立っていきました。
公園の川で、前回よりは少し小さいカルガモ5羽と親のファミリーを見つけました。今年は3組のファミリーを見つけたことになり、欠けたのは1羽のみ。無事に育っていました。
大岩橋と大砂橋の中間くらいから川辺に降りることが出来ました。
中洲にイカルチドリ2羽、セグロセキレイ2羽、広い川原もあり、これからはスポットになりそうです。
公園のワンド裏の水辺に行ってみたら、思いがけずカワセミ1羽、岸辺に留っていて、その後川でフォバリングののち上流へ飛んで行きました。ここもよいスポット、とあらためて思います。
赤津川ではまだセッカの声が聞こえました。
公園ではシジュウカラが鳴き始めました。ウグイスの囀りは聞こえなくなり、ホオジロもワンド跡で1羽囀るのみでした。
ツバメもあちこち合わせて3羽のみ、季節が静かに変わっていきます。
 
サギのコロニーは、5:00の時点では、まだあまり樹上には出ていなかったのですが、声は相変わらず賑やかでした。
 
 
キジ: 合流点すぐ上の田の岸に1羽。
カルガモ:二杉橋から上人橋3羽、公園に6羽のファミリー、2羽、合流点4羽、計15羽。
カワウ:二杉橋付近で1羽、合流点で2羽、計3羽。
キジバト:睦橋付近岸辺の木で2羽。
アオサギ:公園東池に3羽、合流点に2羽、計5羽。
ダイサギ:二杉橋上空8羽、公園池に20羽、合流点に4羽、計32羽。
チュウサギ:公園東池に5羽、赤津川田に2羽、計7羽。
コサギ:合流点に1羽。
イカルチドリ:大砂橋少し下の中洲に2羽
イソシギ: 合流点に2羽。
モズ: 大岩橋河川敷林に2羽、赤津川2羽、計3羽。
カワセミ:ワンド裏の川に1羽、合流点に2羽、計3羽。
スズメ:特に目立った群れはなかった。
ハシボソカラス:特に目立った群れはなかった。
ハシブトカラス:特に目立った群れはなかった。
ツバメ:赤津川1羽、公園1羽、大岩橋付近1羽、計3羽。
ヒヨドリ:群れはなかった。
セッカ:赤津川田で1羽。
ハクセキレイ:二杉橋〜上人橋1羽、合流点で2羽、計3羽いずれも幼鳥。
セグロセキレイ:永野川二杉橋〜上人橋で1羽、1羽、1羽、3羽、公園で2羽、2羽、大岩橋河川敷で2羽、合流点で1羽、計13羽。
シジュウカラ: 公園で1羽の声。
ホオジロ:公園ワンド跡で1羽。
ガビチョウ:二杉橋付近で1羽、大岩橋山林付近電線で1羽、計2羽。

 







永野川2022年8月上旬
10日 5:30〜7:30 晴 24℃
 よく晴れて、家を出たとき、すでに暑さを感じました。
 錦着山裏の田には、ほとんど鳥がおらず、ツバメが2羽、舞っていました。
 赤津川に入ると、突然のようにカルガモ1羽浮いていました。
 田ではセッカがよく鳴いていて、2カ所で、下降音で鳴いていました。
 どこかでモズが短く鳴いていて、かなり離れた場所、2カ所で聞きました。
 ハクセキレイが2羽飛び交います。
 水田に、チュウサギ2羽、先回11羽見かけたところです。他には、アオサギの幼鳥1羽のみでした。
 
 合流点で、ここで初めて、ガビチョウの声が聞こえました。た。増えているのだと思います。
 中洲で、セグロセキレイが2羽、活発に動いていました。イカルチドリも3羽纏まって動いていました。少し水の量が少なかったせいか、泳ぐ鳥はいませんでした。
 公園の上空を横切って、ムクドリが25羽が南へ飛んで行きました。
 大岩橋に近いところで、かなり大きな声でウグイスが囀っていました。今日はここのみでした。
 大岩橋河川敷林でもガビチョウが2カ所で囀っていました。
 大砂橋近くの川でダイサギ1羽、ここはサギの穴場のようです。
 
 公園のワンド跡は、ホオジロが、3カ所で囀っていました。
 川の中洲に隠れるようにいる、カルガモの群れを見つけました。もう親と雛の区別がつかないくらい大きくなっていますが、9羽と3羽のファミリーです。確か、以前、大岩橋上流で見たものが無事大きくなっているのだと思います。3羽のファミリーの方は1羽欠けたようですが、無事に成鳥出来るのも間近でしょう。嬉しいことです。
 
