宮澤賢治、風の世界

宮澤賢治の作品を彩る言葉と風を追って宮澤賢治の世界を訪ねよう。 賢治は風という言葉に何を託したか。風を描くためにどんな言葉を選んだか。 賢治は何を求めて風の中に身を置いたのだろう。 そこに少しでも近づきたくてページを埋めていく。
 
永野川2017年12月下旬

 

23日 永野川緑地公園ビギナー探鳥会

台風で公園が破損して以来、久しぶりの開催です。樹木や中州の状態も変わっています。数日前に来たときは、それなりに鳥種が出ましたが、本番ではどうなのか大変気になるところでした。

でも天気に恵まれ、1時間半ほどのなかに26種の鳥が出てくれました。特に、キセキレイ、ハクセキレイ、セグロセキレイが、間を置かずに現れ、良い比較が出来たと思います。

目玉のカワセミがヨシのてっぺんに留まっていてくれて、おそらく全員がプロミナで見ることが出来たと思います。その後も2度、川を下る姿が見られました。

アオサギ、ダイサギが滝沢ハムの大木のてっぺんに留まってしばらく動かず、珍しい光景を見せてくれました。

私は見損なったのですが、以前見られたヤナギの大木の倒れた辺りでクイナも現れたとのことでした。今後は注意して見たいと思います。

川縁に下りたところで、ほとんど動かずに、コースの半分くらいで予定した鳥が見られて終了しました。

調整池には廻りませんでしたが、ヒドリガモが来てていたので27種になります。

 ビギナーさんが多かったと思いますが、満足して帰ってくれたら嬉しいことです。

  

鳥リスト

カルガモ、ヒドリガモ、カイツブリ、キジバト、カワウ、アオサギ、ダイサギ、クイナ、イカルチドリ、イソシギ、トビ、カワセミ、モズ、ハシボソカラス、ハシブトカラス、シジュウカラ、ヒヨドリ、ウグイス、ツグミ、ジョウビタキ、スズメ、キセキレイ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、カワラヒワ、シメ、ホオジロ、

 

26日 番外 我が家に来たツミ

初めてツミを見ました。ヒヨドリが鳴いて逃げたあと、ヒヨドリ大の鳥が残っていて、少し明るいところに移動してくれたので、よく観察できました。胸の上の方が縦斑で、下の方が横斑で、幼鳥だと思います。

アイリングが綺麗で可愛くて小さくても鋭い嘴があって、やはり猛禽です。

 

28日 永野川赤津川

気温はさほど低くはなかったのですが、やはり10時近くなると風が吹き始め、特に川沿いでは自転車に乗れないほどでした。でも日にちも無いので、なんとかやり通そうと自転車を押しました。でもおかげで、大事な「初めて」に出会いました。

 ヨシガモ:ヒドリガモを探していましたが、カルガモが目立ち、その中に、輝くような緑の頭部を持つカモがいました。マガモではなく緑色の頭部の羽は後ろになびいて光線の加減で様々な色に変化します。ナポレオンの帽子です。以前一度だけ、井頭公園でみたヨシガモでした。3羽もいました。冷たい風で迷ってきたのでしょうか。いつまでいてくれるでしょうか。もう一度見られるでしょうか。がいたのかも知れませんが、帰って見た図鑑のと同じものはいませんでした。もう一度確かめてみたいのですが予定がたちません。

 カシラダカ:大岩橋上流の河川敷林で、足もとの草むらから小さな鳥がたくさん飛び立って、少し離れた樹木に次々に留まりました。双眼鏡で見るとカシラダカでした。今季初、それに、このような数はここでは初めてです。なんとかカウントすると21羽になりました。1羽だけ、眉部分が黄色いもの―おそらくミヤマホオジロ―が見えました。

この河川敷林は、一度、ブルドーザーで均されてしまいましたが、林が復活したのです。ここで、今まで何度も「初めて」を見ました。アトリ・レンジャク・アカゲラ・マヒワ……。この事実を皆が知ってほしいと思います。またブルドーザーをかけるようなことがないように祈ります。

 

