不純理性批判

現役ヘタレSEが壁に向かって呟いた哲学や宗教とサブカルチャーなどの独り言を記録したブログです。衒学的・・でもないな。
 
CATEGORY:SF

2009/01/03 19:26:39|SF
懐かしいSF小説 海野十三

「火星兵団」

1939年海野十三 作  
復刻版で読んだ。
もちろん現代カナ使いに直された文で。火星人が密かに地球侵略を着々と進めている計画を察知した何とか君という主人公の少年と何とかという偉い博士を中心にストーリィが展開していく。アナクロチックな展開が実によい。 復刻版も各社から出ているし、多分公共の図書館などにも置いてあると思うので読んでみるとよろしい。意外に人気のようで、ネットで書籍の本文を公開している「あおぞら文庫」でも読めるようです。 http://www.aozora.gr.jp/cards/000160/files/3368_25725.html
 
そういえば、光瀬龍の小説にも「火星兵団を撃滅せよ」ってのがあったなぁ。確か徳間書店の「SFアドベンチャー」という発刊後数年で廃刊になった悲運の雑誌の創刊号にあった気がする。ちなみに海野の本作とは全く関係なし。
 
 
 「十八時の音楽浴」
1939年海野十三 作  
海野十三続きでは、短編集「十八時の音楽浴」なんかもいいです。
結構現代のSF小説としても特に違和感なく読めるもの。内容はアンチユートピア小説で、独裁者が支配する未来の超管理社会下で、人民をマインドコントロールする手段が”音楽浴”なんだそうだ。(内容うろおぼえ) 何故か火星人やらロボット兵士やらが出てくるんではなかったか?これも各社から復刻されている。ハヤカワ書房から出ていた文庫版で読んだのは僕が高校ん時だから今か25年前なんだなあ・・・ あのころはろくに勉強もせずに漫画やSFばかり読んでいたっけ。 とまあ、ここまで書いてamazon.comで見てみたら、ハヤカワ文庫以外にも小学館から、海野の小説をベースに現代風にアレンジした小説が出ていました。 うーん、やはり良質のSFは数十年を経てもSFファンをひきつけるんでしょうね。
 






2008/10/13 6:50:18|SF
幻のSF映画(3) 「宇宙船アーク号」
「スターロスト宇宙船アーク」(原題:STARLOST)カナダで製作
NHK総合で1975年頃放映

(映画じゃなくてTVドラマだけど)
実家に30年以上前のカセットテープが何本かある。気に入ったテレビドラマやアニメの主題歌を録音したもので、その中に「宇宙船アーク号」のオープニングがあった。NHKで放映していたので当然日本語版で、オープニングにも日本語のナレーションがあった。ナレーションはこう。

西暦21xx年。人類は最大網、そして最後の企てである宇宙船アーク号を建造し、果てしない宇宙へと旅立った。しかし100年後思わざる事故によりコントロールを失ったアーク号は、西暦2790年の現在もなおあてどもなく飛行を続けている。

アーク号はその名の通り、荒廃した地球を離れて異星の地で人類の種を存続させるために建造された「箱舟」。細長い直方体にお椀上の居住ブロックがいくつも葡萄の房のようにくっ付いた形状の超巨大宇宙船で、船内では既に出発時の何世代もあとの人間が社会を作っている。で、おそらくだれもアーク号の目的も操縦方法も知らない。

ストーリーは覚えていない。平日の夕方に放映していたが見忘れてしまったりとかで断片的にしか覚えていない。結末はどうなんたのだろう。目的を果たせたのだろうか?
そういえば、巨大宇宙船もので似たようなストーリーではR.A.ハインラインの「はるかなるアルファケンタウリ」がある。恒星間飛行をするためにひとつの都市を宇宙船内部に建造し、何世代もヘタ子孫が目的地に着くといったものだった。(私は小学校の図書館で、「さまよう都市宇宙船」とジュブナイル向けに訳された本を読んだ)

もう一度「宇宙船アーク号」を見たいものだが・・カナダかどこかで動画配信でもしてくれないものだろうか













2008/10/13 6:38:49|SF
幻のSF映画(2) 「The Quiet Earth」
「The Quiet Earth」
Geoffrey Murphy監督 1985ニュージーランド


もし地球上のあらゆる人が消え去り、あなたひとりになったらどうしますか? 

