宮澤賢治、風の世界

宮澤賢治の作品を彩る言葉と風を追って宮澤賢治の世界を訪ねよう。 賢治は風という言葉に何を託したか。風を描くためにどんな言葉を選んだか。 賢治は何を求めて風の中に身を置いたのだろう。 そこに少しでも近づきたくてページを埋めていく。
 
永野川2022年5月下旬
23日 9:00〜11:00 晴 24℃
 よく晴れて、少し暑いくらいの日です。早めを心がけ、9:00に出かけました。
 二杉橋から入ると、東岸の護岸工事が始まっていましたが、なんとか通らせてもらいました。
 途中、河床を掘削して中央に盛られた土の上でイカルチドリの声がして、見ると2羽いるようでした。1羽が土の上の蹲って動きません。1羽はまわりを歩き回っていました。もしかしてあんなところで営巣するのでしょうか。たくましさには驚きますが、どうか無事に育ってほしいと祈るばかりです。
 上空をカルガモ1羽、北へ向いました。
 公園の池には、何もいませんでした。
 公園のワンド跡のヨシ原でホオジロがさえずっていました。後に行った、大岩橋上の河川敷林と皆川側の岸では、木のてっぺんの他、河川敷でも囀っていました。
 いつものエノキでコゲラの声がしていました。
 公園の大岩橋手前で、ガビチョウとはまた違う、あまり変化のない声が聞こえて、大岩橋を越えると、また違った声が聞こえました。鳴き声図鑑で聴いてみると、二回目の太めの声は確かにカオジロガビチョウ地鳴きだと思います。もう1羽は、細い声は囀りに似ていました。
 昨年6月には、この付近では姿を見ています。バードリサーチのお話では、ガビチョウが広範囲で繁殖するのに対し、カオジロガビチョウの繁殖は広がらないとのことです。
 大岩橋付近では、セグロセキレイが川の中に1羽、河川敷林でウグイス1羽、1羽と囀っていました。
 滝沢ハム北側の田でヒバリが囀るのが聞こえました。ここは赤津川畔の田と繋がっているのです。田にはチュウサギ1羽と、アオサギ1羽見えました。
 滝沢ハム付近クヌギ林でシジュウカラをひさしぶりで聞きました。一度枯れたと思っていたエゴノキが花をたくさん散らしていました。たくさん実って、鳥が来てくれるといいと思います。
 合流点のすぐ上でカワウ2羽、しきりに潜水を繰り返していました。あまり水深もないと思うのですが、潜ると姿は見えなくなります。
 これはトピックス、陶器瓦店近くでイワツバメ発見。4羽しか確認出来ませんでしたが、いつもの場所でした。或いはこの橋の下に営巣しているとも思われるのですが、うまく覗けません。
 登ったところにダイサギが1羽。嘴確認出来ました。
 陶器瓦店の屋根で、ハクセキレイが囀っていました。
 山桑がたくさん実をつけています。木の奥の方には、たくさんの雀が来ているようですが、他の鳥はあまり集まっていないようで、地面にたくさん実が落ちています。あちこちで子スズメがたくさん歩いていましたから、これからその豊富な餌となるのでしょう。
 暑くなりました。できれば来月から時間のとりやすい早朝探鳥にしようかと思います。睡魔との戦いです。
 
カルガモ:永野川上空を1羽、赤津川上空を1羽。
カワウ: 赤津川、泉橋下流に2羽。
アオサギ: 滝沢ハム北側の田で1羽。
ダイサギ:赤津川に1羽。
チュウサギ:滝沢ハム北側の田で1羽。
イカルチドリ: 二杉橋少し上の工事の土盛りの上に2羽。営巣中か?
モズ:赤津川で1羽、1羽、計2羽。
コゲラ: 公園エノキで1羽。
スズメ:コスズメがあちこちで見られた。桑の実に集まっているものが多かっ  
 た。
ムクドリ:赤津川で1羽、1羽、計2羽。
ハシボソカラス:特に目立った群れはなかった。
ハシブトカラス: 特に目立った群れはなかった。
ヒバリ: 滝沢ハム北側の田で1羽、赤津川で1羽、1羽、1羽、2羽(上
 空)、計6羽。
ツバメ:公園で3羽、1羽、3羽、1羽、1羽、赤津川で4羽、1羽、計1
 羽。
イワツバメ:赤津川陶器瓦店近くで4羽。
ヒヨドリ:特に目立った群れはなかった。
ウグイス:大岩橋河川敷林で囀り1羽、1羽、計2羽。
ハクセキレイ:赤津川陶器瓦店屋根で1羽。
セグロセキレイ:大岩橋上流で1羽。
シジュウカラ:滝沢ハムクヌギ林で1羽。
ホオジロ:公園中洲で1羽、大岩橋河川敷林で2羽囀り、計3羽。
カオジロガビチョウ:大岩橋付近で2羽、地鳴きと囀り。
 
