宮澤賢治、風の世界

宮澤賢治の作品を彩る言葉と風を追って宮澤賢治の世界を訪ねよう。 賢治は風という言葉に何を託したか。風を描くためにどんな言葉を選んだか。 賢治は何を求めて風の中に身を置いたのだろう。 そこに少しでも近づきたくてページを埋めていく。
 
永野川2024年2月上旬
7日 9:30〜11:30 晴 10℃
 
 昨日までの寒さが去り、気温も高く、風もなく、探鳥日和です。
 上人橋から赤津川に向かいます。
 今回から詳しい鳥情報は文末に記したいと思います。

 合流点付近はこの頃あまり鳥がいません。ハクセキレイが1羽、イカルチドリが1羽のみでした。公園のワンド跡の近くの川に、ダイサギ1羽、コガモ11羽が見えました。
 
 赤津川の下流域の田で、ヒバリの囀りを聞きました。早いように思いますが、確かにヒバリです。バードリサーチのお話では、まだ他の地域の情報はなかったようです。
 
 もう一つ、今日のトピックス、イカルです。
 滝沢ハムのクヌギ林に来たとき、何かピツピツという鳥のささやきのような音が聞こえ、滝沢ハムの植え込みから、イカル20羽が飛び出して、クヌギに留まり、また他の場所に移っていきました。今季初飛来です。このように沢山の数に会えるとは思っていなくて、歓喜乱舞です。
まだ暫くいてくれるでしょうか。これから公園内は要注意です。今までの記録だと芝生の上などにもいることがありました。
ここに毎年来るのは、何か要因があるのでしょうか。だとしたら、それを知って変えずに守って行かねばと思います。
 大岩橋を渡っていると、川をカワセミが下って行きました。こういう見方は初めてです。
 大砂橋近くで、カケスの声がして、暫く待つと、林から林を渡るカケスを一瞬見ることができました。近くでゆっくり見たいのですが。
 
 カモ類が今年は少ない気がします。公園の池や、滝沢ハムの池を、うまく住み分けているようにも見えます。
 公園の池にはカイツブリが3羽戻っていました。時季になったらまた繁殖してくれるといいと思います。
 
 永野川を下っていくと、良好な浅瀬が増えていて、ハクセキレイ、セグロセキレイとともに、キセキレイが1羽、来ていて、川面と岸を行き来していました。岸からはよく見えなくなってしまうので、判別に苦しみましたが、セグロセキレイ、ハクセキレイとは、色の感じが違っていて、しばらくして向こう岸に行き、やっと判別しました。
 
 二杉橋近くの工事が始まって、中洲を崩して河床が高くなっているようです。これからどうなるか分かりませんが、このままでは、川が浅くなり、植生その他、多くの犠牲を払い、巨額の財源を使って作った立派な護岸を越えて、再び洪水が襲って来ないかと不安になります。
さしあたり、この辺りに沢山いたカモ類がいなくなり、今日のカウントは大変少なくなりました。
 
 よい天気、そしてヒバリやイカルとの出会い、その他の沢山の鳥たちも元気でした。
 また近いうちに来てみたい、という思いでいっぱいです。
 
カイツブリ:公園東池に3羽。
キジバト: 滝沢ハム林に1羽。
カルガモ:合流点に3羽、赤津川2羽、滝沢ハム池に2羽、上空4羽、
 公園西池、5羽、東池23羽、合計39羽。
ヒドリガモ: 滝沢ハム池に7羽、公園西池に30羽、東池に11羽、計48羽。
コガモ:公園川にに11羽、公園西池11羽、東池1羽、5羽、永野川
 6羽、計33羽。
マガモ: 公園東池♂1羽、♀2、計3羽。
ダイサギ:公園川に2羽、大砂橋付近1羽、計3羽。
アオサギ:公園東池1羽。
イカルチドリ: 合流点1羽。
モズ:滝沢ハム林で1羽、大岩橋河川敷林1羽、計2羽。
カワセミ:大岩橋下の川で1羽。
コゲラ: 大岩橋河川敷林で1羽。
スズメ: 合流点20羽、赤津川で25羽、5羽、計50羽。
ムクドリ:滝沢ハム林に12羽。
ハシボソカラス: 特に目立った群れはない。
ハシブトカラス: 特に目立った群れはない。
カケス: 大砂橋近く山林に1羽。
ヒバリ:赤津川田で、一箇所。
ウグイス: 赤津川岸草むらで1羽。公園草むらで1羽、計2羽。
ハクセキレイ: 合流点2羽、公園1羽、永野川睦橋付近1羽、計4羽。
セグロセキレイ:赤津川1羽、大砂橋付近3羽、永野川睦橋付近2羽、 
 計6羽。
キセキレイ: 永野川睦橋付近1羽。
カワラヒワ:赤津川1羽、大岩橋林で20羽、計21羽。
シジュウカラ: 滝沢ハム林に1羽。
メジロ: 滝沢ハム近くに1羽。
ジョウビタキ:赤津川に1羽。
ツグミ: 赤津川1羽。
イカル:滝沢ハムクヌギ林に20羽。
シメ:大岩橋付近山林で1羽。