古くからこのテーマのSFは作られてきています。最近では米映画の「I Am Legend」もニューヨークにただ一人生存した人類となった青年が描かれています。日本ではドラえもんの「独裁スイッチ」を知っている方も多いと思います。みんな消えちまえ!と思うことは誰にでもありますが文字通りの意味で現実に起こったら恐怖ですよね。どんなに偏屈な人でも毎日毎日孤独なのは耐えられない。

この映画もある日突然世界中のあらゆる人間が消えてしまった世界にただひとり取り残された男の話で、ある極秘機関の研究者、ザクに起こった人類消失というとんでもない超常現象に、彼は戸惑いそして自分以外の人間を探していく内に精神が病んでいき、無人の大邸宅に潜り込んで、女ものの下着を身につけ、紙で出来た人形を邸宅の庭に並べて独裁者の真似をしたりと・・・・
だがそれも飽きて、町から町へとさまよい続ける。その道中で若い女性(ジョアンヌ)と会い、次いで屈強な青年(アピ)と会い生き残った人類は自分だけではないことを知ります。そしてこの3人で共同生活をし他の人間を探すたびに出ます。

で、実はこの人類消失は「オペレーションFLASH LIGHT 」と呼ばれるザク自身が関与していた秘密研究の実験中に起こった事故によるもの影響によるものでした。そして徐々にこの地球規模で起きた異常現象の原因がわかる。


というもの(らしい)
実はよく覚えていません。20年くらい前に駐在していた韓国で、在韓米軍向けのテレビ放送で偶然みた映画です。日本語の字幕もついていないので細かいストーリーを理解できるほどの英語力もなかったが妙に心に残っている映画でした。
「だれも居なくなる・・・」
ドラえもんの独裁スイッチもそうだけど似たようなテーマのSFはまだまだあります。大変秀作な小説に小松左京の「こちらニッポン」(角川書店)でがある。Quiet Earthよりも小松左京の小説のほうが先に出版されているのでパクリ・・・というわけでもないよう・・。結構似たようなストーリーになるようだ。誰も居なくなる設定自体がひとつのSFジャンルになるかも知れません。

あと、ロッドサーリングの有名なTVドラマTwilight Zone にもペシミストの男が突然誰もいない世界に来てしまう話がありました。

さて、もしあなたを残して他の人々が残らず消えてしまったら・・・これ以上の恐怖はないですよね。

ではまた






2008/10/13 6:36:27|SF
幻のSF映画(1) 人造人間クエスター
人造人間クェスター (原題 THE QUESTER TAPES )
1074年米 Richard Colla 監督

30年くらい前の(多分小6位だったか?)NHK総合テレビで放映していたのを見た記憶がある。主人公のアンドロイドがカジノに行き、サイコロの運動を正確に計算して振り賭けに勝ち進むシーンと、クライマックスで見たこともないような異世界でそのアンドロイドを作った博士と対話するシーンだけ覚えている。
以来テレビ放映されたかもしれないが、多分ビデオレンタル店では置いてなく、地上波BS問わずテレビ放映やネット配信もされていない幻の作品となっているはず。幻の・・・なんて大袈裟に評するのはわけが在る。映画には珍しく非常に硬派なハードSFだというのが理由。ネットで検索すると結構なサイトで紹介しているようだ。

