宮澤賢治、風の世界

宮澤賢治の作品を彩る言葉と風を追って宮澤賢治の世界を訪ねよう。 賢治は風という言葉に何を託したか。風を描くためにどんな言葉を選んだか。 賢治は何を求めて風の中に身を置いたのだろう。 そこに少しでも近づきたくてページを埋めていく。
 
永野川2016年10月上旬
7日
 一昨日、ようやく台風が過ぎて穏やかな天気となり、9時ころ家を出ました。
川の水量はひとまず少なくなり澄んできました。
 調整池のカイツブリのヒナは親の3分の2ほどに成長し、顔の模様は少なくなっていました。前回から12日目ですが、早く成長するものですね。
 周囲の浮草はすべて片づけられたようで、巣も見えなくなっていました。少しの間親鳥といっしょに泳いでいたのですが、その後、ヒナが一カ所にとどまっていましたから、そこが巣の名残なのかもしれません。親は潜水しながら、かなり遠くまで行っていました。西側の池にも、成鳥が1羽います。
 
 上人橋から入ると、上空をヒヨドリが10羽の群れで通り過ぎ、その後、赤津川新井町6羽、滝沢ハム近くでも6羽と、群れで移動していきました。
 上人橋上の川岸にアオサギ1羽、コサギが2羽、このところコサギは毎回現れます。帰りにはチュウサギが1羽、ここはサギの好きな場所のようです。
 赤津川新井町最上流部で川にバン1羽、少し下ったところにも1羽、額板が少し目立つ緑色になって来ていました。
 少し下ったところの川岸の草むらに、スズメではない、少し小さめの鳥が動き、次の瞬間対岸に移りました。大きさは同じくらいでしたが、少し違うようにも見え、2羽いたのかもしれませんが、最初のものは、特徴をとらえられませんでした。
 二番目にみたものは、腹面が下はごくうすい茶色で、咽喉付近が少し濃い茶色になっていて、背中は濃い茶色で模様がありました。眼はヒタキ類のように見えました。帰って図鑑で調べると、ノビタキ成鳥♀のようでした。
今いろいろの鳥が渡っているというお知らせをいただくので、気をつけてはいたのですが、これが初めてです。咋年は見損なっていたので、ひとまずは嬉しいことでした。
 上空にトビ一羽舞いました。モズが川を横切って電線に留りました。この辺では高鳴きは治まったようでした。その後行った大岩橋から大砂橋までの間では、3羽があちこちで高鳴き中、睦橋付近に来た時も、典型的に木の頂きに留って高鳴きする姿が見えました。高鳴きは場所によって時期が違うのでしょうか。
 カルガモがずっと見えなかったのですが、帰り際に、栃木陶器瓦付近で2羽、上空を飛んで4羽、大岩橋付近で7羽、上人橋で7羽、と出てきて、ひとまず安心しました。公園内では川岸のオオイヌタデあるいはサクラタデ(オオベニタデではない)を咥えて引き寄せては採餌しているカルガモを見かけました。この感じで稲を食べられてしまうと、害鳥になってしまうようですね。
 今年はこのタデが公園内のワンドなどに繁殖して様相を変えてしまっています。これも洪水が原因のようです。
 上人橋の上の河川敷でホオジロの声を2回聴きました。
 大岩橋上北岸のハリエンジュに、シジュウカラ2羽とエナガ7羽の群れが見えました。シジュウカラの声でエナガを見つけることがよくあります。5分後に南岸に来た時も、エナガの8羽群れを見たのですが、これは北岸と同じ群れでしょうか。いつも迷うところです。
 二杉橋まで下りて来ると第五小側の護岸が一瞬青く光って動き、カワセミでした。双眼鏡に入れてみると、まだ小さく色もはっきりしない幼鳥のようです。先日 
大砂橋近くで見た個体でしょうか。
 ここでやっと、ハクセキレイとセグロセキレイが一瞬飛ぶのが見えました。
草地でセイタカアワダチソウが鮮やかに花を咲かせています。この嫌われものも、もうじき鳥たちの貴重な食べ物になるのでしょう。それを思うと外来種というだけで否定することはできません。正確な知識がない分、漠然と難しいことに思えます。
 
鳥リスト
カルガモ、カイツブリ、ダイサギ、チュウサギ、コサギ、アオサギ、バン、トビ、カワセミ、モズ、ハシボソカラス、ハシブトカラス、シジュウカラ、ヒヨドリ、エナガ、ノビタキ、スズメ、セグロセキイ、ハクセキレイ、ホオジロ

 
 







