バンコックのチャオプラ川の西岸、トンブリ地区にひときわ目立つ寺がある。それはวัดอรุณ (ワットアルン)である。その寺の名前は「暁の寺」として三島由紀夫の小説の題名にもなっている。私の一番好きな寺である。
対岸を結ぶ橋の少ないチャオプラ川を行き来する船は庶民の足である。幅約100mを挟んで粗末な船着場を2バーツで結ぶ。その船着場は浮き桟橋になっていて常に行き交う船の波にゆられる。30人も乗ると一杯になる船も(定員はあるかなしか)で波に揺られる。
暁の名が付いているので、あるとき朝早くアパートを出て日の出からの風景を写真に収めたことがある。船着場の小屋の椅子にもたれて、対岸の高さ70mの仏塔の頂点に朝日が当たり始めそして時間の経過にしたがってしだいに搭の下部の方向に光が映って行くのを眺めていた。
人の移動も時間とともに数を増し確かに無くてはならない庶民の交通手段であるのが良く分かった。こんな近場の船には時刻表はない。人が集まれば動く。
(写真はタイ・ウイキペディアから) |