 上人橋の上から上流を見ると、水が豊かで、ダイサギと少し離れてコサギが1羽ずついました。コサギは羽繕いしていて、ようやく足先の黄色が確認出来ました。
 永野川を下ってくるとハクセキレイ、2羽、1羽、2羽、1羽と舞い、今日は、全部で、9羽になりました。セグロセキレイも、1羽、3羽、2羽、1羽、と、公園を合わせて12羽となり、セキレイ類が元気でした。
 日の出時刻が少しずつ遅くなり、合わせて出るとかなり暑くなってきます。もう少し早めに出た方がよいのかも知れません。
 
 土手のキツネノカミソリが1カ所だけ残って花をつけていました。ここが豊かに自然が残っていたことの名残で、嬉しく写真に収めました。
 
カルガモ:赤津川1羽、 公園川で、9羽、3羽のファミリー、永野川1羽、計14羽。
アオサギ:赤津川田に幼鳥1羽。
ダイサギ:上人橋上の水場に1羽、大砂橋付近に1羽、計2羽。
チュウサギ: 赤津川田に2羽。
コサギ: 上人橋上の水場に1羽。
イカルチドリ:合流点の中洲で3羽。
モズ:赤津川に2羽。
スズメ:特に目立った群れはなかった。
ムクドリ: 公園上空を横切って25羽。
ハシボソカラス:特に目立った群れはなかった。
ハシブトカラス: 特に目立った群れはなかった。
ツバメ:錦着山裏の田で2羽、赤津川2羽、2羽、公園2羽。計8羽。
ヒヨドリ:特に目立った群れはなかった。
ウグイス:大岩橋近くの公園に1羽。
セッカ: 赤津川水田に2羽。
ハクセキレイ:赤津川2羽、合流点1羽、永野川2羽、1羽、2羽、1羽、計9羽。
セグロセキレイ:公園2羽、合流点3羽、永野川二杉橋〜上人橋で1羽、3羽、2羽、1羽、計12羽。
ホオジロ:公園ワンド跡で1羽、2羽、計3羽。
ガビチョウ:合流点付近で1羽、大岩橋山林1,1,計3羽。
 
付記
サギのコロニーは、樹上には、白いサギが多く、他は、ゴイサギの幼鳥がめだった。
 







「図案下書」―足元の小さなものたちに吹く風―
   三五〇  図案下書 一九二五、六、八、
 
高原の上から地平線まで
あをあをとそらはぬぐはれ
ごりごり黒い樹の骨傘は
そこいっぱいに
藍燈と瓔珞を吊る
 
   Ich bin der Juni, der Jüngste.
 
小さな億千のアネモネの旌は
野原いちめん
つやつやひかって風に流れ
葡萄酒いろのつりがねは
かすかにりんりんふるえてゐる
 
漆づくりの熊蟻どもは
黒いポールをかざしたり
キチンの斧を鳴らしたり
せわしく夏の演習をやる
 
白い二疋の磁製の鳥が
ごくぎこちなく飛んできて
いきなり宙にならんで停り
がちんと嘴をぶっつけて
またべつべつに飛んで行く
 
ひとすじつめたい南の風が
なにかあやしいかほりを運び
その高原の雲のかげ
青いベールの向ふでは
もうつゝどりもうぐひすも
ごろごろごろごろ鳴いてゐる
 
 年表などには、この詩の背景となる事実は見つかりませんでした。
 ただ5月中には、5月7日に、生徒を連れて小岩井農場を訪れ、三三三「遠足統率」一九二五、五、七、が書かれます。つつどり、ウグイスが詠みこまれ、「ウグイスの折れ線グラフ」という語が登場します。
 5月10日、11日、森佐一と共に小岩井農場から岩手山に登り、一泊します。同じ日付を持つ詩に、三三五〔つめたい風はそらで吹き〕一九二五、五、一〇、三三六「春谷暁臥」一九二五、五、一一」、三三七「国立公園候補地に関する意見」一九二五、五,一一があります。
 〔つめたい風はそらで吹き〕では、「くらかけ山の凄まじい谷の下で」、「そんな木立のはるかなはてでは/ガラスの鳥も軋ってゐる」という同じ背景を感じさせる表現があります。
 この詩は、これらの体験を色濃く受け継いでいるのではないかと思います。種山ヶ原のような、標高の高い場所ではなく、高原から地平線までが見通せる場所で、発想されたと思われます。
 5月中の詩としては、三四〇〔あちこちあをじろく接骨木が咲いて〕一九二五、五、二五、三四五〔Largoや青い雲かげやながれ〕一九二五、五、三一、がありますが、平地における風の動きがたくさん見られます。のちに考察したいと思います。
 
