宮澤賢治、風の世界

宮澤賢治の作品を彩る言葉と風を追って宮澤賢治の世界を訪ねよう。 賢治は風という言葉に何を託したか。風を描くためにどんな言葉を選んだか。 賢治は何を求めて風の中に身を置いたのだろう。 そこに少しでも近づきたくてページを埋めていく。
 
永野川2022年11月中旬

14日 9:30〜11:30 晴、14℃
 
 よく晴れて、風もない探鳥日和です。合流点から入ります。
 電線に小さな鳴き声がしていて、カワラヒワが9羽来ていました。少し離れて3羽もいました。もっと大きな群れが来るの待っています。
 合流点の砂地に、キセキレイ1羽、セグロセキレイが3羽、光りの関係で見えにくいこともあるのですが、あまり鳥が来ていない時間帯だったのかも知れません。ダイサギが離れて2羽歩いていました。
 モズが、小鳥、多分カワラヒワの鳴き真似をしているのがいました。体に似合わない小さな声でした。
 赤津川に入ってすぐ、カルガモ4羽、3羽、カイツブリが1羽、群れていました。カイツブリは第一回冬羽のようです。
 田の真ん中、と言えるところに、アオサギが1羽、じっと動かず、杭のようにも見えました。
 ダイサギが川の中で移動しながら餌を狙っていました。
 セグロセキレイ幼鳥が一羽、今まで見た中でいちばん薄い空色に近いグレーで、違う鳥かと思いました。
 少し行くとセグロセキレイ2羽が交叉するように飛んでいました。1羽は羽虫を咥えて飛び上がり、もう一羽は、青く光るトンボを咥えていたました。
 滝沢ハムの池には、鳥が戻っていました。今季初コガモ15羽の群れが、飛翔を繰返していました。カルガモは2羽のみでした。
 広葉樹が散り始め、また鳥たちの往来も激しくなりました。もっぱらヒヨドリでしたが、シジュウカラが群れてきているようで、7羽まで数えました。
 シメ?と思われる鳥影を見ましたが、今日も確認出来ませんでした。
 田んぼの電柱でモズ1羽、餌を狙っているようでした。
 大岩橋河川敷林で、しきりにカワラヒワの声が聞こえましたが、2羽しか確認出来ませんでした。林の向こうの川の側にいるようで、今度反対側に廻ってみようかともいます。
 キジバトが山林に向かって1羽飛びました。
 大砂橋近くの山林の林縁にウグイスの地鳴きが聞こえ、ちらっと鳥影が見え、2羽いるようでした。滅多に姿を見ないので嬉しいことでした。
 今日はカケスには会えませんでした。
 公園の西池にカモがたくさん来ました。シーズン到来です。
 ヒドリガモが多くて55羽、カルガモが目立たず10羽、マガモが1羽、コガモが7羽、オカヨシガモ3羽、♂2羽、♀1羽でした。ヨシガモと同じような細かい模様が胸にあるのに初めて気づきました。
 永野川、上人橋〜二杉橋まで、睦橋下あたりで、まだ工事が残っていて、あまり鳥の姿が見えません。ダイサギ1羽、ハクセキレイが1羽、セグロセキレイ2羽、工事にめげず、飛んでいました。
 バードリサーチで、護岸と鳥の減少について教えていただき、あらためて赤津川を見ると、大体60%が護岸工事で覆われていました。三年前の水害で増えたのは半分くらいで、月日がたって、上から草で覆われているところもあります。鳥が多いな、といつも思うのは、護岸工事されていない区間であること発見しました。
 災害と護岸の関係は悩ましいですが、より生物の棲息できる護岸の方法もあるのではないか、と思います。
 
カイツブリ:赤津川に1羽。
カルガモ:公園西池で10羽、赤津川で4羽、3羽、滝沢ハム池2羽、計19羽。
ヒドリガモ:公園西池55羽。
コガモ:滝沢ハム池15羽、公園西池7羽、計22羽
オカヨシガモ:公園西池♂羽羽、♀1羽、計3羽。
マガモ:公園西池♂1羽。