でも、肝心のストーリィはどんなものだったかうろ覚えでしかないので米国のWikiで見てみるとあったあった。以下は意訳したあらすじ。

米国で世界初のアンドロイドを開発するプロジェクトが組まれ、世界中から精鋭の科学者や技術者を招聘して開発を進めてきた。そのプロジェクトの名がクェスター (Quester 諮問者・・・なんの意味かな) ようやく完成まぢかと言う時に、アンドロイドを設計した中心人物であるワスロビック博士が突然失踪してしまう計画は頓挫するかに見えた。なぜなら完成させるには博士の作ったソフトをインストールしなければならないが、これが博士以外の人間ではデコード不可能(何故でコードするのかは不明)それでも無理やりデコードさせたら折角ソフトが入っていたテープメディア内のファイルを半分壊してしまった。(っというか何故バックアップ取らなかったのかな。しかもテープメディアって)仕方がなく他のメンバで作ったソフトウエアと博士の残したソフトを組み合わせて何とかアンドロイドを動かせるようになった。しかしまだ完全ではない。完全でないにせよ自我意識を持ち自立行動を行い人間の言語(英語)で会話をし、痛覚や聴覚視覚などの五感も備えた人間と変わらない動作をする。しかしアンドロイド自身は自分がまだ完全でないことを覚え、設計者つまり生みの親であるワストビッツ博士を捜しに、プロジェクト推進の中心人物であるロビンソン博士(いわばお目付け役)と一緒に欧州へと飛ぶ。途中英国の軍人(諜報部員?)に狙撃され修理を行うことになったりしながらも旅を続けついにワルソビッツ博士を見つけることが出来た。そこで博士が話したことは驚愕の真実だった。なんとワルソビッツ博士自身もアンドロイドであり、太古のときから人類を守るべく未知の支配者(?)から造られたロボットだった。しかし原子炉の異常によりプログラムされた動作ができなくなり、ワスロビック博士自身の活動をサポートすしいずれは引き継ぐべきアンドロイドを作るために結成されたのがクエスター・プロジェクトだった。
そしてクエスターの存在を快く思っていない有力者からの刺客による攻撃を受けながらも、アンドロイドは自己に課せられた使命を果たすべく奔走し始める・・・



とまあこんな内容だったような気がする。ロボットが活躍して悪をやっつける活劇ものとは全く違う趣向で、人類を守護するために作られた・・・では創った(造った)のは一体誰なのか? 壮大な話のSF映画だった






2008/09/24 21:08:33|SF
ハードSF これだけは読むべし!(国内編)

ハードSFはご存知の通り、綿密な科学考証に基づいたSFの1ジャンルの事で、ストーリーの骨格となるアイデアが、論理的かつ科学的に説明可能なもの。大雑把にいうと理科系向きの小説といったところでしょうかね。
20世紀に入ってアメリカで勃興したSF小説自体が”空想科学小説”と和訳されていた位だから、まあ好きな人にとっては「ハードSFこそがSFの源流であーる!」と主張するんでしょうね。 では、私が読んだ(読もうとしている)作品でイチオシを紹介しましょう。
 
石原藤夫(いしはらふじお)
1933年生  東京都在住 工学博士玉川大学教授(専門は電気通信工学) 1965年に「高速道路(ハイウェイ惑星)」でSFマガジンでデビューする 
 
宇宙船オルモロフ号の冒険 
(ハヤカワ文庫JA  今は絶版・・・オークションとかで入手可能)
物理的な建造物である宇宙船自体が微分可能という、純粋な数学を題材にした長編。単なるガジェットとしての数学ではなく、ストーリー展開が数学そのものといったところ。数学という学問自体が抽象的なので、内容もよくわからん展開になるけど好きな人にとっては面白いもの。 オルモロフ号が巨大な宇宙船で、乗組員は人間、サイボーグ、知性と感情を持つロボットなど様々で、宇宙を旅して冒険するという設定。(設定は宇宙船ビークル号の冒険をリスペクトしている。もちろん題名も)  旅の途中でわけのわからん知性体と出会い、時には戦いを経ていく。主人公がたぶんサイボーグだったかな? 数学を専門としている人で有能なロボット助手と一緒に様々な難問を解決していくもの。難問はまさに数学そのもので、異星の知性体が船内に侵入したときに残した編微分方程式を、独自の推理で導出した境界条件で解いて解決し、敵対する生命体をやっつけるというもの。ストーリを面白くさせているのが、宇宙船内の人間(ロボットもいるけど)関係もからめた組織の理不尽さに翻弄されながらも知力でこれを克服するところで、日本の大企業や官庁に良くある上層が自己保身した考えていないような非合理的で馬鹿げた組織を揶揄している。多分旧電電公社研究所に居た作者自身の体験を元にしているのだろうなー。 結構過激なのが理不尽な理由で主人公が宇宙船内の軍法会議みたいなところで「死刑」を宣告されて執行されるのだけど、なんとも石原藤夫らしいアイデアで切り抜けるラストは実に面白い。 巻末には考証に使った数学の解説がある。ある空間の特異点をオルモロフ号が周回することで積分状態になるとか・・  理科系大学の2,3年生くらいで習う解析数学が題材になっているので、基礎知識が怪しい(私もそうだけど)人向けにストーリー展開を補完するようなものですね。
 