 今日は上人橋から赤津川へ先に入りました。

 さくらこども園の庭の樹木に、エナガの声がして7羽が飛び交っていました。賑やかな子どもたちの声にもまけず、集まってくるのですね。 合流点でカワウ1羽が飛びました。

カルガモ:合流点のすぐ上で36羽群れていました。赤津川は、泉橋から上は水が無く、ここに集まっていたのかも知れません。公園の西池に26羽、永野川の睦橋下で28羽、大きな群れが多くなりました。

ヒドリガモ:公園の西池に5羽のみでした。

コガモ:永野川の高橋付近で47羽、ここだけで、大きな群れを作っていました。

イカルチドリ・イソシギ:大岩橋上の中州で1羽、永野川の睦橋下中州に2羽が一緒に走っていました。イソシギもここから上流に飛びました。

ケリ:赤津川のインターに近いところで、水の無くなった川の中を3羽が歩いていました。群れで来たときから1か月以上立ちますが、2羽以上見たのは今日が初めてです。

アオサギ:観測地全体比広がって8羽、赤津川では一目で幼鳥と分る個体にあいました。小ぶりで顔も小さく、帰って図鑑で見た色の特徴も備えていました。

ダイサギ:赤津川で6羽、滝沢ハムの調整池で5羽、公園の池で1羽、以前のように大群は無くなりました。

カワラヒワ:高橋際の民家の大木で13羽、赤津川で9羽の群れが旋回して田の方に飛んだほか、大岩橋上の河川敷林で7羽、公園で3羽、少し増えてきましたが、100羽単位にはなりません。

トビ:久しぶりで赤津川と公園で空を旋回していました。

スズメ:20羽+、100羽+の群れと、永野川岸の草むらで10羽、15羽、数が増えています。

シメ:風にあおられる木に飛び交うのは見つかりにくかったのですが、公園で1羽、3羽。大岩橋でも1羽で5羽になりました。

 

風の中で、自転車が倒れ足り、記録板と用紙が吹き飛んだりして必死の思いでしたが、ヨシガモに会えた嬉しさと、カシラダカとミヤマホオジロが来てくれた嬉しさで帳消しになりました。やはり冬の永野川は面白いことが一杯です。守りたいと思います。

 

鳥リスト

カルガモ、ヒドリガモ、コガモ、ヨシガモ、カイツブリ、キジバト、カワウ、アオサギ、ダイサギ、イカルチドリ、イソシギ、ケリ、トビ、モズ、ハシハボソカラス,ハシブトカラス、ヒヨドリ、エナガ、ムクドリ、スズメ、セグロセキレイ、ハクセキレイ、ミヤマホオジロ、カシラダカ、ホオジロ、ツグミ、カワラヒワ、シメ

 








永野川2017年12月中旬
ビギナー探鳥会のお知らせ
日時:12月23日(土)
集合場所:永野川緑地公園西駐車場
日程:受け付け開始8:40 説明と注意9:00 バードウォッチング
  9:10〜  鳥合わせ10:40 解散11:00
持ち物 :雨具、筆記用具、あれば双眼鏡・図鑑
雨天中止  申込不要
問い合わせ 日本野鳥の会栃木 рO28−625−4051  火・木・金9時〜16時
Eメールwbsj-tochigi@nifty.com

 

18日

大変良いお天気でしたが、気温が低く、様子を見て10:00に家を出ました。バードウオッチャーとしては、不適格ですが、寒さには弱いのです。

今日のトピックスはコガモ:二杉橋に入ると、思いがけず、コガモ20羽単位の群れが3回連続して遡っていきました。今季初の大群のコガモです。コガモが群れて飛ぶと、その羽の色がとても綺麗です。福島潟で見た、1,000羽単位の群れを思い出しました。上流に移動したので、それ以後のコガモのカウントはしないことにしました。散ってしまったらしく、睦橋付近で20羽ほどの群れだけが残っていました。

 

