七五三の時期になりました。 最近、なぜか、自分の7歳の七五三の時の事を思い出します。
狸は着物が好きな子供でした。 それも振袖のような高級な着物が好きでした。 3歳の七五三では振袖を着て、スーツ姿の母と写った写真がアルバムに貼ってありました。 その振袖は親戚のお下がりであり、狸が着た後は近所の年下の女の子に譲られたようです。
そして7歳の七五三を迎える時のことでした。 当然、晴れ着を着るつもりであった狸ですが、両親からは 「今度の七五三は(祖母が縫ってくれた)ウールの着物があるから、それにしよう」 と言われました。 この時、狸は両親が冗談を言っているのかと思いました。 その着物は格子柄の“見るからに普段着”というデザインだったのです。 当時は衣装レンタルなどはありませんでしたし、今思うとたった一度だけ着るための振袖を買うほどの余裕はなかったのでしょう。 けれど幼い狸にはそんな事は思い至りません。 何かの罰ゲームぐらいに思っていました。 子供心に “私って何か悪いことをしたの??” “そのお仕置きで普段着みたいな着物を着なくてはならないの?” と考えました。 でも何か悪いことをした覚えはありません。 その一方で両親からは 「その(ウールの)着物が嫌なら洋服にする?」 と言われ、えっ!?何で洋服なの!?私は晴れ着の着物が着たいだけなのに!!と頭が混乱しました。 晴れ着の着物を着せてもらえないなんて、私、何の悪いことをしたの?? という考えが頭を駆け巡りました。
その後日、母が 「振袖、着られることになったからね」 と言いました。 実は母が親戚の伯母に相談して、従姉のお下がりの振袖を貸してもらうことになったのでした。 絹ではなく安い生地の振袖だったようですが小学生の狸にはそんなことは関係ありません。 振袖を着られることが嬉しくてたまりませんでした。
七五三の当日は小学校の同級生たちが参列していました。 女の子たちは皆、振袖を着ていました。 狸も振袖を着られたことで安堵しました。 写真も撮りました。 帰宅後、母が振袖姿の狸を連れて近所の方に挨拶回りをしました。 「ちょっと帯がほどけかけているんだけど(^_^;)」 などと話していたことを覚えています。 ちなみにその間、狸自身は、長い時間、振袖を着ていると疲れてきて、早く普段着の洋服に戻りたいな〜などと考えていました。
その約20年後、ひょんなことから母が狸に高価な訪問着を買ってくれました。 布から仕立ててくれたものです。 たまたま抽選で当たり、二十万円が割り引きされるというサービスでした。 狸は遠慮したのですが 「あんたにはいつも、お下がりばかりだったからね。一度ぐらい、ちゃんとした物を作ってあげたかったのよ」 と言っていた言葉が心に残っています。
追記(2024/12/26 13:53)
今思うと、振袖を着られたことよりも、母が親戚に相談をしてまで私の我が儘を叶えてくれたことが一番、有り難かったのです。 |