 

 







永野川2022年5月中旬
15日 9:30〜11:30 薄曇 20℃
 薄曇でしたが、このところ、明日の天気が分からないので、出かけられるときにはためらわないことにしています。
 赤津川を先にまわりました。
 錦着山裏の田には、ヒバリ、カワラヒワが囀り、セグロセキレイ、ハクセキレイが歩いていました。
 同じ田にサギ類1羽発見、嘴、顔の感じからチュウサギ、今季初、これはトピックスです。赤津川の水の張られた田で、もう1羽、チュウサギを見つけました。
 もう一つ、今季初飛来は、オオヨシキリです。
 赤津川の陶器瓦店の手前の田の中に、小さなヨシの群落が残っています。ここは、ほとんど意識したことはなかったのですが、オオヨシキリの声が聞こえて初めてヨシの存在に気づきました。本当に小さなヨシ原、オオヨシキリがよく見つけてくれたと思います。これからは、ここで他の鳥のことも気をつけて見たいと思います。
 赤津川では、ツバメが4羽、1羽、1羽、1羽、と飛び、水面をかすめて餌を採っていました。川が機能してきたのです。
 イソシギ1羽、鳴かずに下って行きました。
 モズが電線と、岸の樹木で、見られました。
 公園の中洲ではホオジロ1羽が囀っていたほか、地鳴きの声も聞こえました。大岩橋河川敷林でも1羽が囀りました。
 ウグイスも2カ所で囀っていました。林は年々淋しくなりますが、ここも貴重なウグイスの繁殖場所です。
 大岩橋付近ではガビチョウも囀っていました。今日は1羽のみでした。
 田ではキジが鳴き、上流ではダイサギが1羽水中を歩いていました。
 公園では、水遊びの人も多く、鳥はいませんでした。岸のエノキで久しぶりにコゲラの大きな声を聞きました。姿が見えそうだったのですが、諦めました。その後サクラ並木でも1羽の声を聞きました。
 公園の池には鳥はいなくて、巨大なコイが争っていて大きな水音を立てていました。どこからか入ってきたのでしょうか。ここには、そんなルートはないと思うのですが、故意に入れたのなら、背も見えるほど水も浅く気の毒な気がします。
 上人橋の上流で、セグロセキレイが1羽、少し下ったところで2羽が縺れて囀っているのにも会いました。カルガモ2羽が上空を飛んでいきました。
 今日も二杉橋付近で1羽、ウグイスの囀りを聞きました。工事が終われば鳥も帰ってくるかも知れません。嬉しい予感です。
 ノバラが、川岸あちこちで咲き、香りを放っていました。例年より数が多いようですが、気のせいでしょうか。よいことではあるし、出来ればもっと増えてもいいのですが。
 ニセアカシアの花は元気がない感じ。散らずに木で枯れているのもありました。むせるような芳香も今年は感じられません。咲かなかった木もあるようです。もちろん外来種ですが、土留めや、蜂蜜の原料でもあるこの木をもっと大切にしてもいいのではないでしょうか。
 公園の主な部分の刈り取りは終わっていました。先日ガビチョウのいた草むらは低木とともに刈られていました。整備する人にとって、雑草も低木も同じなのでしょうか。
 シロクメクサも今年は群れ咲いていません。少し前に除草剤を撒いていたせいでしょうか。刈り取るのみならばその後に芽を出したツメクサは白い群落を見せたでしょうに。
 どうせ完全に管理した芝生ではないのだから丈の伸びた草のみ処理すればもっと楽に管理が出来るのではないでしょうか。一昨年あったアレチマツヨイグサの群落も消えてしまいました。これは丈のある草ですが、時季を見て刈れば鮮やかな黄色がひろがったでしょう。害のない綺麗な雑草と共生する新たな公園管理の方法を考えるべきではないでしょうか。
 
