宮澤賢治、風の世界

宮澤賢治の作品を彩る言葉と風を追って宮澤賢治の世界を訪ねよう。 賢治は風という言葉に何を託したか。風を描くためにどんな言葉を選んだか。 賢治は何を求めて風の中に身を置いたのだろう。 そこに少しでも近づきたくてページを埋めていく。
 
永野川2015年5月上旬
8日
 公園も河川敷もハリエンジュが花をたくさんつけました。ヨシも50cmくらいになり、オドリコソウの群落は見えなくなりました。
 土手の法面には、ハナウド、棘のある蔓性のハート形の葉をつけたもの、ハルジオンに似てまだ花のつかない物、など多様です。
 芝生の除草剤撒きが始まっていました。芝生は発芽抑制剤を蒔くのかと思っていましたが、芝生に混じったアカツメクサなどが立ち枯れていました。大変見た目が悪くなっています。
 また注意書きを出してはいますが、〈立ち入りはご遠慮ください〉〈ご協力をお願いします。〉という義務的な感じで、危険性なども書かれていませんし、綱も張っていませんから子供は入ってしまうと思います。
 ヒヨドリがめっきり減り、時々ペアまたは一羽で飛んでいます。
 新井町で、ヒバリに似た声が低い位置で聞こえ、何かと思っていると、やはり低木に留ったモズの鳴き真似でした。この辺で、聞いたことの無い可愛い声、と思うと、ほとんどがモズです。
 パソコンに不具合があり、他の部分は何とか復元できましたが、今日の分は記憶に頼るのみになりました。鳥のリストは、メモが残っていました。次の通りです。
 
鳥リスト
キジ、コジュケイ、カルガモ、キジバト、アオサギ、ダイサギ、イカルチドリ、トビ1、コゲラ、モズ、ハシボソカラス、ハシブトカラス、ヒバリ、ツバメ、ヒヨドリ、ウグイス、ムクドリ、スズメ、セグロセキレイ、ハクセキレイ、カワラヒワ、ホオジロ、アオジ
 

 







風―1922年5月 (1)雲と風と
 
『春と修羅』に収録された〈風〉という語を含む詩のなかで、1922年5月の発想日付を持つものが6篇あります。この1カ月間に、微妙に推移する心を読んでみたいと思います。
 
(1)雲と風と
 
あゝいゝな、せいせいするな
風が吹くし
農具はぴかぴか光つてゐるし
山はぼんやり
岩頸だつて岩鐘だつて
みんな時間のないころのゆめをみてゐるのだ
  そのとき雲の信号は
  もう青白い春の
  禁慾のそら高く掲げられてゐた
山はぼんやり
きつと四本杉には
今夜は雁もおりてくる
 
  5月10日の日付を持つ「 雲の信号」です。
冒頭〈あゝいゝな、せいせいするな〉を受けて〈風が吹くし/農具はぴかぴか光つてゐるし〉と続き、風は〈いゝ〉ことの事の第一条件です。
山々も歴史のはじまる以前と同じ姿で静まっています。
〈雲の信号〉は作者に何を伝えていたのでしょう。
〈禁欲〉を常に自分に課していた賢治にとって、春、生命の躍動の季節は、辛いものでもあったと思います。〈雲〉は後まで、生々しく性への想いを誘い、賢治に結婚を迫る、という存在だったことを考えると、この〈信号〉もそのような誘惑、あるいはもっと自分を自由にせよ、という呼びかけだったのかもしれません。夜、四本杉に来る鳥には、生物としてありのままに生きているものを感じ、少し救われているのかもしれません。
  大正11年当時、現在の花巻文化会館付近が花巻農学校の敷地と決まり、職員と生徒は、毎日その開墾、整地作業に追われたそうです。〈四本杉〉はその近く、現在の市立花巻中学校北側に、昭和52年に落雷のあと伐採されるまで実在した樹齢300年を超える四本立ちの杉でした。当時の地理、賢治の生活を推測できます。
  農作業の後の清々しさを、まず〈風〉で感じます。そして、風の力は、自身の葛藤をも、さらりとした表現にしてしまうのかもしれません。
 
雲はたよりないカルボン酸
さくらは咲いて日にひかり
また風が来てくさを吹けば
截られたたらの木もふるふ
 さつきはすなつちに厩肥をまぶし
   (いま青ガラスの模型の底になつてゐる)
ひばりのダムダム弾がいきなりそらに飛びだせば
  風は青い喪神をふき
  黄金の草 ゆするゆする
    雲はたよりないカルボン酸
    さくらが日に光るのはゐなか風だ
 
