新年度が始まり、半月が過ぎました。 ふと、狸は自分の大学時代のことを思い出します。
狸が入学した大学は男子学生が多く、4分の3が男子・4分の1が女子という環境でした。 女子大に通う友人からは“逆ハーレム”と言われましたが、ただでさえ人見知りの狸としては女性の友達が出来づらくて悩んでいました。 4月の最初の授業で他の学生と離れて座っていた狸に、近くの机の女子学生が 「ねえ、あなた、こっちに来ない?」 と声を掛けてきました。 狸はいそいそと彼女の隣に行きました。 彼女は 「私、短大から編入したんだけど友達が出来なくて〜」 と言いました。 短大を卒業した後、大学3年生に編入したとのことでした。 彼女は狸とは違う学部で、割と女子学生が多い学部ではあるのですが、既にできあがっている仲良しグループの中に入れないと話していました。 そんなやりとりから“お昼は一緒に食べようね!”という仲になりました。 大学では割り切って独りでお昼を御飯を食べていた狸ですが、一緒に食べる仲間が出来た時はホッとしました。
けれど、それも束の間、狸は彼女と一緒にいることが苦痛になりました。 学部で友達が出来ないこともある上に実家を出て独り暮らしをしているので“寂しい”、“独りがつらい”ということを頻繁に言うのです。 毎日、愚痴を言う彼女に狸は疲れてきました。 そしてある日、狸は彼女に電話で 「私たち、別れましょう!!」 と言ってしまいました。 狸も友達がいない方でしたが、友達がいない寂しさ以上に彼女にべったりされるのがつらかったのです。
お昼を一緒に食べていた時は 「私、学校、辞めようかなあ」 と言っていた彼女でした。 電話で“別れましょう”発言をした翌日、彼女が思いつめた表情で登校した姿を見ました。 狸は多少の心の痛みを感じつつも“退学するのかな”と考えたりしていました。
その一年後、大学内で、受講に厳しい選抜試験がある講義に狸は応募したのですが試験で落ちました。 そして合格者の一覧表の中に彼女の氏名が入っていました。 その名前を見たとき、狸はまず 「学校を辞めたんじゃなかったの!?」 と思いました。 そして、その翌年、学報で就職が決まった学生の一覧の中に彼女の氏名が入っていました。 その氏名を見たとき、狸は “彼女は頑張っていたのだな・・・” と思いました。 彼女に向かって 「子供っぽい」 と言ってしまった狸でしたが、今、思うと彼女の方がずっと頑張っていて大人だったのです。
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