キジバト: 大岩橋河川敷林1羽。
アオサギ:赤津川で1羽、二杉橋〜上人橋で1羽、計2羽。
ダイサギ:赤津川で1羽、1羽、合流点で1羽、1羽、計4羽。
モズ:合流点付近電線で1羽、滝沢ハム付近電柱で1羽、大岩橋河川敷
 で1羽、計3羽。
スズメ: 特に目立った群れはない。
ハシボソカラス:特に目立った群れはない。
ハシブトカラス: 特に目立った群れはない。
​​​ヒヨドリ: 特に目立った群れはない。ヒヨドリ
ウグイス:大砂橋付近山林の林縁草むらで2羽。
ハクセキレイ:永野川二杉橋〜上人橋1羽。
セグロセキレイ:二杉橋〜上人橋2羽、赤津川2羽、公園で1羽、合流
 点で2羽、1羽、1羽、大砂橋近く中洲で1、公園1羽、1羽、計12羽。
キセキレイ: 合流点1羽。
カワラヒワ: 大岩橋河川敷林で2羽、合流点電線で2羽、15羽、計1 
 9羽。
シジュウカラ:滝沢ハム林で5羽、2羽、計7羽。

 







永野川2022年11月上旬
5日 8:30〜11:00 薄曇   15℃
 
 日照は少なかったのですが、風もなく落ち着いた天気でした。
 二杉橋から入り、少し遡ったところに、カルガモ32羽、ダイサギ1羽、カルガモは、今日はここに集結しているようで1番数が多く見られました。
 セグロセキレイが飛び交って8羽まで数えました。少し遡るとハクセキレイが1羽見えました。
 公園の東駐車場では、大木が少し色づきはじめ、夏の盛りとは違って見えます。人をはねつけるような緑の強さがありません。シジュウカラの声を追いましたが確認出来たのは1羽のみ、あとはコゲラが1羽でした。
 公園のワンド跡でモズが1羽鳴いていました。高鳴きのような激しさはなくすぐ聞こえなくなりました。
 公園川でセグロセキレイ2羽、ハクセキレイ2羽確認しました。
 大岩橋近くで、カワセミ♂が鳴いて上流に飛んでいきました。
 イソシギが激しく鳴いてまっすぐに川面を上流に飛びました。
 ウグイスが草むらで地鳴きしています。ここで定着したようです。
 エンジュの木で一瞬シメかと思われる鳥影と声が聞こえましたが、確認出来ませんでした。
 公園の西池にヒドリガモが7羽、東池に10羽、まだ増えてきません。カルガモは29羽でした。
 大岩橋河川敷林で、カワラヒワが小さく鳴きながら飛んで、5羽まで数えました。
 山林の樹木でシジュウカラが3羽みえました。
 大砂橋近くの中洲で、塊のようであまり動かないものがありました。双眼鏡に入れてみると、オオタカが小型の水鳥を押さえ込んでいるようでした。しばらく苦戦しているようでしたが、姿勢を立て直して鳥を掴んで森林の中に消えていきました。
 バードリサーチで、水鳥を運べるのは、オオタカは♀だろうと教えていただきました。捕らえたものはコガモだったかと思ったのですが、もっと小さいイカルチドリかイソシギだったのかもしれません。コガモはまだこの辺では1羽しか見ていませんし、イカルチドリもイソシギも1羽で動いています。やはり集団でいないと襲われやすいのでしょうか。鳥を見始めて20年以上、初めての経験でした。
 カケスは大岩橋近くで鳴き声を聞いたのみ、見たかったのですが。
 赤津川に入ると、カルガモが3羽、カイツブリが1羽見えました。カイツブリもバンも、滅多に見られなくなりました。少し遡るとカルガモが8羽、これで合わせて74羽になりました。
 民家の樹木にスズメが25羽、合流点入って電線に5羽、今年は余り大群に会いません。
 合流点ではセグロセキレイが2羽、2羽、錦着山裏の田でアオサギが1羽見えました。
 木々は落葉の準備をしているようで心持ち静かです。勝手な希望ですが、早く冬鳥に来て欲しいと思うこの頃です。
 