 賢治は作品を何度も推敲することで知られています。賢治にとっては、より自分の心象に近い表現を求め、またより完成した作品にするためのもので、定稿を「是」としていたとは思うのですが、詩の背景を考えるため、賢治の思いを壊さない程度に、下書稿に当たってみたいと思います。詩に書き添えられた日時は詩の発想の時と考えられています。賢治が詩を推敲するとき、日時を変えることはありませんので、あくまで発想の時の思いを正確に記そうとする行為であると考え、解釈の助けにすることは出来ると思います。
 下書稿一ではタイトルは「蟻」で、「……おれのいまのやすみのあひだに/ Chitin の硬い棒を頭でふりまはしたり/ 口器の斧を鳴らしたりおれの古びた春着のひだや/しゃっぽにのぼった漆づくりの昆虫ども/ 山地のひなたの熊蟻どもはみなおりろ…」と、休憩中に体を這い上る蟻に閉口しいている姿のみ描かれます。
 下書稿二では「このおにぐるみの木の下に座ると/ そらは一つの巨きな孔雀石の椀で/ごりごり黒い骨傘には/たくさんの藍燈と瓔珞が吊られる……」と、蟻の記述はなくなり、登場する木がオニグルミであることが書き加えられ、作者が木の下に座って枝を見上げていることが分かります。
 下書稿三では、「……漆づくりの熊蟻が/黒いポールをかざしたり/ キチンの斧を鳴らしたり/せわしくそこをゆききする……」と風景の一部として蟻が描かれ、熊蟻だったことも記されます。
 定稿では「蟻が演習をする」という表現が加わります。

 定稿を最初から辿ってみます。
 オニグルミが赤い雌花と黄緑の雄花を咲かせています。オニグルミは雌雄同株で、5〜6月ころ、15cm〜20cmの黄緑の雄花の上に、花穂が直立した雌花が10個ほど上向きに赤い花を付けます。
 瓔珞は、菩薩や密教の仏の装身具で首飾りや胸飾り、仏壇や仏堂の荘厳具です。垂れ下がる雄花の様子を例えています。
 「藍燈」は、管見した限り、この詩以外での使用例や訳語がみつかりませんでしたが、漢字の読み「らんとう」を、灯りの「ランタン」に置き換えた賢治の造語ではないかと思います。ランタンは炎や電球部分をガラスなどで囲って保護して持ち運んだりできるにしたもので提灯も含まれます。こちらは上向きの雌花のたとえです。
 熊蟻はクロオオアリの別名、光沢の少ない黒色で、女王蟻は17oと大きく、交尾期の5月〜6月に羽蟻となって飛び立ちます。詩中には、羽蟻の記述はありませんが、交尾期の動きの活発な様を描いたのでしょうか。
 突然現れるドイツ語は何を表すのでしょう。Juniは6月、Jüngsteはjung(若い)の最上級です。賢治は時として表現上の技法のように外国語表記を使い、音のみに意味を持たせたり、文字の形を表現に使ったりします。この場合は、「6月」という季節と、自分の若さを感じ高揚する気分を表しているのかも知れません。
 「アネモネ」は、ここではオキナグサを差します。賢治が盛岡高等農林学校で学んだころのオキナグサの学名がAnemone cernua(のち、1940年に牧野富太郎によりPursatilla cernuaとなる。)であったことによります。(注1)。オキナグサを主題にした童話「おきなぐさ」では、オキナグサを「アネモネの従兄」としています。
 オキナグサは4月から5月ころ開花し、5月の終りころ花が終わると白くつややかな無数の冠毛をつけ、翁の髭のようなその様がオキナグサの名前の由来となっています。「アネモネの旌(はた)は/野原いちめん/つやつやひかって風に流れ」は、冠毛が風によって飛ばされる様を表して見事です。
 「葡萄酒いろのつりがね」はツリガネニンジンではないでしょうか。花は15o〜20oの釣り鐘型花を円錐形の花序に下向きに数個つけます。ただ花期は8月とされるので、その点に疑問が残ります。
 釣り鐘型の花としてホタルブクロがあります。花は4〜5センチで、3、4個つきます。花期は6〜8月ですが、この花は大きく梵鐘に似たかたちで、「貝の火」で、「カンカンカンカエコカンコカンコカーン」という見事なオノマトペで表現されます。この作品では、「リンリン」と鳴ると表現されるので、ホタルブクロには相応しくありません。やはりツリガネニンジンだと思います。
 「白い二疋の磁製の鳥」は何でしょうか。この詩以外にも、「磁製」という語は3例あり、鳥を表すもの一例、雪の形容1例、人の内面の形容1例です。
「黒い地平の遠くでは/磁製の鳥も鳴いてゐる 」(〔はつれて軋る手袋と〕一九二五、四、二(春と修羅第二集))では鳥の形容ですが鳴き声も含まれています。
 「野原はまだらな磁製の雪と/温んで滑べる夜見来川」(「一〇一四春」一九二七、三、二三、(春と修羅第三集)では雪の形容です。
 「この県道のたそがれに/ あゝ心象(イメーヂ)の高清は/しづかなな磁製の感じにかはる(〔高原の空線もなだらに暗く〕 「口語詩稿」)では人物の心の形容です。
 本質的には白磁の静謐さを感じているのだと思いますが、ここでは、鳥の空に映える白さを表すものかと思います。 
 では、この鳥は何でしょうか。日本野鳥の会の高松健比古さんに教えていただきました。以下抄録させていただきます。
 
