美味しさについて書いてみました。
哺乳類である人間は、母親から生まれて初めて口にするのが母乳です。 それは、一番始めに美味しいと感じるものが母親の乳の味であることが分かっています。 赤ん坊は本能的に五感(味覚、嗅覚、視覚、触覚、聴覚)を使って安全と判断した乳を生命のために必要とします。 あんなに美味しいと思って飲んでいた(記憶はないが)母乳が大人になるとその味を忘れてしまいます。 何故かを考えてみました。 人が食育するに連れ美味しさの基準が変わってくることがあります。 色々なものを口にすることで味の志向が変化しより美味しいものが出てくると以前美味しいと感じていた乳が普通になってしまい記憶に留めなくなります。 これを現代経済学では限界効用が下がると言います。(限界効用逓減の法則) 本題に入ると、 飲食の美味しさの感覚は視覚から来る色や形(見た目)、嗅覚からくる美味しそうな臭い、味覚を検知する舌の味覚センサー(味蕾)、触覚は噛んだときの食感、聴覚はステーキを焼いている音やカラット揚がった天ぷらを噛んだときの音として認識し、複合的に美味しいか美味しくないかを判断しています。 その外に人間の複雑な生き物であることが分かる+美味しさには、「経験」と「情報」と「環境」があります。 まず今までどう言う食べ物を食べどう言う飲み物を飲んできたかによって味わいの形成ができていきます。 分かりやすい例えでは初めて飲んだときのビール。 思い出してください。 あの苦い飲み物を美味しいと感じる人は誰一人いないと思います。 ところが、回を重ねる毎に美味しいと感じてきます。 関東人の好きな納豆もそうです。 不思議なものです。 これは経験値というもので、嗜好品であるコーヒーについてもあてはまります。 昨今話題となったゲイシャ種は特別な味わいとして珍重されていますが30年前のコーヒー好きが飲んだとき、本当に美味しいと感じたのでしょうか?疑問です。 多分何これ、変な臭いがする、となると思います。 やはり、スペシャルティーコーヒーが台頭しその積み重ねで個性の良さが分かってきたものと思います。 コーヒーと共通点の多いワインも然り、安価で美味しくないテーブルワインばかり飲んでいる人がグランヴァンと言われるトップオブトップのワインを飲んでもその良さが分かるものではありません。 評判の良いものを沢山飲むことによって味覚がアップデートされるのです。 だから、コーヒーもちょっと高くて手が出ないと思ったとしても向上心をもって飲んでみるべきだと思います。 一期一会、二度とそのコーヒーに出会えないかもしれないからです。 人生は短い! 私はコーヒー業界に入って10年程でまだまだ初心者マークがとれた程度ですが、感動したコーヒーはいくつかあります。 その時の記憶を頼りに美味しさを追い求めてしまいます。 そして、3つ目は情報です。 当店はコーヒーの情報としてトレサビリティーとカッピングコメントをお伝えしていますがこれではブランド力にはまだほど遠いです。 一流どころは如何に自分のもっている経験値からくる情報をストーリー性と話題性に変換し情報伝達力を駆使すると消費者は美味しいと感じてしまうのです。 そして、4つ目は環境です。 今、コロナの影響を受けスティホームで宅配弁当を食べる機会が増えていると言います。 有名レストランでも客足が減り苦肉の策として宅配を始めています。 ところが、自宅で食べる有名シェフの料理があまり美味しくないとも聞きます。 それもそのはず、レストランの空間は非日常的で自宅のシチュエーションとは雰囲気が全く違うからです。 これで、飲食店の店作りが重要だって事が分かります。 上記のように、美味しさとは五感で感じる美味しさ+経験+情報+環境が複合的に絡み合って美味しさが決ると言うことが分かって頂けたかと思います。
初音亭オーナー |