もう一つのトピックスは探鳥会が近いので、公園の鳥です。

ハクセキレイが4羽、セグロセキレイ6羽、キセキレイも1羽比べてみることが出来ました。

イカルチドリ:同じ中州に、ピオッと鳴いて1羽、少し上流で2羽一緒に走って行きました。

イソシギ:近くの水際をイソシギが1羽、歩いていました。

カワセミ:イソシギを目で追っていると、どこかでチーと鳴く声が聞こえ、カワセミが下って行きました。

シメ:公園のエノキで2羽、ここから対岸に渡ったり、木の中を飛び回ったりしていました。

カワラヒワ:公園のワンド跡で1羽のみでした。うまくいけば、ここには50羽単位の群れがいるのですが、今年はまだ増えてこないようです。

公園の調整池

ヒドリガモ:東池に1羽、西池に19羽、いつもはどちらか片方にまとまっているのですが。

カルガモ:東池に19羽でした。

キジも一声鳴いて、探鳥会にふさわしい鳥たちが揃った感じでした。本番でも現れてほしいですが、こればかりは偶然の幸運を祈るしかありません。

 

その他の鳥たち:二杉橋から上人橋付近まで、川の水が大変澄んでいて、川岸でアオサギ、藪でウグイス、ブッシュでアオジ2羽、中州でツグミ1羽、セグロセキレイ2羽、浅瀬でカルガモ9羽、カイツブリ2羽、多種類に会いました。民家の屋敷林にはいつもの通りヒヨドリ15羽+の群れが潜んでいます。

大岩橋の少し上の山林の近くでノスリが1羽、かなりゆっくり旋回していました。日に照らされ、白く美しく、羽の黒い紋がはっきり見えました。ここでは何年ぶりでしょうか。

赤津川に入ると、カルガモが少し大きな24羽の群れを作っていました。

スズメは、睦橋から上人橋の間では3・2・5・10、公園で4羽、大岩橋で7羽、赤津川で150+で計181羽、やはり大群が見られます。

ダイサギ:先回は20羽単位の群れが見えたダイサギですが、赤津川の河畔や田に、ぽつぽつと離れて19羽が確認されただけでした。

ハクセキレイ:睦橋から上人橋で3羽、赤津川で1羽。

セグロセキレイ:二杉橋から上人橋で4羽、赤津川で2羽。

キセキレイ:大砂橋下で1羽。

シメ:公園内以外では大岩橋の河川敷林で2羽。

シジュウカラ:滝沢ハムのクヌギ林、大岩橋の河川敷林で2羽ずつ。木々が葉を落として、鳥を見つけるのが楽です。光の方向を選んで遠くからでも見えるのも嬉しいものです。

カワラヒワ:公園以外では滝沢ハムのクヌギ林で1羽。

カルガモ:二杉橋上で1羽・8羽、調整池で19羽、赤津川で24羽、大群は来なくなりました。

 

公園で多くの鳥種をみて、ビギナー探鳥会の成功が感じられ、ノスリにも久々に会え、充実したひとときでした。

 

鳥リスト

キジ、カルガモ、ヒドリガモ、コガモ、カイツブリ,キジバト、アオサギ、ダイサギ、イカルチドリ、イソシギ、ノスリ、モズ、ハシハボソカラス,ハシブトカラス、シジュウカラ、ヒヨドリ、スズメ、セグロセキレイ、ハクセキレイ、キセキレイ、ホオジロ、ツグミ、カワラヒワ、シメ








永野川2017年12月上旬
ビギナー探鳥会のお知らせ
日時:12月23日(土)
集合場所:永野川緑地公園西駐車場
日程:受け付け開始8:40 説明と注意9:00 バードウォッチング
  9:10〜  鳥合わせ10:40 解散11:00
持ち物 :雨具、筆記用具、あれば双眼鏡・図鑑
雨天中止  申込不要
問い合わせ 日本野鳥の会栃木 рO28−625−4051  火・木・金9時〜16時
Eメールwbsj-tochigi@nifty.com