 空中で停まっていること、嘴をぶつけ合ったことは下書稿すべて共通です。これは二羽の鳥が雌雄のつがいが、空中に停飛して求愛給餌 またはそれに近い行為をした、と考えられます。嘴をぶつけ合う、というのは、雄が雌に餌をプレゼントする、その行為か、或いは、すでに営巣・育雛中のつがいが、雄が運んできた 餌(魚や小型哺乳類、鳥類、両生爬虫類など)を雌に空中で渡す、受け渡しの場面、ということも考えられます。いずれにせよ、「何か餌(のようなもの)を片方の鳥から別な鳥に 空中で渡した」ということではないでしょうか。 
 仮にそうだとすれば、サギ類は、そのような行動はしません。考えられる鳥としては、コアジサシやタカ類・ハヤブサ類ですが、「白い鳥」とするとコアジサシが最も近いでしょうか。ただ、この場所が水辺ではなく、小岩井の近くの高原とすると、開けた環境だとしてもコアジサシコアジサシは、あてはまらないかもしれません。(営巣している水辺が近くにあった可能性はありますが)。また、コアジサシの飛び方を考えると、「ぎごちなく飛んできて」というのも、あてはまらないかもしれませんが、つがいの鳥たちが接近した時は、通常の飛び方ではなかった可能性があります。
 なお餌の空中受け渡しの場合、タカ類は多分足を使うと思うので、嘴をふれあうということはないかもしれません。
 また、この詩の鳥の動作が、攻撃など敵対行動と考えられるか、というと、それもありません。嘴は翼とともに、鳥にとって最も大事なものであり、それをぶつけ合う などということは直接生命が危険になり、あり得ないからです。
 また仮に「嘴をぶつける」ことはなく、ごく接近して二羽が並んで飛ぶ、と考えると、シギ・チドリ類(コチドリ、イカルチドリ、イソシギ、ケリなど)も考えられます。この場合、ケリは水辺から離れた草地や畑で繁殖するので、可能性があります。(「風林」と同時に 書かれた「白い鳥」のモデル候補はケリではないか、と考えています)。「ぎごちない」飛び方も、ケリならそう見えるかもしれません。
 いろいろ謎はありますが、この鳥たちの行動は、つがいの絆を強める動作であったことはほぼ確実です。もしかすると、賢治が注目したのはその動きで、実際には鳥は白くなかったこともありうるかもしれません。
 
 賢治の目には、一瞬、「磁製」と映った鳥の生命力が眩しかったのかも知れません。 
 こんどは、眼は雲の彼方を見ます。「青いベール」は山脈でしょうか。ツツドリの声は「ポポ、ポポ」、ウグイスも「ホーホケキョ」という特徴的な鳴き声で知られているものですが、それを「ごろごろごろごろ」と表すのはなぜでしょうか。もう鳴き声を取り立てていうこともないほど、続けざまに溢れるように鳴いていることを表すのかも知れません。のちにまた述べます。
  
 風の描写は、2例あります。
 
……
小さな億千のアネモネの旌は
野原いちめん
つやつやひかって風に流れ
葡萄酒いろのつりがねは
かすかにりんりんふるえてゐる
……
 
 ここでは風に乗って野原に舞う、無数のオキナグサの冠毛を描きます。「風に流れ」としたことで、足元の小さな風景が、燦めく大きな風景となり、繋がる命までを感じることができます。
 
……
ひとすじつめたい南の風が
なにかあやしいかほりを運び
その高原の雲のかげ
青いベールの向ふでは
もうつゝどりもうぐひすも
ごろごろごろごろ鳴いてゐる
 
 ここでは、一瞬流れてくる風の形容です。それは冷たさと同時に、何か胸を突かれるものだったのでしょう。風に「あやしいかほり」を感じ取る、共感覚的な表現ですが、香りに加えて、鳥たちの声が、いつも聞くものと違う、包み込まれるような反響するようなものになったと感じさせるものだったのかもしれません。
 

 風はいつでも、賢治の周囲を包み、一つ一つの風景を、特別なものに仕上げているようにも感じられます。いろいろな作品から、また読み解いていきたいと思います。

 
注1:三浦修・米地文夫 「宮沢賢治の作品にみられる植物と植物園  総合的学習を目的とした大学植物園の活用について」 (『岩手大学教育学部研究年報第59巻第2号』 1991、12   
131ページ〜144ページ )