 







永野川2024年1月下旬
27日、9:30〜11:30 晴 8℃
 
 気温が高く風も無い探鳥日和です。
 二杉橋から入ると、相変わらず浅瀬状態のよい鳥環境が広がっていました。
 イカルチドリが2羽、1羽、と動いていました。少し上にも2羽、元気に動き回っています。
 カルガモが、5羽、23羽、コガモは中洲のへりに24羽です。
 セグロセキレイは、上人橋までの間に2羽、2羽、3羽、2羽、1羽、睦橋の近くでハクセキレイが2羽、2羽。やはりセキレイ類の聖地でしょうか。
 岸辺の樹木にカワラヒワ2羽留っていました。
 上人橋から合流点を見るとダイサギが1羽いました。
 
 公園の川に着くと、一瞬、1羽が岸辺の辺りを飛んで見えなくなりました。コガモくらいで、薄い褐色、嘴が黄色系だったことしかわかりませんでした。以前クイナがいた場所なので、希望的観測でクイナにカウントしました。家で図鑑を見ると、確かに黄色に近い嘴の似た個体もいました。
 樹木にカワラヒワ6羽見えました。
 公園芝生の樫の木の下にムクドリ50+、餌を拾っていたようでしたが、数えようとした途端、樹上に飛び上がってしまい見えなくなりました。大きな群れがいることは嬉しいことです。
 公園の西池、ヒドリガモ20羽戻って来ました。オカヨシガモと思われる1羽、1羽だけ離れていて、尾羽近くに黒色が混じって決めたのですが、もっと沢山いないと自信が持てません。コガモ21羽、揃っていました。
 東池にカルガモ25羽、コガモ3羽、ヒドリガモ10,マガモ2羽、これは♂♀確認できました。
 
 大岩橋を越えると、久しぶりでカケスの声が二箇所で聞こえました。姿を見せて欲しかったのですが駄目でした。
 森が道路に接している場所で、河川敷から40羽くらいの鳥が飛び上がり森に移っていきました。最後の10羽程はなんとか双眼鏡で確認でき、カシラダカでした。混群ではないと思います。このような大きな群れは、初めてでした。
 戻ってくると大岩橋の手前で、小鳥の声が聞こえ、森の方から河川敷林に移ってきました。エナガでしたが、1羽ずつ確認でき、5羽のみでしたが、嬉しいことでした。
 大岩橋の上から河川敷林を見ていると、ウグイスの地鳴きが二箇所で聞こえました。
 
 滝沢ハムのクヌギ林で暫く待つとシメの声がして、少し離れている2を羽確認できました。
 滝沢ハムの植え込みから公園の北側の樹木へツグミが3羽渡っていきました。
 モズも二回渡っていきました。
 滝沢ハムの林で、シジュウカラ1羽、ジョウビタキ1羽見つけました。
 
 赤津川に入って、アオサギ1羽、今日は少ないようです。
 カルガモ5羽、コガモ4羽、5羽、ハクセキレイも1羽、電線にツグミ1羽、カワラヒワが樹木に15羽、いろいろ会えました。 
 合流点には鳥は見えませんでした。
  