カイツブリ:赤津川に1羽。
カルガモ:東池で20羽、西池で9羽、赤津川で3羽、8羽、永野川二 
 杉橋付近で32羽、合流点で2羽、計74羽。
アオサギ:錦着山裏の田で1羽
ダイサギ:赤津川で2羽、合流点で1羽、公園川で1羽、二杉橋付近で
 1羽、計5羽。
イソシギ: 公園川で1羽。
オオタカ: 大砂橋付近中洲で1羽。
モズ:公園ワンド跡で1羽。
カワセミ: 公園川で1羽、大砂橋で1羽、計2羽。
コゲラ: 公園東駐車場で1羽、大岩橋河川敷林で1羽、計2羽。
スズメ: 合流点近く電線で7羽、赤津川岸民家の樹木で25羽、計32羽。
ハシボソカラス: 目立った群れはなかった。
ハシブトカラス: 目立った群れはなかった。
カケス:大岩橋付近山林1羽。
ヒヨドリ:目立った群れはなかった。
ウグイス:公園ワンド跡で1羽。
ハクセキレイ:公園川で2羽、永野川二杉橋付近1羽、計3羽。
セグロセキレイ:二杉橋〜上人橋1、1,1,3,1,1,公園で2羽、合流点で2、2羽、大砂橋近く中洲で2羽、計16羽。
カワラヒワ: 大岩橋河川敷林で5羽。
シジュウカラ:公園東駐車場で1羽、 大岩橋河川敷林で3羽、計4羽。
ガビチョウ:大岩橋河川敷林で1羽。

 







永野川2022年10月下旬
                    工業高校裏の秋咲きサクラ

25日 8:30〜11:00 薄曇 13℃ 
 
 かなり晴れに近い曇りです。8:30と遅い出発でしたが寒く、防寒着が必要でした。
 赤津川から廻るので、合流点へ行きました。セグロセキレイが2羽、1羽と動いていましたが、先回のように多くは見つかりませんでした。
 中洲から一瞬飛び立って、堰の所へ移ったものがいて、カワセミか、と思いましたがイソシギでした。動きが速くてすぐ見えなくなってしまいました。
 赤津川の中程で、カルガモ3羽とカイツブリ、しばらく遡ってまたカルガモ2羽、田の縁にアオサギが一羽、会いました。田でダイサギも1羽、少し下った公園入り口近くでも1羽見えました。
 もう秋本番なのに、ほとんど鳥に会えません。滝沢ハム池にも何もいず、薬品の匂いがしたような気がしました。あるいは鳥インフルエンザの関係で用心しているのかも知れません。
 大岩橋河川敷林で、キリキリという声と共に小鳥が16羽ほど舞い上がって飛んで行きました。今季初カワラヒワの群れです。もう少し木が葉を落とし、見やすくなるのを期待します。
 河川敷の草むらから雀と共に、キジバト1羽飛びだしました。
ホオジロが3カ所密かに鳴いています。
 ガビチョウの声が密かに聞こえました。この頃は一時と違いいつも静かな鳴き方です。繁殖期が過ぎたからでしょうか。
 大岩橋近くの山林でカケスの声がしました。遡って、田んぼが開けるあたりで、やはり山林から1羽飛び出して手前の竹藪に入って動いていましたが、しばらく待つと、また飛び出してもとの山林に戻っていきました。その時やっと少し姿を見ました。
 大砂橋近くの中洲でセグロセキレイが4羽、2羽、やはりここは水辺の鳥が多い所です。
 公園のワンド跡の草地で、ウグイスの地鳴き、この辺に居着いたようです。
 公園の川ベで、ハクセキレイグレイの背中が灰色のものと、黒いのと見えました。その後、永野川睦橋下の工事現場でも1羽、1羽、と見えました。セグロセキレイも2羽見えました。
 公園東池にカルガモ49羽来ていましたが、他のカモはいませんでした。
 