 
 早朝は濃霧で、出かけるのは危ぶまれました。少しずつ晴れそうでもありましたが、気温がとても低く、空気に氷の粒がある感じでした。それで少し遅めの10:00出発になりました。
 二杉橋から睦橋までの河川敷で、イカルチドリ2羽が追いかけるように走り回っていました。その他にもう1羽が歩いていました。イソシギも2羽流れを下っていきました。
 ハクセキレイが4羽、セグロセキレイが6羽、キセキレイも1羽、中州も出来、条件が整ったのでしょう。川岸のブッシュでは、ウグイスの地鳴きが2カ所で聞こえました。
 今日のトピックスは ケリ:11月上旬に15羽の群れを見かけた後、全く会えませんでしたが、赤津川岸の休耕田の草に隠れるようにしていた1羽を見つけました。今後を期待します。
 カケス:大砂橋近くの植林された杉の林にカケスの声が響いていました。疎林なので見えるかと思って待ったのですが、現れず声だけが続いていました。今後に期待出来そうです。
 シメ・ジョウビタキ:大岩橋河川敷林で1羽ずつ。シメが少ない日です。
 ダイサギ:今日もダイサギが大変多く、睦橋近くに5羽、上人橋近くで別の群れ11羽、調整池に4羽に会いました。その後滝沢ハムの調整池に21羽いました。これは、もしかすると今まで見たものが集まったのか、とも思いましたが、全部別個体ならば、赤津川の3羽を加えれば43羽になります。
 アオサギ:高橋付近の民家の屋敷林の大木の頂上に1羽が留まっていました。ふと営巣地を思い出しました。でもここにはその個体だけで、赤津川にも2羽のみでした。
 エナガ:上人橋の近くの駐車場の広葉樹でエナガの声が聞こえました。かなり大きな木の枝一面に鳥が群れ、思わず笑ってしまいました。人が見たら怪しまれそうです。エナガが13羽の群れ、7羽の群れ、シジュウカラ6羽、コゲラが2羽、いつもの混群に、なにか鮮やかな黄色の体の鳥が一瞬目に入りました。 
 コガモ・カルガモ:コガモはまだ、睦橋付近の川岸に4羽のみでした。カルガモは上人橋までに14羽、公園の西池に18羽、赤津川で8羽、12羽、全52羽で大きな群れはありませんでした。
 ヒドリガモ:いつもは西池なのに今日は東池に21羽集っていました。   
 カワラヒワ:公園のニセアカシアの木に2羽、4羽、6羽、その後15羽が飛び立ち、大岩橋の河川敷林で1羽、16羽、赤津川岸で1羽、1羽で飛ぶ者が多いようです。今年はまだ大きな群れに会いません。
 
 川や田の面から靄が立ちこめていました。いつもは見られない風景は嬉しいものでした。
 我が家の庭にも.今朝はエナガとシジュウカラの混群がきていました。声のみでカウントは出来ませんが、今年は鳥が多い気がします。メジロ、ウグイス、コゲラもきます。一つには庭の剪定が遅れているせいかもしれません。
 順調な冬鳥の滑り出しです。探鳥会も成功するといいと思います。
 
鳥リスト
キジ、カルガモ、ヒドリガモ、コガモ、キジバト、カワウ、アオサギ、ダイサギ、イカルチドリ、ケリ、イソシギ、コゲラ、モズ、カケス、ハシハボソカラス,ハシブトカラス、シジュウカラ、ヒヨドリ、ウグイス、エナガ、スズメ、セグロセキレイ、ハクセキレイ、キセキレイ、ツグミ、ジョウビタキ、カワラヒワ、シメ、ホオジロ、

 

 
 







短歌に吹く風―文学の始め―(三)

 次の括りは、〈大正四年四月〉で、この年十九才、四月に盛岡高等農林学校農学科第二部に入学、校規によって、後に「自啓寮」となる寄宿舎にはいります。
一月から受験勉強のために北山の教浄寺に下宿したこと、八月には願教寺で島地大等の歎異抄法話を聞くなど、新たな仏教とのつながりを持ちます。 
 
 249 風吹きて/豆のはたけのあたふたと/葉裏を白み/
              なにかくるほし     
 
風を詠った作品は、この一首のみです。おそらく栽培されている大豆と思われます。賢治は、豆畑への思いは強かったようで、他の作品でも取り上げています。
 こんな豆ばたけの風のなかで 「電車」(『春と修羅』一九二二、八、一七)
 
豆畑だつてほんたうにかなしいのに 「雲とはんのき」(『春と修羅』一九二三、八、三一)
 
(豆ばたけのその喪神のあざやかさ)  「昴」(『春と修羅』一九二三、九、一六)
 
畦に植はった大豆もどしどし行列するし 「三一七 善鬼呪禁」 一九二四、一〇、一一」 
(「春と修羅第二集」)
 
古川あとの田はもうみんな沼になり/豆のはたけもかくれてしまひ「七三〇ノ二 増水」(一九二六、八、一五「春と修羅第三集」)
 