 沢山の鳥種が来ていて、初めてのカシラダカの大群にも会え、充実した時間でした。鳥たちも寒いのは苦手でしょうか?これは人間の勝手な想像ですね。
 
クイナ:公園川に1羽。
カルガモ:二杉橋付近5羽、23羽、公園に2羽、クエン東池に25 
 羽、赤津川に5羽。計50羽。
ヒドリガモ: 公園西池20羽、東池に10羽、計30羽。
コガモ:二杉橋付近24羽、公園に2羽、公園西池に21羽、
 東池に3羽、赤津川4羽、5羽、計57羽。
オカヨシガモ:公園西池に1羽。
マガモ: 公園東池2羽。
ダイサギ:合流点1羽、公園上空3羽、大岩橋上空2羽、2羽、赤津川
 1羽、計9羽。
アオサギ:赤津川1羽。
イカルチドリ: 二杉橋上浅瀬に2羽、1羽、2羽、計5羽。
モズ:滝沢ハム林で1羽、1羽、計2羽。
スズメ: 合流点50羽+。
ムクドリ:公園芝生に50+。
ハシボソカラス: 特に目立った群れはない。
ハシブトカラス: 特に目立った群れはない。
カケス: 大岩橋山林に1羽、1羽、計2羽。
ウグイス: 大岩橋河川敷林に1羽1羽、計2羽。
ハクセキレイ: 睦橋付近に2羽、2羽、計4羽。
セグロセキレイ:二杉橋上〜上人橋、2羽、2羽、3羽、2羽、1羽、 
 公園1羽、大砂橋付近1羽赤津川1羽、計13羽。
カワラヒワ: 二杉橋上2羽、公園樹木に6羽、赤津川に15羽、計29 
 羽。
シジュウカラ: 滝沢ハム林に1羽。
エナガ: 大岩橋河川敷林5羽。
ジョウビタキ:滝沢ハム近く1羽。
ツグミ: 公園川岸樹木に3羽、赤津川1羽計4羽。
カシラダカ: 大岩橋河川敷林から林に40羽+。
シメ:滝沢ハムクヌギ林2羽。

 
 
 







永野川2024年1月中旬
16日 9:30〜11:30 晴 4℃

 風が少しあり、川沿いは不安で、気温も低かったのですが、他の日もないので出かけました。
 上人橋から登って合流点向かいます。アオサギが橋の近くにいて、また別の個体が上空を飛んで行きました。
 セグロセキレイ2羽が中洲の縁を跳び回っていました。
 ダイサギが1羽、永野川のワンド跡の岸に見えました。
 
 赤津川に入ると、風が時折強く吹きつけて飛ばされそうで、寒さもきつくなりました。なんとか赤津川だけでも回ろうと自転車を押しました。
 アオサギが1羽、水際にいました。
 電線にムクドリが群れ始め、11羽、29羽。少し上でまた群れができて27羽、13羽。同数ですが、元の場所にもいたようで別の群れだと思います。
 コガモ2羽、ここではカモ類が少ないです。
 陶器瓦店近くでトビが低空まで降りてきました。近頃あまり見ませんでした。
 
 滝沢ハム池で、コガモが39羽、カルガモが10羽いましたが、コガモは一斉に飛び立ってしまいました。あまり近くにも行かなかったのですが。
 マガモが1羽、餌を採っているのに出会いました。図鑑の逆立ちして採餌の図の通り真っ白い腹部で確認できました。一瞬オナガガモを連想してしまったのは何故でしょう。
 
 大岩橋に回ります。
電線にモズが2羽、2匹とも鳴きながら電線の上を移動していました。  
 この電線近くには、モズがよくみられます。山林、田んぼもあるせいでしょうか。
 大砂橋付近にダイサギ1羽のみ、いつもの水辺の鳥はいませんでした。
 
 公園の樹木の最上部に、小鳥が1羽、カワラヒワでした。1羽のみなのが気になります。群れている姿が、今は普通かと思っているのですが。寒いせいか小さい鳥は現れません。
 公園の川の中洲で動きがあり、イカルチドリが3羽群れていました。近くにセグロセキレイも2羽は走り回っていました。
 
 公園の西池には全くカモがいませんでした。氷のあともあまりなかったのですが。
 東池には、カルガモ10、コガモ39羽、マガモ♂1羽、♀2羽、カルガモ69羽、何故東だけにいるか、またヒドリガモが全くいないのが気にかかります。
 
 永野川もなんとか風も収まったので回ってしまうことにしましたが、時折吹き付けるので恐くて集中できません。でも睦橋付近中洲で、タヒバリ1羽。これは疑う余地もなくタヒバリです。暫くぶりで、強風の中の鳥見も報われました。
 下流に向かってに行くと、セグロセキレイが2羽、3羽と現れ、少し安心しました。
 二杉橋近く、カルガモ33羽、コガモ11羽、23羽、今年はここがカモの集合場所となりました。工事の終了に感謝します。
 