 5月12日の日付を持つ「風景」です。
「雲の信号」よりも少し春のうるんだ空気が感じられる詩です。〈また風が来てくさを吹けば/截られたたらの木もふるふ〉と、風はそんな風景を揺らしていきます。
「 雲の信号」と同様、開墾作業で〈さつきはすなつちに厩肥をまぶし〉、疲れが増しているようです。〈気圏の底〉とも表現した周囲の空気は、閉ざされた〈青ガラスの模型の底〉のようで、作者は〈青い喪神〉そのものです。   風は何回もやってきます。
  カルボン酸は少なくとも一つのカルボキシ基をもつ有機酸で、無色あるいは白色の結晶または液体です。蟻が生合成するギ酸、食酢の酸味成分である酢酸などがあります。
  ギ酸は家畜用飼料の防腐剤や抗菌剤、養鶏業ではサルモネラ菌防除、養蜂業ではダニ殺虫剤として用いる場合があり、農業と深く関わっているもので賢治にとって身近なものだったのでしょうが、ここではその意味ではなく、その〈酸
の匂い、色、効果などを、春の雲の喩としたものでしょうか。
  〈さくら〉も賢治にとって性の象徴と言われます。雲とさくらの風景は、一層揺れ動く心を表すようですが、〈たよりないカルボン酸〉の雲は、「雲の信号」の場合のように、はっきりとした賢治の躍動する心への応援のメッセージは無かったのかもしれません。
   疲れて、明確なときめきを感じられなかった賢治に、雲と桜の風景は漠然としたわだかまりのようにせまっていました。
  冒頭に〈雲はたよりないカルボン酸/さくらは咲いて日にひかり〉を、末尾に〈雲はたよりないカルボン酸/さくらが日に光るのはゐなか風だ〉を置いて、一つの心情と風景を切り取って描いているように思います。 
  2作とも、風は生活に密着し、そして賢治の心の周辺を吹きます。以下次回に続きます。

 







永野川―2015年4月下旬・永野川緑地公園ビギナー探鳥会報告
  4月24日
 このところ好天が続き、初夏を思わせる日々です。
 上人橋から入ると、まず眼に入ったのは、河原に土砂を入れてならすブルドーザーでした。上人橋の下に浚渫工事の立看板の記憶があり、もっと下流域だろうと思ったのですが、ここは公園内、ともいえる隣接地帯です。〈浚渫〉というよりも、草むらやヨシ原を土砂で埋めるています。意味がわからないけれど、今更反対も出来ません。いつものことですが、工事が始まってから知るので、無力感に襲われます。この工事の続きで公園内のワンド跡も整備されてしまうでしょうか。
 鳥は、たくましく、工事後に再生した土地で生きていくかもしれませんし、バードウウォッチャーとしては、探鳥地を別に探すことで解決すればよいのかもしれません。大岩橋の上流へ範囲を広げようとも思っています。
 大岩橋下の川岸に、今年もオドリコソウの大きな群落が花をつけ始めていました。川岸の整備が、ここに及べば、それも埋められていくことになるでしょうか。意味も分からないし、行動する方法も分からないもどかしさがありますが、このところ一歩が動き出せません。
 上人橋近くで、ホオジロの囀り、これは定位置のようです。季節が進んでいます。合流点近くの小さな田でもヒバリが囀り、キジはあちこち9か所で顔を出し声をあげ、カップルもできていました。
 赤津川で、今季初のウシガエル、外来種ですが、季節の声です。バンの額板がきれいな赤となりました。
 ヒヨドリの16羽、そして30羽超の群れにも会いました。
イカルチドリ2羽、そう、もうコチドリ等、シギチが来ているかもしれません。次の機会には大平方面に行ってみましょう。
 日差しもちょうどよく、風もないよい日和で、渡りを急ぐ鳥たちと、繁殖の準備の鳥たちに会い、厳しい現実も忘れそうな探鳥でした。
 
鳥リスト
キジ、カルガモ、コガモ、キジバト、アオサギ、ダイサギ、イカルチドリ、バン、モズ、ハシボソカラス、ハシブトカラス、シジュウカラ、ヒバリ、ツバメ、イワツバメ1、カワウ、ヒヨドリ、ツグミ、スズメ、ウグイス、セグロセキレイ、ホオジロ
 