永野川2016年9月下旬
25日
 ようやくよいお天気になり、9:30ころ二杉橋から入りました。
 少し上った西岸の民家のテレビアンテナで、モズがはっきりと高鳴きとわかる声で鳴いていました。今日はモズが一斉に高鳴きをしていました。上人橋の手前の東岸、民家の大木、大岩橋の近く永野川の南岸の電線、赤津川、泉橋の少し上の電線、新井町栃木陶器瓦の対岸の民家の大木など。
ちなみに片柳町の自宅前の民家のテレビアンテナでも、今季初の高鳴きを聞きました。
 調整池のカイツブリの雛、1羽は順調に育っているようです。巣の上にじっとしていて、親鳥1羽のみが周囲で潜水を繰り返していました。
 ヒヨドリが動きはじめたようです。二杉橋上で2羽、高橋で10羽、上人橋で3羽、公園で3羽、上空を鳴いて横切っていきました。
 睦橋下の河川敷でカルガモ13羽、上人橋下の河川敷で13羽、西の調整池で8羽、少しずつ数を増してきました。
 睦橋付近には少し中州が残っていてダイサギ1羽、セグロセキレイ1羽、カワウが1羽見えました。中州はこのあたりしかなくなっています。
 上空をキジバトが2羽飛びました。
 上人橋付近のサクラ並木でシジュウカラ2羽、川岸にコサギが1羽、これは脚の黄色で確認しました。
 大岩橋の上の川岸にチュウサギ1羽、赤津川西岸の新井町の田にコサギ3羽、チュウサギ1羽の群れ、少し上流の東岸の田にもチュウサギ2羽、大きな群れには会えませんが、そこここに白い形が見えます。
 赤津川を下ってくると、久しぶりでバン2羽、ムクドリ2羽、そしてツバメが1羽、迷った感じで上り下りを繰り返しています。もう仲間は渡ってしまったのでは?と思います。
 公園で、カラス大ですが色が薄い感じ、と思って双眼鏡に入れるとオオタカでした。公園を少し旋回して川を上っていきました。
 合流点でアオサギ1羽、じっと流れをみつめている感じで、留まっていました。
 相変わらず水量が多く、中州に来る鳥が来られず、鳥種が増えません。でもモズの高鳴きが始まって、少し季節が動き出したようです。ヒガンバナは今が盛りです。
 
鳥リスト
カルガモ、カイツブリ、キジバト、カワウ、ダイサギ、チュウサギ、コサギ、アオサギ、バン、オオタカ、モズ、ハシボソカラス、ハシブトカラス、シジュウカラ、ツバメ、ヒヨドリ、ムクドリ、スズメ、セグロセキイ

 
 







「植物園」になった競馬場 
        (9月29日に投稿した同タイトルの文に、新しい資料を加えて修正しました。)
 童話「ポラーノの広場」のプロローグで、主人公キューストは、〈植物園に拵へ直すといふので……役所の方にまはってきた〉競馬場の跡地の建物に住んで毎日楽しく役所に通っています。
 この〈植物園に拵へ直す〉ということついては天沢退二郎先生(注1)が、〈用途変更というそれ自体夢魔の住みつくところで少年たちをユートピアに導くのが可能な場所〉とされています。 
 また、岡村民夫先生(注2)は、モダンで文化的な施設が田園的なものと共存しながら発展していく「郊外」に開設される「競馬場」が、キューストの文化的な生活を可能にしているとされました。
 古くは神事に始まり、ついで馬産農家の飼育した馬のコンテストの場となった競馬場は、馬産県岩手にとっても、当時の農民にとっても、ある種栄光の場所でした(注3)。
 そして賢治の生存中も菜園競馬場から黄金競馬場へ、賢治の没年には新黄金競馬場へと、いつも発展的意味を持って移転が繰り返され、広い跡地は、当時農地や学校として利用されてきました。現実には〈植物園に拵へ直す〉ことはありませんでしたが、賢治の意識の中の〈植物園〉は、卒業後も足を向けていた、農業の向上を目的とした高等農林の植物園や、上京時に訪れていた、常に最新の学術的成果が見られる東大の付属植物園で、理想の場所への変更の象徴として設定されたものだと思います(注3)。
 
 平成8年に新競馬場が現在の新庄字八木田地区に開場し、賢治の時代の名残を感じる上田の新黄金競馬場跡地はどうなるのか気になっていましたが、偶然、既に2年前に、環境教育のための「エコアス広場」や、公園となっていることを知り、賢治祭の帰りに回ってみました。
 高松公園とエコアス広場のの境界は無くて、向こう端が見えない程の広大な芝生で、芝生の中にガマやヨシで囲まれた小さな池、鳥の観察台、水遊びのできる池、まだ成長していない木々、説明パネルなどが点在していました。
 盛岡市のHPによると、跡地はほとんどが岩手県競馬組合の所有でしたが、平成13年から開発公社を経て市が取得し、跡地21ヘクタールのうち17ヘクタールが以下の割合で整備されました。
 