キジ: 大岩橋付近の田で1羽。
カルガモ:永野川上空を2羽。
ダイサギ:大岩橋上流1羽。
チュウサギ:錦着山裏の田で1羽、赤津川で1羽。
イソシギ: 赤津川で1羽。
モズ:赤津川で1羽、1羽、計2羽。
コゲラ: 公園エノキで1羽、サクラ並木で1羽。
スズメ:特に目立った群れはなかった。
ムクドリ:錦着山裏の田で1羽、2羽、計3羽。
ハシボソカラス:特に目立つ群れはなかった。
ハシブトカラス: 特に目立つ群れはなかった。
ヒバリ: 錦着山裏の田で1羽、赤津川で1羽、1羽、1羽、1羽、公園1羽、計6羽。
ツバメ:赤津川4羽、1羽、1羽、公園で1羽、3羽、1羽、1羽、1羽、計13羽。
ヒヨドリ:群れはなかった。
ウグイス: 二杉橋付近で1羽、大岩橋河川敷林で囀り1羽、1羽、計3羽。
セッカ:.赤津川田で1羽。
オオヨシキリ: 赤津川田のヨシ叢で2羽。
ハクセキレイ: 錦着山裏の田で1羽。
セグロセキレイ:二杉橋〜上人橋で3羽、錦着山裏の田で1羽、大岩橋上流1羽、計5羽。
カワラヒワ: 錦着山裏の田で1羽、公園の樹木で1羽、計2羽囀り。
ホオジロ:公園中洲で囀り1羽、地鳴き1羽、大岩橋付近田で1羽、計3羽。
ガビチョウ: 二杉橋付近で1羽。
 
 







永野川2022年5月上旬
6日 10:00〜12:00 薄曇 24℃
 
 時間が少し遅かったのですが、明日、明後日と予定が入っているので、思い切って出かけました。日差しが弱く、少し風もあったので、暑くはありませんでした。
 二杉橋から入ると、上人橋までの間に、上空をカルガモ3羽、ツバメ2羽、空を飛べる鳥は時には有利だと、とつくづく思います。でも、途中、工事現場の真ん中をセグロセキレイが歩いていました。
 久しぶりで二杉橋近くでウグイスの囀りを聞きました。西岸の向こう側かも知れませんが、少しほっとしました。昨年までは、ここはウグイスのスポットでした。
 上人橋付近でガビチョウの声を聞きました。また、シジュウカラが近くの山林、2カ所で鳴いていました。
 公園の東池は、アオサギが1羽のみ、西池には何も見えませんでした。カモ類も皆移動したようです。
 公園の中洲の草むらは、実のたくさんついたカラシナで埋まっています。そこにホオジロが2羽、1羽と、移動していて、対岸の樹上では1羽がしきりに囀っていました。
 対岸から川を渡ってムクドリが5羽飛んで行き、キジバトも2羽通り過ぎました。
 対岸の低木にモズが1羽、少し先にも1羽、滝沢ハム近くの田圃にも1羽、単独での行動が目立ちます。
 大岩橋河川敷林ではホオジロの囀りを二カ所で聞くのみでした。こちら側は福祉施設より上は通行止めなので、山林の鳥や河原の鳥を見ることが出来ません。反対岸を少し登って見ると対岸の河川敷林がよく見えました。ここの方が安心して見られる場所のようです。イカルチドリが2羽、鳴きながら下っていきました。
 滝沢ハム近くのサクラ並木の小径を、少し大きめの茶色の鳥が横切っていきました。飛び立った様子もないので、少し探して見ると、二羽目が横切り、はっきり眼のまわりの白斑が見えました。ガビチョウです。こんなに間近で、地上で見たのは初めてです。上人橋でも鳴いていましたし、確実に増えているようです。
 滝沢ハム林ではカワラヒワが複数囀っていましたが、あとはキジバトのみ、池には鳥影がありませんでした。
 赤津川ではヒバリが6カ所で囀り、セッカの声も聞こえました。
 陶器瓦店の上流に、コサギが1羽。先日から見られています。
 
 ニセアカシアが咲き始めました。まだ香りは少ないのですが、乱れずきれいです。
 広葉樹が一斉に若葉に包まれました、まだ柔らかい葉には虫が来て、さらに鳥がやってくるでしょう。
 公園は草刈りの真っ只中でした。鳥が少ないのはそのせいかもしれません。
人間の仕事が終わって、鳥が戻るのを待ちます。
 ウシガエルが鳴き始めました。
 