永野川緑地公園ビギナー探鳥会の報告
5月2日
朝から暑い日でした。
いつもと違って30人を超える人たちが集まりました。下野新聞ほか三大新聞の地方版にも掲載した効果が上がったようです。ご夫婦、お父さん、お母さんに連れられた子どもたち、年配の方々、と幅広く、ビギナー探鳥会の理想の姿です。
ほとんどが、観察会初めて、ということで、双眼鏡の使い方からゆっくり始まりました。
近くに鳥が来なくて、はるか離れた場所にいるスズメ、同じエリアにいたクドリを望遠鏡にいれていただき、〈物差し鳥〉を二つ同時に見ることになりました。
川岸の方へ移動すると、公園内の木にカワラヒワが、ホオジロが少し離れたヤナギの低木のてっぺんで囀って、これはみんな見ることが出来たと思います。
キジの鳴き声があちこちで聞こえたのですが、姿は終了間近に、遥か対岸で、一瞬飛ぶ姿を見られただけ、アオサギ、ダイサギ等も一瞬飛行した姿のみでした。
指導員さんが、土手の法面にオドリコソウを見つけて下さいました。ここにはもうないと思ったのですが、3か所程ありました。やはりこれは貴重なものだというお話でした。川沿いの群落も見ていただきました。
初めて参加された方に、刈り取りや除草剤散布のお話をすると、困ったこと、として受け入れてくださるのですが、なかなかそれ以上進まないのが現状です。
イカルチドリが、川をバックにしていて、順光でよく見え、多くの人が楽しんだと思います。
大岩橋下の草むらで、チッチという声のみ聞こえるのが、指導員さんのお話では、アオジ、ということでした。よく耳に残して、次の機会には判断できるといいと思います。
例年、探鳥会は5月中旬でしたが、今年はまだ夏鳥のヨシキリも来ない時期で、少し淋しいものがありました。
また、ここは冬鳥の飛来が多く、カモもヒドリガモ、マガモ、コガモ、ホオジロ類も、カシラダカ、オオジュリンなども来ます。今年度はこれ一回で探鳥会は終りです。できれば、来年度は冬期の探鳥会もお願いしたいところです。
小学校低学年以下の子供たちが多く、初めて会ってお友達になって遊ぶ子供たちもいて、頼もしい後輩たちに会えた気がします。
 
鳥リスト
キジ、カルガモ、キジバト、アオサギ、ダイサギ、イカルチドリ、トビ、コゲラ、モズ4、ハシボソカラス、ハシブトカラス、ツバメ、ヒヨドリ、ムクドリ、スズメ、セグロセキレイ、カワラヒワ、ホオジロ、アオジ

 
 
 







永野川2015年4月中旬、永野川ビギナー探鳥会のお知らせ
 
永野川ビギナー探鳥会
日時 5月2日(土) 9時集合 12時解散
集合 栃木市岩出町 永野川緑地公園西駐車場
初心者向け 双眼鏡の貸し出しあり
セキレイやカワセミなど河川の鳥 運がよければ渡りの途中のコムクドリなど。
 
16日
 今週も先週と同じように荒天で、雨が二日、雷雨と突風と続き、やっと晴れました。先週も同じような状況で雪の後でしたが、鳥が多かったのに、今日は少なめでした。
 二杉橋から入ると、ツバメは1羽ずつひらりと舞って来て、合流点近くまで行っても3羽でした。
 ウグイスは元気で、第五小付近で2か所で鳴きました。その後も元気で公園内、大岩橋上、など5か所で囀っていました。
 第五小体育館付近の川の中州で、カワウが羽をひろげ乾かす姿が見られました。
 カルガモは、もう繁殖期なのか、2羽でいるものが多く見かけられました。
 セッカが今季初めて、新井町付近で鳴き声を確認でき、ヒバリも3か所で囀ってにぎやかでした。
 ヒヨドリが22羽の群れで、幾分小さめな声で鳴きながら上空を通り過ぎて東北の方向に進んでいきました。移動しているのでしょうか。
 大岩橋近くの民家で、エナガとシジュウカラ、ここは山続きの広い敷地と屋敷林のある家なので、多分たくさんの鳥がくるのでしょう。私有地なので覗くことは出来ず残念です。
 カワラヒワも、もう群れではなく1羽、2羽ずつ、これもペアなのでしょうか。囀りではなくピルピル、という感じで、やっと息取れるほどの小さな声でした。
 公園の工業高校近くの芝生で、ツグミが6羽、点状にいながら、でも何かまとまっている感じです。こちらももう渡って行くのでしょうか。公園の調整池のヒドリガモは3羽になりました。
 セッカやペアを組んだ鳥、渡りの準備の鳥に、鳥の季節の移ろいを感じ、ツクシやキュウリグサを見つけ、芽生え始めた広葉樹、5分咲きの八重桜、なども楽しみました。
渡りの途中のコムクドリやムシクイ等を見つけること、これからの目標です。
 