……大豆の葉が/ 水のなかで銀いろにひかってゐる……〔白菜はもう〕(「口語詩稿」)
 
  風に吹かれる情景を取り上げているのは、この短歌と、「電車」のみですが、『春と修羅』の三作は、風の動きを感じさせ、それに心動かされる風景として描いています。
大豆の葉裏は、賢治が好み作品に現れるギンドロ(ウラジロセイヨウハコヤナギ)のような白さは、植物図鑑を見ても記述はありません。でも太陽の下、平面で一斉に風に翻ることで、少しの裏の色の違いも独特の風景を生んだのかも知れません。
体に受ける風と共に、視覚に入る色彩の動きは、若い心を波立たせたのでしょう。
 
 231かゞやける/かれ草丘のふもとにて/うまやのなかの
    うすしめりかも
 232ゆがみうつり/馬のひとみにうつるむかも/五月の丘
    にひらくる戸口
 234をちやまに/雪かゞやくを 雲脚の/七つ森にはおき
    な草咲く
 235雲ちゞれ/つめたくひかるうすれ日を/ちがやすが
    るゝ丘にきたりぬ
 244野馬みな/はるかに首あげわれを見る/みねの雪より
    /霧湧き降るを
 248りんごの樹/ボルドウ液の霧ふりて/ちいさき虹のひ
    らめけるかな
 252花粉喰む/甲虫のせなにうつるなり/峡のそら/白き
    日/しょんと立つわれ
 
 〈風〉という語はなくても、自然のなかで、風景の動きに風を感じさせる作品が、この括りには多い気がします。また光への反応がとても繊細です。入学当初から、土日にかけて出かけていた鉱物などの採集や、高等農林学校の実習地御明神や、畜産科の実習農場のあった外山などへの山歩きの中で、自然に包まれた自分を感じ取っているようです。
 231や252では、小さなものに映り込む風景を光と共に感じ取っています。252ではその周辺の大きな風景と、その中の自分の小ささを詠い、〈しょん〉というオノマトペがよく効いています。
 
 次の括りは〈大正五年三月より〉です。賢治は盛岡高等農林学校二年生、二十歳です。3月には、東京から京都への修学旅行に参加し短歌は20首に及びます。 4月には自啓寮で、その後深い親好を持つ保阪嘉内と同室となります。さらに〈明治四十四年一月より〉所収の21、21a22にも登場する盛岡天守公教会の司祭プジェ神父とも親交を結び、280〜281まで5首の短歌をのこします。様々な新しい経験が短歌を彩るようになります。
 
 272 風わたり/しらむうれひのみづうみを/めぐりて重き
    ひわいろのやま
 
 修学旅行中の短歌で270、271に〈ひわいろ〉、〈はこねのひる〉、〈凾根やまかな〉の言葉があるので、箱根の風景だと思います。風の渡りによって湖の広さ、静まりかえる湖、〈重きやまやま〉に自己の心象を映します。
      
 296 風きたり/高鳴るものはやまならし/またはこやなぎ
    /さとりのねがひ
 
 〈やまならし〉は、別名ハコヤナギ、ヤナギ科の落葉高木です。葉裏は白に近く、葉柄が両側から押しつぶされた形なので風に動かされやすく、賢治の好むものだったと思います。
 歌稿A296には〈はこやなぎ〉は〈ポプラ〉(セイヨウハコヤナギ)と記されます。ヤマナラシと同様に落葉高木で、葉の形から左右に揺れやすくなっています。風に吹かれる音も様子も似ています。 そこに〈さとりのねがひ〉を胸に賢治が立っていた風景が浮かびます。
 
 314 雲かげの行手の丘に/風吹きて/さわぐ木立のいとあ
    わたゞし      
 
 315かたくりは/青き実となる /恋ごゝろ/風にふかるゝ
    /五月の峡に
 
 この二作は同じ時の作でしょうか。五月には北上山地を歩いたという記録があり、姫神の山地を抜け、広い野原に出て、鈴蘭の群生地を通り、さらに広い耕地も歩いています(注1)。その時のものかも知れません。
 314で、風は雲を動かして広い展望の先の風景を変えていきます。叙景歌ですが、遠景から周辺まで吹き抜ける風の動きで言及して見事です。      
 315では足もとの〈かたくり〉の清冽さに心引かれ、内心の重さを、吹く風に救われたのでしょうか。
 