画像文明   
(ハヤカワ文庫JA 1976年)
マスコミュニケーションが「テレビ」という画像情報を中心とした現代(といっても作品が発表されてから30年以上たつけど)を演繹して、個人レベルのコミュニケーションが画像情報を介して行われるようになった近未来を描いた短編。
 
コンピュータが死んだ日
東京ベイエリアに建造された超巨大コンピュータが首都圏のインフラを管理している近未来を舞台設定とした長編小説。この巨大コンピュータの「意図的な」プログラム欠陥(?)で、コンピュータが管理している東京湾の石油コンビナートが突然大爆発を起し、都心部が壊滅状態になるところから始まる。惨事に巻き込まれた主人公の情報科学スペシャリスト(フリーランスのSEに近い)が、混乱する東京エリアで家族を救い出す前半部と、政府が緊急設立した事故原因究明プロジェクトに編入されて惨事を引き起こした犯人を突き止める後半部で構成されている。 1980年初頭に書かれたもので、今となってはかなり古臭いガジェットになってるけどもストーリーは実に面白い。犯人を追い詰めるプロジェクトチームの活動は、推理小説とは全然違う内容で、当時(1980年代)に始まったシステムエンジニアリングの思考方法を応用し極めて論理的に展開させていく。(ちなみに2008年現在でいうSystem Engineeringとはかなり異なっている)
 
堀晃(ほりあきら)
1944年生  関西在住 繊維メーカの技術職として働く傍ら執筆を続けてきた。 1970年に「イカルスの翼」でSFマガジンでデビューする
 
バビロニアウェーブ
太陽系近傍に謎のエネルギー収束が発見された。レーザー光線のようなコヒーレント光で、バビロン王朝くらいの太古の昔から存在していた(?)ということでバビロニアウェーブと命名された。この光束は非常に大きなエネルギーを持っており、このエネルギーを地球に送る事で人類のエネルギー問題は大幅に改善された。しかしある日そのエネルギー送信に問題が生じ、調査に向かう。そして意外な結末が判る。 多分、この作者の最初で最後の長編小説。
 
梅田地下オディッセイ
複雑に絡み合いながら増殖する大阪市梅田地区の地下街。ある日この地下街が地上から完全に隔離され、閉じ込められた人々が脱出を試みるも失敗。地下街の中に住み着き小規模なコミュニティをいくつか形成し、対立しあう。主人公はどのコミュニティにも属さない男。地上では冴えないサラリーマンだった。その男と、閉じ込められた地下街で会ったゆきずりの女との間にできた新生児は、驚くべき能力を備えていた。外界と地下街を遮断したのは”誰か”の意思なのか? 
 
 
瀬名秀明(せなひであき)
1968年生  宮城県在住  理学(医学?)博士東北大学の教職員が本業。 1995年に「パラサイトイブ」でデビュー。
 
ブレインバレー
脳科学を専門に研究する特別プロジェクトがつくば研究学園都市に設立され、研究者として招聘された主人公の孝岡は、同じく脳外科のエキスパートとして招聘された米国の女性医師と一緒に、臨死体験としたという謎の女性を被検体として研究を続けるが、どうにも説明できない超常現象が次々と発生する。そしてラストでこの特別プロジェクトの真の目的が明らかにされる。 生命科学、認知工学、生物社会学、情報工学などのいろいろな学問を凝縮した内容で、物語の大半が学術解説になっているようなもので、ハードSF好きには堪らない本でしょう。いわゆるてんかん気質の医学的な考察を詳細に解説しているところなどはなるほどと頷く。でもストーリーが平凡という酷評もありますけどね。私は好きです。 それと、内容が非常に専門的なので作者自身がこの小説の解説本を執筆しているそうです(私は読んだことはないが)






[ 1 - 5 件 / 6 件中 ] NEXT >>