 工業高校裏の秋咲きサクラは、一本だけ八分咲きで綺麗でした。
 
カイツブリ:赤津川に1羽。
カルガモ:西池で49羽、赤津川で5羽、永野川二杉橋付近で2羽、計 
 55羽。
キジバト: 大岩橋河川敷草むらで1羽。
アオサギ:赤津川田で1羽、永野川二杉橋付近で1羽、計2羽。
ダイサギ:赤津川で2羽。
イソシギ:合流点で1羽。
モズ:大岩橋河川敷林1羽、1羽、赤津川電線で1羽、1羽、計4
 羽。
ハシボソカラス: 特に目立った群れはなかった。
ハシブトカラス: 特に目立った群れはなかった。
カケス:大岩橋付近山林1羽、大砂橋山林で1羽、計2羽。
ヒヨドリ:特に目立った群れはなかった。
ウグイス:公園のワンド跡草地で1羽。
ハクセキレイ:公園川で2羽、永野川睦橋付近2羽、計4羽。
セグロセキレイ:二杉橋〜上人橋2羽、公園で1羽、1羽、合流点で3
 羽、大砂橋近く中洲で6羽、計11羽。
カワラヒワ:大岩橋河川敷林で16羽。
シジュウカラ:公園サクラ並木1羽、 大岩橋河川敷林で3羽、計3羽。
ホオジロ: 大岩橋河川敷草地で1羽。
ガビチョウ:大岩橋河川敷林で1羽。

 
 







永野川2022年10月中旬
 15日 6:00〜8:00 薄曇 19℃

 このところ夜明けが遅く、加えて曇りだったので、6時少し前まで待って出かけました。暗いうちに出た方がいいのかも知れませんが、やはり遅くなってしまいます。
 二杉橋から入ります。二杉橋から上人橋まで、セグロセキレイが2羽、2羽、3羽、と多かったのですが、他の鳥は見えませんでした。睦橋から高橋まで東岸が通れず、西岸に廻ると、ホオジロのさえずりが聞こえました。
 公園の東駐車場のサクラで、シジュウから4羽、今日は混群ではなく、ヤマガラも見えませんでした。
 公園の東池に、カルガモ7羽、西池に46羽、カルガモは増えていますが、先回見たヨシガモ♀と思われるものはいませんでした。
 公園上空をヒヨドリ7羽が通り過ぎました。少数ながら移動しているようです。16日出かけた、田園地帯の都賀町八幡宮の境内で30羽近くのヒヨドリが群れて高木の上を飛んでいましたが、環境の違いを感じます。
 公園のワンド跡の高い草のてっぺんにモズが2カ所留って鳴いていました。それから岸の大木にも1羽、大岩橋に河川敷林と電線、滝沢ハム近くの電線にも1羽、赤津川電線に2カ所、全部で9羽、今日は、すべて高いところに1羽ずつ留って鳴いていました、高鳴き?というほど、激しい声ではなかったのですが、すべてが高い所にいたのが印象的でした。
 公園の川でアオサギ1羽、川岸の草むらで今季初ウグイスの地鳴きを聞きました。昨年は、二杉橋付近が多かったので、やはり護岸工事でヤブが無くなって、大分違う場所に移っていると思いました。
 大砂橋手前の田が広がっている近くまで行って見ました。ここだと、川が高い位置から見えます。セグロセキレイが1羽見えたところで、今季初キセキレイが2羽、双眼鏡に入れてゆっくり見ました。いけないことですが、やはり綺麗なものは嬉しく、ご褒美だと思います。その後、声がして、カワセミが遡っていき、一瞬ですが、背中の青が見えました。二つ目のご褒美です。
 近くの山林でカケスの声がしました。しばらく探して、鳥影は掴めたのですが移動していてはっきりとは見えませんでした。その後、大岩橋の方に下りてくると、ここでも山林ではっきりと声を聞きました。少なくとも2カ所にはいるようです。
 赤津川では、先述のモズと、カルガモ4羽、ダイサギ1羽のみでした。稲も刈られたので、もっといろいろ見えるはずなので、次は、もう少し注意深く見たいと思います。一瞬ケリの声が聞こえたように思いましたが少し残っているイネの蔭だったようで確認出来ませんでした。次を期待します。
 合流点の中洲を、通れるようになった道路からみると、ダイサギが1羽、セグロセキレイが点々と見え、7羽まで数えました。カワウも1羽飛んでいきました。
 陽射しがなく眩しくはなかったのですが、やはり見えやすさには影響するようです。視力、注意力が欲しいところです。いろいろの可能性と手が届かないもどかしさを感じながら、やはり、今後に期待する毎日です。
 工業高校裏の秋咲きのサクラが五分咲きになっていました。
 