 323 風は樹を/ゆすりて云ひぬ/「波羅羯諦」/あかき
    〔は〕みだれしけしの一むら
 
 この風景は、大正10年夏ごろ成立の「ひのきとひなげし」を思い起こさせます。「ひのきとひなげし」は、ひなげしのおごり高ぶっている様子、〈ひのき〉の雄々しい動きなど、風の作り出す情景から物語を作り出しています(注2)。 この短歌を原風景に、長く心に温めた様々な思想―ねたみ、そねみ、おごりへの警鐘、日常の大切さ、魔性と聖性の区別の難しさ、などを盛り込んで作られた物語です。 
 大正5年のこの時点で既に、ヒノキに般若心経の一句「波羅羯諦」と言わせ、〈あか〉い〈けし〉を配置しています。大正六年七月に発行した文芸同人誌『アザリア』創刊号に載せた「みふゆのひのき」では、昼間は怒りに燃えたひのきの姿を、雪をかぶって菩薩にも見えるヒノキを描きます。このことについては別に記します。
 何処で見た風景なのでしょうか。
〈大正六年一月 一九一七年〉は、430〜449まで、ヒノキを詠んだ連作があり、 これは宿舎の窓から見て読まれたと推定されています(注1)。1917年の1月の2年生時には西端に近い9号室だった賢治は、寮の南西方に1本の若齢のヒノキを見ていたと思われます。この推定位置に、現在ヒノキの大径木(DBH76.5cm,樹高20m)が残っているそうです(注3)。
ヒノキの自然分布は福島県が北限で、盛岡での植栽個体もそれほど多くはないのですが、 異郷の植物として賢治の関心を引いたのでしょうか。
 また藩政時代、植物園を含むあたりは、上田三小路として新たに作られた侍屋敷町で、ヒバ(実はサワラ)を生垣としていたといいます(注4)。ヒノキの近接種で、身近なところにあって、ヒノキに似た樹勢や雰囲気などは様々な想像をかき立てたともいえるでしょうか。
 また当時の植物園には「見本園」があり、薬用植物としてケシを植えていたとも思われます。ケシとヒナゲシの混同は、土井晩翠詩集『天地有情』(注2)からのヒナゲシのイメージと実際に見たケシとの混同故かも知れません。
いずれにしても、風によって動かなければ、この短歌の情景は生まれなかったのだと思います。
 
 328 風ふきて/ポプラひかればばうすあかき/牛の乳房も
    /おなじくゆれたり      
 
 牛舎の風景です。ここでは、風によって動く樹木の輝きと牛の乳房を同列に捕らえています。輝くポプラの冷たさと温かな牛の乳房、眼線の遠い先と目前のこととの対比を狙ったのでしょうか。
 
 次の括りは〈大正五年七月〉です。7月30日に上京、8月いっぱい神田の東京独逸学院の「独逸語夏季講習会」を受講します。また9月には秩父、三峰地方、土性調査見学に参加します。東京の生活への想いや、秩父地方での短歌はのこされていますが、風を詠むことなく、この括りでは以下の二首のみです。
 
         ※農場
 355むらだちて/あひるはすだき/風去りて/トマトさ
    びしく/みちにおちたり  
 
 356風去りて/黒き堆肥はこほろぎの/なけるはたけには
    こばれにけり   
 
 〈※農場〉のタイトルを持つ2作は同時期の作品とみられます
 353では、あひるの鳴き声とともに道に落とされたトマトを描きます。歌稿A355では、〈風吹けばまるめろの枝ゆれひかりトマト淋しくみちに落ちたり〉で、トマトと対比させて、マルメロを描いています。〈まるめろ〉は外来種のバラ科落葉高木で、セイヨウカリンとも呼ばれ、黄色い直径10センチほどの香りの良い実がなります。今ではカリンと混同されることもあるそうです。太陽に当たれば輝くような風景をうみ、もしかしたらその香りさえ感じられたかも知れません。
歌稿Bでは、その対比がない分、トマトの存在感が増し独特の匂いも感じられ淋しさが際だつ気もします。
 356では堆肥の匂いが感じられます。堆肥は黒く栄養があって望ましい肥料なのでしょう。
 この括りでは、風の中の香りを感じさせるものとなっています。
 