 寒さにまけているのは人間の方で、何度か引き返そうと思ってしまいましたが、予定のコースを回りました。木の中に隠れてしまった小さな鳥たちにも、今度は会えますように。
 
カルガモ:滝沢池に10羽、公園東池に69羽、永野川二杉橋上浅瀬に 
 33羽、計112羽。
コガモ:赤津川2羽、滝沢池39羽、公園東池3羽、二杉橋上23羽、
 11羽、計78羽。
マガモ: 公園東池3羽、滝沢ハム池1羽、計4羽。
ダイサギ:合流点1羽、大砂橋付近1羽、公園2羽、計4羽。
アオサギ:合流点2羽、赤津川1羽、公園東池に1羽、計4羽。
イカルチドリ: 公園川で3羽。
モズ:大岩橋付近電線に2羽。
スズメ: 合流点50羽+。
ムクドリ: 赤津川電線に11羽、29羽、27羽、13羽、計80羽。
ハシボソカラス: 特に目立った群れはない。
ハシブトカラス: 特に目立った群れはない。
セグロセキレイ:合流点2羽、公園川2羽、永野川2羽、3羽、
 計9羽。
タヒバリ:永野川睦橋付近1羽。
カワラヒワ: 公園樹木に1羽。

 
 







永野川2024年1月上旬
6日 9:30〜11:30 晴 7℃
 今年初めての探鳥です。
 鳥にも自然にも穏やかな環境が続きますように。
 よく晴れて風もなくひどい冷え込みもなく過ごしやすい朝でした。
 二杉橋から入ります。
 橋から上流に丁度よい浅瀬ができていてカモ類がが散らばっていました。
 カルガモ36羽、コガモ3、2羽、少し上のコガモ23羽の群れもありました。
 イカルチドリが4羽、絡み合う感じで下流に向かっていきました。少し上でまたイカルチドリが2羽ずつ、上下に分かれて飛んでいきました。
 ハクセキレイも1羽、セグロセキレイが3羽、常連さんです。
 睦橋付近でムクドリが8羽、川縁と岸の民家とを行き来していました。
高橋のそばの大きな民家のヤブでウグイスが地鳴きしていました。このあたりで民家で聞くのは珍しいですが、考えてみれば我が家でも、ときたま地鳴きはしてます。
 公園のハリエンジュでコゲラ1羽、公園の川岸の大木でシジュウカラ1羽、2羽、1羽、キジバト1羽でした。
 別の樹木ではシメ1羽、ツグミが1羽、同じ木で、少し離れて行動しています。
 草むらでモズが1羽、短く鳴きました。

 公園の西池、ヒドリガモ34羽、小ガモが3羽、3羽。カルガモ3羽。昨年はいつもいたオカヨシガモはいません。時たま見られたヨシガモもまだ来ていません。トモエガモも、一度見ただけです。
 東池で、カルガモ33羽、マガモ♂1羽、コガモ4羽、2羽です。
 久しぶりでカイツブリが2羽、一緒に行動していました。少し離れて  
 もう1羽見えました。その時離れた場所から声がしてカイツブリがもう1羽えてきました。繁殖声で無い声は初めて聞いた気がします。
 
 大岩橋河川敷林でツグミ1羽、大砂橋付近でアオサギ1羽、よい天気なのに鳥が少ないです。人間にとってのよい季候と鳥の感じるものとは別なのかもしれません。。
 滝沢ハム池でダイサギ2羽、カルガモ7羽。コガモ12羽が飛び立ちました。
 
 赤津川に入っても、あまり鳥影がありません。アオサギ1羽、川の中を歩いていました。
 少しして、川の中を一瞬青い物が走りました。カワセミです。動いてしまった、と思ったら、少しだけ上の対岸に暫く留っていてくれました。
 合流点の中洲にスズメの群れ、44羽、賑やかでした。先回より少ないですが、元気な声が聞けよかったと思います。
 上空をアオサギが1羽行きました。
 今回は常連さんにたくさん会えて幸せでした。また珍客さんにも会いたいと思います。
 