鳥リスト
キジ、カルガモ、コガモ、マガモ、ヒドリガモ、キジバト、ダイサギ、バン、モズ、オナガ、ハシボソカラス、ハシブトカラス、シジュウカラ、ヒバリ、ツバメ、カワウ、ヒヨドリ、ツグミ、スズメ、ウグイス、エナガ、セッカ、ムクドリ、セグロセキレイ、カワラヒワ、ホオジロ

 







永野川2015年4月上旬
 
9日
 2、3日降り続いた雨、昨日の雪と続いた悪天候が、どうにか上がりましたが、気温は3月初旬なみで、ダウンコートで丁度よい日でした。
この寒さで、鳥たちはどうしているのか、気になりました。でも、二杉橋から遡ると、ツバメが川面をひっきりなしに飛び、ウグイスはしきりに鳴き、川の西側の森林あたりからコジュケイの声がしました。鳥の季節は後戻りできないようです。
 ツバメはなるたけ重複しないよう、一か所に飛ぶツバメを数えて進みました。二杉橋近くでは、10羽ほど、イワツバメも3羽混じっていました。
 睦橋手前の民家の道路わきの屋敷林で、カケスが2羽、見え隠れしながら飛びました。こんな近くで見られたのは初めてです。いつものゲーゲーという声のほかに、別の細い鳴き声も聞こえた気がします。
 新井町では、キジがあちこちで鳴き、廃工場付近の草むらでは、道路近くに♀が潜んでいて、枯れ草が勢いをなくしていたためによく見えました。
 川岸の草むらで、チッチ、という声が盛んにします。二杉橋付近でも聞こえていました。帰って「鳴き声図鑑」で確かめましたが、アオジか、カシラダカか、区別がつきません。このあたりにいるのはアオジの方が多いし、季節的にもアオジの確率は高いとは思います。アオジの姿と声はいっしょに確認したことがあり、その時の声よりもカシラダカに近いような気もするのですが、寒さのせいか一向に現れず確認できません。これはカウントしないことにしました。
 合流点付近の桑の木に、スズメに混じってシメ1羽、その他の場所では見かけませんでした。
 大岩橋上の川岸でダイサギ1羽、すっかり嘴が黒くなり、嘴の下の緑もはっきり見えました。ここでもウグイスが大きな声で囀りました。
 モズもあちこちで狩りをしていました。川岸から下に飛ぶ姿を見ることができ、羽の縁の模様が図鑑で見るように、きれいに見えました。これも初めてです。
 児童遊園近くの芝生で、ツグミが3羽。今日はそのほか1羽しか見ませんでした。
 調整池のヒドリガモは東に6羽、西に30羽、この前より減りましたが、まだ渡り切ってはいないようです。合流点近くでマガモも2羽、公園内の川にはコガモが珍しく25羽の群れを作っていました。
 公園で自転車がパンクして、永野川の西岸を廻らずに帰ることになりました。
 残念でしたが、公園内のヤナギの低木のてっぺんで、ホオジロが絵のような姿で囀り、元気なウグイスや、45羽にのぼるツバメ、初めてのイワツバメに会いました。まだ残るカモや、間近でみるカケスなど、入れ替わる二つの季節も感じられて、楽しい探鳥でした。
ソメイヨシノは散りはじめ、通路は桜色でした。花びらの一つ一つがとても大きく美しいことも知りました。
 
鳥リスト
キジ、コジュケイ、カルガモ、コガモ、マガモ、ヒドリガモ、キジバト、アオサギ、ダイサギ、バン、イカルチドリ、イソシギ、モズ、カケス、ハシボソカラス、ハシブトカラス、ヒバリ、ツバメ、イワツバメ、カワウ、ヒヨドリ、ツグミ、スズメ、ウグイス、ムクドリ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、カワラヒワ、シメ、ホオジロ