公園ゾーン2.07ha(面積割合12.1% 多目的芝生広場,自然いっぱいの森,桜のプロムナード,駐車場)
環境ゾーン(エコアス広場 6.09ha 35.7% 資源のリサイクルや自然エネルギーの不思議,農を通じた土,生命の不思議など様々な環境学習を通じて環境問題を考える場、ビオトープの広場,市民菜園)
自由広場ゾーン5.14ha 30.1%)
保健福祉ゾーン1.76ha(0.3%)
ミニバスターミナルゾーン0.35ha(2.0%)
道路1.67ha(9.8%)
 
 エコアス広場の内容は
いこいの花畑(バイオマス資源の活用と資源循環の仕組みを学べるゾーン)、
光のガーデン(照明灯は全て太陽光発電や風力発電により、再生可能エネルギーを身近に感じるゾーン)
観察の木陰(自然観察のために生物に出会える池・樹木など)
    環境について簡単に学べるパネル、合計10カ所 

 この変更は、植物園ではありませんが、もしかしたら賢治の意図にも限りなく近いのではないか、と勝手に思い込んで喜んでいます。普通だったら商業施設になってしまうかもしれない場所がこのような形となり、その80パーセント近くを、自然に溶け込んだ環境学習のための広場や公園にすることが出来たのは、やはりここはイーハトーブだからだ、と思います。
 ただ、近くを歩いている人さえ場所を知らず、整備されているのに利用する実態が見えてこない気もします。また自然環境の学習という点では、少し競馬場の部分を残して整備したほうがよかったのではないか、と思います。ただ実際は公園や民家の近くに「自然」を置こうとすると、様々な利害関係や衝突を生み困難なことは、以前環境関係の仕事を手伝っていた時、苦い思いとともに知りました。
 これが「用途変更」という改革なのだ、と思います。仮に賢治がこの場所を任されたとしても、この広さに胸を躍らせて、全く新しい広場をつくったのではないでしょうか。
 この新しく作られた広い人工的な自然が、本来の自然に近づき、本当の環境教育の場として育つには、さらに時間と人智が必要でしょう。                   
 
注1 「ポラーノの広場」あるいは不在のユートピア―プロローグをめぐって
(『国文学解釈と鑑賞』1984 『〈宮沢賢治〉鑑』 筑摩書房1986)
注2 「ポラーノの広場」の競馬場 賢治郊外学のために(『賢治学第二輯』2015)
注3 拙稿 「ポラーノの広場」の競馬場
(『宮沢賢治 絶唱 かなしみとさびしさ』勉誠出版 2011)

 

 
  
 







永野川2016年9月中旬
16日
  調整池のカイツブリのヒナは誕生しました。
水上では、親鳥が両側にいて、餌を食べさせています。しばらくすると、親鳥の背に乗って羽のなかに隠れてしまいました。親鳥の羽が大きくふくらんでいるのでわかります。
  巣の上にはまだ卵のようなものがあり、あるいは孵化しないものもあったのかもしれません。取りあえず一安心です。巣に配慮して下さった公園管理者の皆さん、有難うございました。
 
  曇り空で晴れるすき間もないような天気でしたが、9:30頃でかけました。
二杉橋から入ると、まだ川の水が多いのですが、少し澄んできたようです。波に乗るカルガモ3羽、睦橋付近でやっとセグロセキレイ1羽、それだけです。
  上人橋上の河川敷にダイサギ1羽、合流点の中州にダイサギ1羽とコサギ1羽。ここではよく一緒の姿が見られます。
  付近の電線にスズメが16羽並んでいました。今日はスズメ除けの放送も無くなりました。今年はそれとはあまり関係なくスズメは少なかった気がしますが。
  キジ♂が1羽、道路を歩き、少し上ると川辺にアオサギ1羽、泉橋下にはカイツブリが潜水を繰り返していました。
  新井町に入ってモズ1羽、電線に止まっています。でも鳴き声はありません。
  東岸の田にチュウサギが5羽群れていました。大きさもかなり差がありますが、コサギはいませんでした。
  公園では、久しぶりにトビ1羽が旋回していました。
  滝沢ハムのクヌギ林にはほとんど鳥の気配が無く、少しがっかりしながら歩いていると、外れたところのサクラ並木付近で、小鳥の群れの気配がして10羽飛び立ちました。少し追ってみると、エナガでした。小さい声で鳴きながら少しずつ移動してきます。今季初です。その後大きな鳥の気配がして、オナガが1羽枝を行き来していました。このために移動したのかもしれません。
  川の南側、大岩橋から大砂橋までの道路が通れるようになったので、少し上ってみました。
  山沿いの水田の水路で、鳥影を見つけ、入れてみると、なんとカワセミでした。まだ色が鮮やかではなく少し小さめで、若鳥だったようです。ここもカワセミのスポットなのかもしれません。
  公園に戻ると、別のサクラ並木で、5羽程度のシジュウカラの群れ、鳴き声のみでしたが確認できました。
  下って来て二杉橋近くの東岸の薗部町の民家の樹木にモズ1羽、キチキチという声でしたが、少し鳴くと居なくなってしまいました。高鳴きとは云えないのかもしれません。
  ススキが穂を出し始めたところで、とてもきれいです。ススキの分布もいまなら知ることができそうです。
 