 
カイツブリ:公園東池で2羽、1羽、1羽、計4羽。
キジバト: 公園樹木に1羽。
カルガモ:二杉橋上浅瀬に36羽、公園西池3羽、東池33羽、
 滝沢ハム7羽、赤津川3羽、計84羽。
ヒドリガモ:公園西池34羽。
コガモ:二杉橋上浅瀬2羽、3羽、23羽、公園西池3羽、東池4羽、  
 2羽、3羽、滝沢ハム池12羽、計52羽。
マガモ: 公園東池1羽。
ダイサギ:滝沢ハム池2羽。
アオサギ:大砂橋付近1羽、赤津川1羽、合流点1羽、計3羽。
イカルチドリ: 永野川二杉橋上中洲に4羽、2羽、2羽、計8羽。
モズ:公園樹木に1羽。
カワセミ:赤津川1羽。
コゲラ:公園ハリエンジュに1羽。
スズメ: 合流点44羽。
ムクドリ: 永野川睦橋付近8羽。
ハシボソカラス: 特に目立った群れはない。
ハシブトカラス: 特に目立った群れはない。
ウグイス: 永野川高橋付近民家1羽。
ハクセキレイ:永野川二杉橋上1羽、合流点1羽、計2羽。
セグロセキレイ:二杉橋上3羽、1羽、公園川1羽1羽、
 大砂橋付近1羽、計7羽。
シジュウカラ:公園樹木に1羽、2羽、1羽、計4羽。
ツグミ:公園樹木に1羽、大岩橋河川敷林に1羽、計2羽。
シメ:公園1羽。

 







「二十六夜」―フクロウたちの生き様、人社会の隣でー。
  旧暦の六月二十四日の晩でした。
   北上川の水は黒の寒天よりももっとなめらかにすべり獅子鼻は微  
  かな星のあかりの底にまっくろに突き出ていました。
   獅子鼻の上の松林は、もちろんもちろん、まっ黒でしたがそれで 
  も林の中に入って行きますと、その脚の長い松の木の高い梢が、一
  本一本空の天の川や、星座にすかし出されて見えていました。
   松かさだか鳥だかわからない黒いものがたくさんその梢にとまっ
  ているようでした。
   そして林の底の萱の葉は夏の夜の雫をもうポトポト落して居りま  
  した。
   その松林のずうっとずうっと高い処で誰かゴホゴホ唱えていま 
  す……。(「二十六夜」)
 
 個人ブログ「宮沢賢治風の世界」2015、9,4、「「二十六夜」―かなしみ・読経・汽車の音・風」で風景を見てきました。ここでは賢治が人間の眼を通してみたフクロウについて考えて見たいと思います。
背景について復習すると
 このお話は旧暦の〈六月二十四日〉、〈二十五日〉、〈二十六日〉の三章から成っています。
 「獅子鼻」は、実在する場所で、花巻市桜の羅須地人協会跡から南方をながめて、北上川西岸から川に向かって張り出した高台です。
 フクロウたちが、獅子鼻の森に集まって、二十六夜の月待ちの行を行っているのを背景に、フクロウ、フクロウの僧侶、フクロウの子供たち、人間の子供たち、が繰り広げる、お話です。
 現存稿の執筆は大正12年(1923)と推定されます(注1)。
 〈旧暦六月二十四日〉は新暦で7月下旬から8月中旬で、月の出は午前零時頃です。
 
 フクロウの僧侶は、フクロウ界の経典「梟鵄守護章」で、食物連鎖のなかで繰返される残虐性を説き、そこから救われるため「離苦解脱」の教えを延々と説いています。
 その中で、フクロウの子供が人間の子供に捕まって傷を負います。周囲には深い悲しみが溢れますが、それに対するフクロウの僧侶の説法はひたすら同じ説法を繰り返し、「捨身菩薩」にすがることで救われよ、と述べることしかできません。
 金色の船のような二十六夜の細い月が登り、美しい紫色の煙のなかに「金色の立派な人が三人」現れ、フクロウの子供は迎えられるように、「かすかにわらったまゝ」死を迎え、ようやく救われます。  
 この描き方は、日蓮宗の宇宙観よりは、阿弥陀の西方浄土へまた迎えられることによって救われる、浄土教系統の発想に近く、「阿弥陀三尊来迎図」の図柄であると言われます。(注2)
 一方、この作品が成立したと推定される大正11年、12年ころには、賢治は日蓮宗系宗教団体国柱会に入会し、会誌『天業民報』に詩を発表するなど、熱心に活動していた時期です。国柱会では、念仏により極楽浄土を目指すことにより無間地獄に墜ちるとして強く批判しています。大島丈志(注3)は、書かれた時期を考え、法華経の観点から読むのならば、浄土教系の阿弥陀三尊来迎形式を用いながらも、月と浄土という法華経と関わりの深い事柄を使用し、修羅を超え現世に浄土を築くための方法を示す、法華経文学としての要素を押し出した作品であるとしています(注3)。  
 延々と続く説教、人間の慰みのために命を落としてしまう子供のフクロウ、取り巻く親たちの深い悲しみと、西方からのお迎えの有様、死して初めて救われる子供やその周囲には、仏教との深い関わりを無視することはできません。
 