 次の括りは〈大正五年一〇月〉です。この間、10月4日から6日まで山形市の奥羽連合共進会見学、天長節拝賀式、立太子礼祝賀式、などがあり、報恩寺参禅やや願教寺仏教会の友人との交わりなどを持ちました。
この間の短歌は、風景の中に様々な葛藤が歌い込まれることが多く、ひたすら風に吹かれることが少なくなったのか、次の一首のみです。
 
 416ちゞれ雲/銀のすゝきの穂はふるひ/呆けけしごと
   /雲かげの丘  
       
 風という語は使われず、ススキの原の風景に風が感じられます。〈呆けけしごとき〉という形容も、少し投げやりで、感情移入そのままの「人間の言葉で」す。
 380〜381も〈落ちきたる霧と半月/なにもかもやめてしまへと/どなりてやらん〉、〈つきしろに/うかびいでたる薄霧を/むしゃくしゃしつつ/過ぎ行きにけり〉なども同様です。ひたすら風の造る風景に身をゆだねていた初期の作品が変化していく過渡期だったかもしれません。
 11月には『校友会々報』三二号に、296や、328と同時期の農場風景、3月の関西旅行や、東京の生活、9月の秩父での体験の作品が載ります。その作品は、体験したときの作歌と比べると、より言葉を選び推敲され、臨場感や直かの感激が薄れている感があります。
 〈353星あまりむらがるゆゑ/三みねの/そらはあやしくおもほゆるかも〉・〈352ほしの夜を/いなびかりする三みねの/山にひとりしなくか こほろぎ〉は、〈26 星あまりむらがれる故 恐れしを 鳴く虫のあり 三みねのやま〉に集約されます。
 〈351 鳳仙花、実をはぢきつゝ行きたれど/峡の流れの碧くかなしも、〉は、〈27鳳仙花、実を弾きつつ、行くときは、峡の流れの 碧々として〉と微妙な推敲がなされます。
 〈270ひわいろの/重きやまやまうちならび/はこねのひるの/うれひをめぐる。〉は、〈肥りたる、ひわ色の山、たちならび、明きうれひの 凾根やまかな〉になります。
この時期、賢治には、自らの短歌を推敲して発表するという体験があったのだと思います。推敲の効果や意図については、別の機会に考察したいと思います。
 
注1 堀尾青史『宮沢賢治年譜』 筑摩書房1991
注2 小林俊子「ひのきとひなげし」―風はなぜ吹いたか― 
   個人ブログ「宮沢賢治、風の世界」2015、8、15
注3 三浦修・米地文夫「宮沢賢治の作品にみられる植物と植
   物園」―総合的学習を目的とした大学植物園の活用につ
   いて―『岩手大学教育学部研究年報第59巻第2号 
  (1999.12)131〜144.』
注4 岩手大学付属植物園公式ホームページ

 







永野川2017年11月下旬
 
ビギナー探鳥会のお知らせ
日時:12月23日(土)
集合場所:永野川緑地公園西駐車場
日程:受け付け開始8:40 説明と注意9:00 バード  ウォッチング9:10〜  鳥合わせ10:40 解散11:00
持ち物 :雨具、筆記用具、あれば双眼鏡・図鑑
雨天中止  申込不要
問い合わせ 日本野鳥の会栃木 рO28−625−4051  火・木・金9時〜16時
Eメールwbsj-tochigi@nifty.com
 
28日
トピックス:カワセミ
 公園の東池の土手の丈の高い草に、カワセミ♂が留まりました。横向きで嘴の様子はよく見えたのですが、背中の鮮やかなブルーを見ることが出来ず残念でした。ここは探鳥会の時のスポットです。カワセミは探鳥会参加者の憧れです。しばらくぶりに現れてくれてほっとしました。
 それから大砂橋の手前で、洪水で出来た川の水たまりにカワセミを見つけました。公園の上流なので、川筋を公園まで降りてきてくれる可能性が高いと思います。
 
