また油断していたら一ヶ月近く空けてしまいました。 またまたサルベージですがちょっと書いてみようと思います。
○JOJOボス雑感・吉良吉影編
3部が絶対的な大ボスであったDIOから打って変わって、 第4部は人間の殺人鬼、吉良吉影がボスとなりました。 最初読んでいた時こいつがラスボスになるとは思っていませんでした。 彼の事を一言で言うならば一般人の仮面をかぶった異常者、と言っていいでしょう。 しかし、異常者でありながら常識人であります。 それ故に自らの悪事が表沙汰にならないよう徹底し、 普段は一般人として振舞えるだけの常識と知能を持ち合わせている。 都市型シリアルキラーと呼ばれるタイプですね。
さて、普段こそ一般人であり常識人である彼ですが、 その殺人鬼としての彼は少年誌ではヤバすぎるレベルです。 女性の美しい手に異様なフェチズムを持ち、殺害した女性の手を持ち帰っては 自らの恋人と接する様に語りかけ一人芝居をし、普段から持ち歩くと言うオゾましさ。 その手を使って自分の尻を拭いてもらうと至上の喜びを感じるという下品さ。 実は少年誌でなければもっとヤバい事をしていたのかもしれません。 幼い頃はモナリザの手を見て勃起したという筋金入りの手フェチ。 家庭に特に問題は無かったはずなのに一体何があってああなったのか不思議でなりません。 あえて言うなら父親が殺人だろうと我が子の幸福であれば守ろうとする程の過保護であった事、 吉良自身が自らの犯罪がバレずに済む様にできるだけの高い知能があり 殺人に対するモラルがなかったのが原因でしょうか。 一言で言うなら彼は非情に頭の切れる人間であり、 その裏には誰もが顔を顰めるゲスである、という二面性を持つ人間と言っていいのでしょうか。 困った事にどちらが欠ける事もありえません。常に不可分な要素なのです。
さて、それから離れてみると彼は悪役、しかもボスキャラとしては全く異質な存在でした。 どんな些細な相手であっても争いを避け、いい暮らしをする、 出世などといった向上心が皆無の人間でした。 殺人を除けば何も欲せず、健康に気を使い何も変わらない日常を至上としていました。 人間関係もストレスの原因と関わる事を嫌い、 誰とも好かれず嫌われず、そして目立たずを意識して続けていました。 植物の様に平穏に生きる事を至上とした全く異端の悪役。 正直言えば、矛盾と言う他無いかもしれません。 殺人行為を行うというのは平穏な生活と全く相反する行為だからです。 「激しい喜びはいらない、心を悩ます様な不安や恐怖も無い、 そんな生活こそ自らの思い描く理想の生活」と彼は述べています。 しかし彼は殺人の時に得られる強烈な快感に陶酔し、 突き上げる殺人衝動に駆られ、それを抑制する事に極度のストレスを感じていました。
明らかに矛盾です。激しい喜びはいらないと言っているのに 殺人の快楽と衝動に耐えられず平穏な生活のさなかに殺人を犯さずにはいられない。 恐らく彼にとっては
殺人衝動を抑えるストレス>平穏な生活を送る欲求
という構図だったのではないかと思います。 チンピラにかかされた屈辱感を払拭するために爆破したり、 追い詰めた康一に対しても時間の許す限り暴行を加えてストレスを解消しようとしていました。 実は彼はストレスに弱いのかもしれません。 ストレスを抱える事が嫌で嫌で仕方ないからこそ前述の思想をしていた可能性もありますね。 プラスはなくても全くかまわないが、マイナスがあるのは絶対に耐えられないという事なんでしょうか。 それを考えると、彼もまた恐怖や不安を抱く事に怯えていた存在なのかもしれません。 DIOの言葉がここになって意味深になってきますね。
さて少し話はそれましたが恐ろしい事に彼は自己の矛盾を成立させる事に成功していました。 表の顔と裏の顔を完全に使い分け、平穏を保てる様に証拠を隠滅し人知れず、人知れず殺人を繰り返していました。 自らの犯罪に対する罪悪感も皆無(JOJOキャラにとっては全く普通の事ではありますが)、自らが幸福に生きるための当然の行為としてごく普通にする事という認識なのでしょう。 顔も背けるゲスで恐ろしく頭の切れる殺人鬼が一般人として街に潜み、 彼という悪魔への生贄の様に定期的に人が消えていく。 街に潜む恐怖、という演出にはこの上も無い存在だったと思います。
さて蛇足ではありますが彼は荒木先生のお気に入りらしく、 デッドマンズQで適度に仕事をしながら殺人鬼という要素が抜けきった状態で平穏を求めています。 本来彼はこうする事ができたはずなのになぜ自らをコントロールしようとせずに 殺人を繰り返したのでしょうか。やはり彼は矛盾に満ちている気がします。 しかし、それを成立させてしまうだけの存在。 歪ではありますがやはり殺人欲、ゲスな性癖なくしては成立し得ないキャラでありそれが魅力なのだと思います。 自分が好きなのは…どっちでしょうね?でもどちらかを取ってしまうと彼の魅力は半減してしまう気がします。 わたしにとって彼はそういうキャラクターです。
※追記 ジョジョリオンでも既に死亡しているとは言え、重要人物ですね。 定助と融合するというある意味では主人公の一部として登場。 そして、まさかのジョースター家の系譜入り…。 承太郎のポジションが吉良に置き換わっているのがなんとも意味深ですね。 手フェチだったのは相変わらずですが、まさかのナルシスト化でした。 他人に興味の無い彼としてはある意味では有りの様な気がしますね…結局の所、女性に対しても手にしか興味が無い訳ですし。 「喋らない君は実にカワイイよ」…思えばこの言葉は、彼にとっての女性観を一言で表現したものだったのかも知れません。
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