カルガモ:公園東池で7羽、西池で46羽、赤津川で4羽、計57羽。
カワウ: 合流点で1羽。
アオサギ:公園、川で1羽。
ダイサギ:合流点で1羽、赤津川で1羽、計2羽。  
モズ: 公園ワンド跡草むら1羽、1羽、1羽、大岩橋河川敷林1 
 羽、1羽、1羽、赤津川電線で1羽、1羽、計8羽。
カワセミ: 大砂橋近く中洲で1羽。
スズメ: 特に目立った群れはなかった。
ハシボソカラス: 特に目立った群れはなかった。
ハシブトカラス: 特に目立った群れはなかった。
カケス:大岩橋付近山林1羽、大砂橋山林で1羽、計2羽。
ヒヨドリ: 公園上空7羽。
ウグイス:公園、川岸の草むらで1羽地鳴き
セグロセキレイ:二杉橋〜上人橋2羽、2羽、1羽、公園で1羽、1 
 羽、合流点で7羽、大砂橋近く中洲で1羽、計15羽。
キセキレイ: 大砂橋近く中洲で2羽。
シジュウカラ:公園東駐車場で4羽、公園サクラ並木3羽、 滝沢ハムサクラ並木で2羽。計9羽。
ホオジロ: 永野川高橋付近電線で囀り1羽。
ガビチョウ:公園内、川の草むらで1羽。

 







「いてふの実」一、旅立ちの風の吹き方
   そらのてっぺんなんか冷たくて冷たくてまるでカチカチの灼き  
   をかけた鋼
です。
 そして星が一杯です。けれども東の空はもう優しい桔梗の花びらのやうにあやしい底光りをはじめました。
 その明け方の空の下、ひるの鳥でも行かない高い所を鋭い霜のかけらが風に流されてサラサラサラサラ南の方へ飛んで行きました。
 実にその微かな音が丘の上の一本いてふの木に聞える位澄み切った明け方です。いてふの実はみんな一度に目をさましました。そしてドキッとしたのです。今日こそはたしかに旅立ちの日でした。みんなも前からさう思ってゐましたし、昨日の夕方やって来た二羽の烏もさう云ひました。
 