キジ: 公園の中洲で1羽。
カルガモ:永野川上空を3羽。
キジバト:公園の川付近に2羽、滝沢ハム林で1羽、計3羽。
アオサギ: 公園東池に1羽。
ダイサギ:公園上空1羽、赤津川で1羽、大岩橋上流1羽、計3羽。
コサギ: 赤津川陶器瓦店上流で1羽。
モズ:滝沢ハム付近田圃で1羽、公園で1羽、1羽、計3羽。
スズメ:特に目立った群れはなかった。
ムクドリ:公園上空で5羽。
ハシボソカラス:特に目立った群れは見えなかった。
ハシブトカラス:特に目立った群れは見えなかった。
ヒバリ: 赤津川田に6羽。
ツバメ:二杉橋〜上人橋2羽、公園3羽、赤津川3羽、計8羽。
ヒヨドリ:特に目立った群れはなかった。
ウグイス: 二杉橋付近で1羽、大岩橋河川敷林で囀り2羽。計3羽。
セッカ:.赤津川田で1羽。
セグロセキレイ: 永野川高橋付近で1羽、赤津川で1羽、計2羽。
カワラヒワ: 公園の樹木で3羽、囀り。
シジュウカラ: 上人橋付近山林で2羽。
ホオジロ:公園中洲で地鳴き1羽、2羽、大岩橋付近田で2羽、計5羽。
ガビチョウ: 上人橋付近山林で1羽、滝沢ハム付近サクラ並木の小径で2羽、 
 計3羽。
 







永野川2022年4月下旬
25日 9:30〜11:30 晴 20℃

 今日のトピックスはセンダイムシクイです。
 公園には、遊ぶ人達もいないのに、鳥の姿もありませんでした。そこに、センダイムシクイの聞きなし、チヨチヨビーという声がかなり大きく、ずっと聞こえていました。対岸の桑の大木か下の草むらからのようです。この場所で聞くのは初めてです。図鑑で見るムシクイ類の小さな体には声が大きすぎるような気もしました。しばらく探したのですが姿は見えませんでした。
 帰ってバードリサーチでお聞きすると、今の時季、川原や疎林に現れ、声から確かにセンダイムシクイとのことでした。いままで日光でしか見たことがありませんでしたので感激しました。やはりこの場所は大切にしたいと思います。
 
 風もなく、どちらかというと暑い日でした。
 錦着山裏の田で、ヒバリが囀り、キジバト2羽、ツバメ2羽飛びだし、キジの鳴き声が聞こえました。
 赤津川に入ると田圃のかなり遠くで、サギが2羽、嘴黒く、足先は黒、遠くて顔までは見えないのですが、ひとまずダイサギとしました。アオサギが少し離れて1羽、1羽と動きません。
 ヒバリも定位置3カ所で囀っていました。
 いつの間にか麦が穂を出し青さを増し、田植の準備も始まりました。
 帰り道、泉橋近くまで下ってくると川のなかに、コサギが1羽、飾り羽が目立ちました。浅瀬で黄色い脚も確認出来ました。少し離れてダイサギが1羽いて、コサギはやはり小さいのだ、と実感しました。
 公園に入ると川の上空をカワウが横切って行きました。
 ワンドの裏側の川に、コガモが9羽、カルガモ3羽、昨日の雨で水が豊かですし、この場所は人が近づきにくく、鳥たちにとって居やすいのでしょう。
 滝沢ハム池には、コガモが5羽とカルガモ2羽のみ、周囲の木々の緑が美しくなりましたが、鳥の姿はありませんでした。すっかり小鳥たちが消えている感じします。
 大岩橋河川敷林では、ウグイス2カ所で囀っていました。いつも見えるカワラヒワやシジュウカラには会えませんでした。
 養護施設の近くの金網のフェンスの上にモズが2羽少し離れてとまっていました。そして同じフェンスにホオジロも2羽留まっていましたが、敵対する関係でもないようでした。
 公園の川には、セキレイ類も全く見えませんでした。
 調整池にもカモの姿は無くなりました。
 永野川、上人橋から二杉橋までにも、いつもにもまして鳥がいません。工事が掘削に入っていて、鳥の寄りつく場所もないのでしょう。二杉橋近くになってツバメが6羽、上空を飛んで、少し救われた気がしました。
 八重桜、御衣黄も散り始めました。両方とも葉が出てもまだ花が衰えません。御衣黄は散り際で緑に混じったピンクが華やかです。
 