 曇っていましたが、晴れに向かう予報を信じて9:30ころ出かけました。
 二杉橋から入ると、カルガモが7羽、セグロセキレイ、ハクセキレイが2羽ほど、飛びました。大分中州が出来ていて、探鳥には良い場所になりそうです。
 コガモ:睦橋までの間に、カルガモ8羽、とコガモが3羽、コガモ今季初飛来です。
 カルガモ:帰りに二杉橋の近くに37羽が終結していました。合流点に7羽、13羽、赤津川24羽、かなり大きな群れになってきました。総数84でした。
 カイツブリ:合流点にカルガモに混じって1羽見えました。
 セグロセキレイ:ハクセキレイ・キセキレイ:中州が出来たせいか、セキレイ類が多く見られました。セグロセキレイは公園5羽をはじめとして10羽、ハクセキレイも7羽、キセキレイが睦橋までの間で3羽、高橋付近でも2羽、これはべつ個体のようで、ここではこの数は珍しいことです。。
 キジバト:上人橋のところの電線にキジバトが並んで4羽留まっていました。公園でも3羽、合わせて7羽となり、ここでは多いほうです。
 ダイサギ・アオサギ:ダイサギが合流点に4羽が並んでいましたが、1羽ずつ上流に移動していきました。赤津川では5羽の群れをはじめとして5羽が点在し、民家の屋根の留まっているものが1羽いて、15羽になりました。この頃ダイサギが多く、昨年まで多かったアオサギは少なくて今日は3羽でした。
 シメ:公園のエノキに4羽、大岩橋の河川敷林に2羽、順調に増えています。シメも探鳥会で人気です。
ツグミ:公園のエノキ1羽、対岸のブッシュに2羽、こちらも増えてきました。
 ヒドリガモ:公園の西池では26羽になりました。
 ホオジロ:睦橋付近のブッシュで鳴き声と共に1羽が出てきました。赤津川の岸のブッシュで2羽、こちらも姿をみることができました。
 カワラヒワ:二杉橋から睦橋までの間の川岸のブッシュからで、2羽ずつ3回、ピチピチという声と共に舞い上がりました。公園のワンド跡のブッシュでも同様の声がたくさん聞こえ少なくとも30羽の群れはいたと思います。大岩橋の河川敷で7羽、滝沢ハム付近のサクラ23羽、赤津川で4、6羽、76羽になりました。
 イカルチドリ:公園の中州で2羽、鳴きながら飛びまわっていました。
 コゲラ・シジュウカラ:公園の桜並木に入ると、いつもコゲラの声とシジュウカラの声がします。ゆっくり待てば姿を見られそうです。
 アオジ:睦橋付近の川岸のブッシュで、チチッと鳴くのはおそらくアオジと思われます。
 スズメ:5・5・7・7・9・15・15・70で134羽。赤津川の陶器瓦工場の近くの電線に70羽の群れが留まっていて壮観でした。そこからいなくなった後、少し離れたセイタカアワダチソウの群れの中からたくさんの声が聞こえたのですが、それは70羽が移動したと思います。
 ムクドリ:赤津川沿いの民家の柿の木に17羽が群れていました。田にも7羽が降りていました。
 キジ:公園の中でかなり大きな不思議な声、おそらくキジです。
 
 鳥たちがたくさんいてカウントしきれない感じでした。ヒヨドリ、セキレイ類、スズメなど、上空を飛び去るもののはカウントが間に合わないことが多いのです。まだまだ初心者です。
今まであまり気づきませんでしたが、大平山の紅葉が、黄色とオレンジのグラデーションで美しくなりました。ここにもススキの原がもう少し残っていれば銀色の穂波を見られたでしょう。
 ゲートボールをする人、マラソン練習の中学生、カメラを抱えたお年寄り、笛の練習をする人、たくさんのニーズに応える公園の中で、もう一息、自然観察の場を守ってほしと思います。
 
鳥リスト
キジ、カルガモ、ヒドリガモ、コガモ、キジバト、カワウ、アオサギ、ダイサギ、イカルチドリ、カワセミ、コゲラ、モズ、ハシハボソカラス、ハシブトカラス、シジュウカラ、ヒヨドリ、スズメ、セグロセキレイ、ハクセキレイ、キセキレイ、ホオジロ、アオジ、ツグミ、カワラヒワ、シメ