鳥リスト
キジ、カルガモ、カイツブリ、キジバト、ダイサギ、チュウサギ、コサギ、アオサギ、トビ、カワセミ、モズ、ハシボソカラス、ハシブトカラス、オナガ、シジュウカラ、ツバメ、エナガ、スズメ、セグロセキイ

 
 







永野川2016年9月上旬
3日
  調整池のカイツブリの浮巣は変化なく、1羽が卵を抱いていて、ツガイのもう一羽が池にいることは確かです。
 
4日
 友人からの情報では池の清掃をやっているという話でした。公園課の情報は私たちには知らされないので、すべてお任せ、後の祭り、ということになります。
 
5日
 まだ巣はもとのままで、親鳥がかぶせた水草等がたくさんかかっていました。
 
9日
   台風の余波で、悪天候が続き、今日になってしまい、早朝にはでられず、9:00頃から歩きました。日差しは強くなっています。
 上人橋からまず公園にまわると、川は増水して中州は全くなく、いつも渡れる飛び石の上も10cm以上水が増え大きな流れになっていました。いままでで一番鳥の少ない予感がします。上人橋でツバメが1羽、少し上の東岸にチュウサギが1羽、公園の中にカルガモが1羽という具合です。
 調整池にいってみると、水面を覆っていた水草が4分の1ほどになっていて、いつもの場所に浮巣はありませんでした。やはり、やられた、と思ったら、少しはずれた水の上に少し小さくなった浮巣に親鳥が座っていました。水草の処理のとき、巣を移してくれたようです。有難いことです。欲を言えば巣のあった所にそのままに残してくれたら鳥にとってはもっとよかったかもしれません。
 ひとまず安心ですが、親鳥が離れた後の巣を見ると、また卵がむき出しになっていました。親鳥は水草を探しているのかもしれませんが、巣の周囲には無く、大変そうです。
 もう一つ心配なのは、抱卵しているのを初めて気づいたのは8月6日でしたが、孵化には、こんな時間がかかるものでしょうか。孵化に失敗しても卵を温め続けるのでしょうか。
 西池にもカイツブリ1羽、セグロセキレイが3羽、大岩橋下にダイサギが1羽、嘴で確認しました。
 赤津川泉橋下でカイツブリ3羽、カワウも1羽飛び立ちました。
 民家の柿の木の頂きにモズが長いこと動かないのですが、鳴きませんでした。少し下ったところの廃屋の木のモズは、枝を移動しながら尾をくるくる回して、キチキチキチと鳴きつづけていました。まだ高鳴きは始まらないようです。スズメを追うための放送が、モズの高鳴きと警戒声を加えたような音で、紛らわしいことがあります。
 電線にキジバト1羽、東側の田にチュウサギが3羽、嘴と大きさで確認しました。
 合流点まで戻ると水の増した堰の上に、見慣れない黒っぽい鳥がいました。体の形や脚などから見るとサギには違いないのですが、小さめです。腹部に縦に白い模様が3筋ほど、足は黄褐色、順光で見える場所まで来ると、眼は黄色く嘴は黒く、過眼線?の辺りに白い模様があり、顔はササゴイに似ていると思いました。帰って図鑑を何冊か見比べた結果、やはりササゴイの若鳥(9月)に一番よく似ていました。ここでは初認です。台風でどこかから迷ってきたのでしょうか。激しい川の流れと反対にじっと動きませんでした。
 合流点にだけ残った中州にカワウが2羽とカルガモが2羽、いつもの情景です。

 クズ、センニンソウが、一斉に香りを漂わせ、ヒガンバナが咲きはじめました。10日以上来なかったせいか、季節が急に遷った気がします。そういえば池のトンボはツガイがほとんどでした。
 鳥は少なかったのですが、今日来なければ見過ごしてしまったものも多く、数にはとらわれず頑張ろうと思います。
 
鳥リスト
カルガモ、カイツブリ、キジバト、カワウ、ダイサギ、チュウサギ、ササゴイ、モズ、ハシボソカラス、ハシブトカラス、ツバメ、スズメ、セグロセキイ