キジ: 錦着山裏の田で1羽、大岩橋付近田に1羽、計2羽。
カルガモ:公園ワンド裏の川で3羽、東池で1羽。滝沢ハム池2羽、計6羽。
コガモ:公園ワンド裏の川で9羽、滝沢ハム池で5羽、計14羽。
カワウ:公園川上空を1羽。
キジバト:錦着山裏の田で2羽、滝沢ハム林で1羽、計3羽。
アオサギ:赤津川田で2羽。
ダイサギ:赤津川で2羽、1羽、計3羽。
コサギ: 赤津川で1羽。
モズ: 赤津川で1羽、1羽、滝沢ハム林で1羽、大岩橋付近くの田で2羽、計5羽。
スズメ:特に目立った群れはなかった。
ムクドリ:公園樹木で2羽。
ハシボソカラス:特に目立った群れはなかった。
ハシブトカラス: 特に目立った群れはなかった。
ツバメ: 錦着山裏の田で2羽、二杉橋〜上人橋6羽、公園3羽、滝沢ハム付近  
 1羽、計16羽。
ヒヨドリ:特に目立った群れはなかった。
ウグイス:大岩橋河川敷林で囀り2羽。
センダイムシクイ:公園川岸の樹木で囀り1羽。
ホオジロ:公園中洲で地鳴き1羽、大岩橋付近田で2羽、計3羽。
 
付記:22日栃木市入舟町の元保育所の前の溝でコサギ3羽見ました。
   29日栃木市片柳町住宅地でガビチョウの声を初めて聞きました。
 
 
 
 







「若い木霊」―風と光と春のときめきU―賢治は何処でトキに遭ったか―
 「若い木霊」では、作者のトキへの想いが深く関わり、印象的な表現となっています。
 「若い木霊―風と光と春のときめき」でも記したように、トキは、1892(明治25)年、既に保護鳥となりました。
 1900(明治33)年、岩手県宮古地方で1羽捕獲されたトキが標本として国立科学博物館に保存されていますが、賢治が花巻付近で日常的に生きているトキを見る可能性は少ないそうです(注1)。
 
 もう一つ、賢治がトキと接する可能性は、岩手大学農業教育資料館に収蔵されているトキの剥製標本です。
 先に書いた「若い木霊―風と光と春のときめき」では、賢治が、岩手大学農業教育資料館所蔵のトキ剥製標本に遭遇していたか不明としました。剥製標本の存在、展示が何時ころからだったか不明でした。
 その後、岩手大学に在籍、大学の野鳥の会でも活動していた知人から、1968年当時、保管庫のようなところにしまわれていた鳥類の剥製を発見し、整理して学内で展示したということを聞きました。初めてトキの標本に遭遇した時の感激も話してくれました。トキの標本は古くからあったというのは確かで、興味が湧き、調べてみました。
 
 岩手大学農業教育資料館のホームページの、「農業教育資料館展示案内」から、「農学部標本群の作製年代とその判定要素」を見ると
 
トキ 
標本bR
購入推定年月日大正4年 
作成者株式会社島津製作所(B) 
436赤縁ラベル 
大典シール無し
 
の記載がありました。
 さらに「農学部標本目録(旧盛岡高等農林学校動物標本)」(「岩手大学農学部附属農業教育資料館標本(鳥類等)について」畑中ままな 2000年9月)の記載は次の通りでした。
 
トキ
採集年月不明
採集地不明
嘴峰長177.8mm,フ蹠長102.7mm,翼長411.0mm,尾長148.8mm,繁殖羽(夏羽),
制作推定島津製作所(B)
特徴的な朱鷺色が羽に確認されないが、おそらく本標本は繁殖羽(夏羽)と思われる。
 
 さらに農業教育資料館で詳しい事情をお教えいただきました。要約します。
1、大正4年、島津製とあるのは、大正4年には多数の鳥剥製を購入したという記録があり、台座が大正4年、島津製のものとほぼ同じであることに拠る。
2、物品記号436(赤縁ラベル)については、物品記号は購入すると、消耗品以外の物品には通し番号が記入され登録される。赤縁ラベルは貴重品だと思われる。
3、「大典シール」は、大正天皇即位のお祝いが大正4年10月にあり、その祝行事(大典)にちなんで出した製品に、このシールが着いていたが、このトキの場合、台座はこの年のものと同じだが、大典シールは付いていなかった。
 