 ここで見方を変えて生物の実体から考えてみます。
フクロウは食物連鎖の頂点にいて、弱肉強食の事実は変えることはできません。物語のなかの、フクロウの僧侶の説法が、「梟鵄諸々の悪禽が日々悪行をなし、死ねばまた梟に生まれ変わり、百生二百世乃劫も亙るまで梟身を免れぬという尽きることのない輪廻をくりかえすのみ、全く救いがない」(注4)と説くのは、この事実を述べているのではないでしょうか。
 賢治は科学者ですから、事実からは目をそらすことはできなかったのだと思います。そう捉えれば一つの仏教批判ともなっているかもしれません。
 同じように食物連鎖について述べられる「よだかの星」では、虫を食べて生きている自分がまた大きなタカに狙われていることに悩んだヨタカが、星や太陽に願いをかけながら、ついには星となってしまいます。
 フクロウはそのことには悩むことなく、星になることもできず、人間社会と隣り合って、人からの迫害に耐えながら、輪廻の世界を生きていかなくてはなりません。
 
 もう一つフクロウには、ここで描かれるような群れを作る習性がありません。賢治は、何らかの意図を持って、深い森の中にフクロウが群れている風景を設定したと思われます。
 ここにアイヌに文化における、「梟送り」を再現するための設定した、という説(注5)もあります。
 アイヌにとってフクロウは集落の神の化身としてあがめられます。「梟送り」はその行為の先の儀式で、偶然に捕らえたフクロウの子供を育て、梟送りの儀式において生け贄として天に送るというものです。フクロウを尊重する儀式のためですから、一つの命が失われることに心の痛みもありません物語で
 物語でフクロウの子供が死亡するのは、人の愚かな行動が原因です。フクロウたちは悲しみ、死の前から集まって人間に傷付けられた子供を見守っていました。そして死を迎えるのは月の船が現れて後のことで、子供の死を悼み、祈るフクロウたちには、「送り」という意識はなく、むしろ「弔い」と言えるのではないでしょうか。似ているとしたら形式のみで、賢治がそのことを書くために物語を設定した、とは言えないのではないでしょうか。
 
しばらくたって、西の遠くの方を、汽車のごうと走る音がしました。その音は、今度は東の方の丘に響いて、ごとんごとんとこだまをかえして来ました。
 
この物語の背景は、人間の社会の近くにある場所です。物語中、汽車の音は五回も書き込まれます。最初これに気づいたときは何か違和感がありました。管見ながら、賢治の描く動物社会は背景に人間が関わってくることはあまり無いと思います。たとえば「よだかの星」、「貝の火」等は、物語は動物の社会だけで完結しています。
 賢治がフクロウの世界を現実の人間社会の中の話として描いて、人間に捕まる子供のフクロウの死、そこからの救いを求めるフクロウ、救おうとしているフクロウの僧侶や宗教を描いたのには、どういう意図があったのか、今後も考えて見たいと思います。
 
注1:安藤恭子「「二十六夜」〈イノセンス〉に死す」 『国文学解釈 
   と鑑賞 61−11』 至文堂 一九九六年十一月
2:栗原敦「賢治の「月」」『賢治研究』34 宮沢賢治研究会、
  一九八三年
3:大島丈志「法華文学としての「二十六夜」考―梟の悪業に出口はあ 
  るのか―」 『文教大学国文』34(二〇〇五年)
4:天沢退二郎「「二十六夜」解説」 ちくま文庫『宮沢賢治全集5』  
  一九八六年
5:能村将之「「二十六夜」における梟の機能 ―アイヌ文化の「送
  り」との類似―」 『日本語と日本文学』 68 15-26 
  二〇二二年八月、