 「いてふの実」は、子供)(イチョウの実)の自立と母親(イチョウの木)との別れを描く物語です。
 「ひるの鳥でも行かない高い所を鋭い霜のかけらが風に流されてサラサラサラサラ南の方へ飛んで行きました。」は秋の終りを象徴する言葉です。子供たちは、その音で今日が旅立ちの日であることを知ります。お母さんも、「それをあんまり悲しんで扇形の黄金の髪の毛を昨日までにみんな落してしま」っています。子供たちは、母の元にいたい気持ちや先の不安を抑えて、水筒に水を詰めたりして準備しています。
 そして北風や鳥が空に連れて行ってくれると信じています。子供の一人は空で「黄金色のお星さま」になることを夢見ます。
 もう一人は、杏の王様のお城に行って化物を退治することを想像します。そのやり方は化物を欺して体の中に入って暴れて病気にさせる、というもので、日本昔話の「一寸法師」を思わせます。
 さらに王女様を助け結婚したら、他の兄弟にも領土を分けてあげ、母親には「毎日お菓子やなにかたくさんあげる」と言う夢は、民話によくある出世譚です。これらは、昔話のパターンを、賢治が「子供のために童話を作る」といことを意識して取りいれているのだと思います。
 出発間近、靴が小さくなってしまう子供や、コートが見つからなくなってしまう子もいますが、補い合い助け合って旅立つことが語られ、あるべき兄弟姉妹の姿が書き込まれています。ここにも、「子供のためのお話」を作ろうとした意図があったのではないかと思います。
 人の心の弱さや滑稽さなどを、どきりとするくらいの真実感で描く初期童話―「蜘蛛となめくじとたぬき」、「よだかの星」、「貝の火」などもあるなかで、特殊と言ってもよいのかも知れません。
 また「おきなぐさ」では、季節は夏の始まりと冬の始まり、空に舞い上がるオキナグサと地上に落ちるイチョウと、背景は違いながら同じように種子の旅立ちを描きますが、種子は風に乗って舞い、魂が天に昇り変光星となります。あくまで自然の摂理の中の大きな風景の一つとして創作されていると思います。
 童話「おきなぐさ」裏表紙に「虹とめくらぶだう」、「ぼとしぎ」、「ひのきとひなげし」、「せきれい」、「まなづるとダアリヤ」、「いてふの実」、「やまなし」、「畑のへり」、「黄いろのトマト」、「蟻ときのこ」と列記したあとに「花鳥童話集」というメモがあり、童話集としてまとめたいという意図があったとみられます。同じような列記が、「ひのきとひなげし」〔初期形〕表紙余白に、「童話的構図」というメモと共に残され、そこにも「いてふの実」は入っています。
 童話集『注文の多い料理店』の作品は作品の意図や童話としての構成を練り上げた作品群です。「花鳥童話集」は計画された段階という違いはあり、それだけの成熟はありませんが、自然の成り立ちの中で繰り広げられるものたちの営みが美しく描かれています。
 そのなかで「いてふの実」が、なかにおとぎ話の匂いや道徳的なお話しを盛り込んでいるのは異質とも思えます。賢治がイチョウの実に見たのは、普通の子供たちだったのかも知れません。
 
東の空が白く燃え、ユラリユラリと揺れはじめました。おっかさんの木はまるで死んだやうになってじっと立ってゐます。
 突然光の束が黄金の矢のやうに一度に飛んで来ました。子供らはまるで飛びあがる位輝やきました。
 北から氷のやうに冷たい透きとほった風がゴーッと吹いて来ました。
「さよなら、おっかさん。」「さよなら、おっかさん。」子供らはみんな一度に雨のやうに枝から飛び下りました。
 北風が笑って、
「今年もこれでまずさよならさよならって云ふわけだ。」と云ひながらつめたいガラスのマントをひらめかして向ふへ行ってしまひました。
 お日様は燃える宝石のやうに東の空にかかり、あらんかぎりのかゞやきを悲しむ母親の木と旅に出た子供らとに投げておやりなさいました。
 
 旅立ちの時―子供たちは〈突然光の束が黄金の矢のやうに一度に飛んで来〉た太陽光に〈まるで飛びあがる位輝やき〉、〈氷のやうに冷たい透きとほった風〉に乗って旅立ちます。太陽は〈燃える宝石のやうに東の空にかかり、あらんかぎりのかゞやきを悲しむ母親の木と旅に出た子供らとに投げて〉くれます。
 輝きの表現が次々に重ねられ、新しい命の誕生を祝福しているようです。実際はイチョウの実は地面に落ちてしまうことで再生するのですが、太陽と風と共に描くことで、大きな世界への輝かしい旅立ちを感じさせます。