 宮沢賢治は、大正4年に入学し、7年に卒業、研究生としてさらに2年在学し、大正9年に修了している。大正4年購入とすれば、十分見ていたと思われる。
 野鳥というのは、農学や林学分野でとても重要で、農薬が無かった戦前では、とても大事にされた。野鳥との共存が森林の維持や農作物の健全育成に重要で、鳥の剥製はとても重要な教材だった。戦後、農薬が使われる時代になり、森林や田畑の環境が破壊されたが、現在ではまた、環境の大事さが見直され、生物共生の考え方が広まってきた。この精神は正に賢治の世界と一致するものである。
 最近では、鳥については写真や映像ファイルがあるので、剥製を教材としては必要としないが、かつては重要な教材だった。
 
 トキの剥製標本は、現資料館の建物とともに、その後いろいろな変遷を辿ったようです。まず、この資料館の変遷は次の通りです。
 
1912(大正元)年、盛岡高等農林学校本館として竣工。
1949(昭和24)年〜1974(昭和49)年、岩手大学本部として使用。
1974(昭和49)年〜1978(昭和53)年まで、文化俱楽部等の利用。
1978(昭和53)年から資料館として運用されるようになる。
1989(昭和64)年 資料館の整備が行われ農学部動物昆虫標本室で保管されていた剥製標本はこちらに移されて展示され始める。
 
 資料館から送っていただいた新聞記事によると、新潟県佐渡トキ保護センターでトキの雛が誕生したころの『岩手日報』、1999(平成11)年5月27日には、「盛岡でもトキ見られます」の見出しで、このトキの剥製について取り上げられています。トキが広く一般にも知られるようになったのです。
 
 もうひとつ、大正6年、賢治が、高等農林学校3年の時に発行した、同人誌『アザリア』第一号(大正6年7月1日発行)掲載の『「旅人のはなし」から』には
 
(諸国を歩いている旅人が)盛岡高等農林学校に来ましたならば、まづ標本室と農場実習とを観せてから植物園で苺でも御馳走しやうではありませんか。
 
と、「来訪者に見せたいもの」として「標本室と農場実習と植物園と苺」をあげています。
 「植物園」については、拙稿「『ポラーノの広場』の競馬場」(注2)を書いた折り調べ、賢治にとって大切なものであったことを知りました。
 さらに、『同窓生が語る宮澤賢治 盛岡高等農林学校と宮澤賢治 120年のタイムスリップ』(注3)には、大正元年の「標本陳列所」の写真とともに、農学・林学・獣医学の様々な標本を展示している、第一教舎と第二教舎の間にある62坪の平屋の建物だった記述されています。
 賢治がいかに標本を大事に思っていたか分かり、トキの標本も目にしていたことの証明になると思います。
 
「若い木霊」におけるトキの描写は次のようなものです。 
 この太陽の光を浴びて、「桃色にひらめ」く「はねうら」を、賢治はどうやって描くことが出来たのでしょう。剥製は夏羽でトキ色の羽色は出ていません。
 初めてトキの剥製を見たときの感動そのままに、いろいろな文献を調べ、トキの羽裏の色を知ったのでしょうか。そして太陽の下に飛ぶ姿を思い浮かべたのでしょうか。 この思いは、賢治の桃色への思いと繋がって、胸の高鳴りの表現に使われ、さらに滅びの鳥への概念へと発展したのでしょうか。
 まだまだ謎は解ききれませんが、賢治が抱く、光の中に輝くものへの憧憬は、強く感じることが出来ます。
 
注1:赤田秀子・杉浦嘉雄・中谷俊雄『賢治鳥類学』(1998年 新曜  
    社)271ページ
注2:小林俊子「ポラーノの広場」の競馬場(『宮沢賢治 絶唱 かなしみと
   さびしさ』 2011年 勉誠出版) 240ページ
注3:若尾紀夫編・著『同窓生が語る宮澤賢治 盛岡高等農林学校と宮澤賢治 
   120年のタイムスリップ』 (2021年7月 岩手大学農学部北水
   会) 234ページ

※引用文のルビは省略しました。