栃木の語り部  栃木語り部の会

昔むかしの話を語る、栃木の語り部。 語り伝えたい話があります。昔ばなし、伝説、言い伝え・・・学校への語りの出前は60校を超えました。児童館、育成会、公民館、作業所、グループホーム、イベントなど声が掛かればどこへでも語りに出かけています。語りながら話も集めています。これからも出会いを求て語り続けていきます・・・
 
CATEGORY:絵本

2010/07/03 7:55:58|絵本
つがの里 ハスまつり

朝のサイクリングで、都賀の里を通った。
入り口の池ではハスの花が見ごろを迎えていた。

沢山の旗も立っていて、「つがの里 ハスまつり」の期間中だった。

午前10時から、いろいろとイベントがあるらしく、明日はカヌーにも乗れるとのこと。

http://local.yahoo.co.jp/detail/event/p10029794/


5時45分位だったが、数人のカメラマンが撮影していた。
何年か前、池の周囲を埋め尽くすほどのカメラマンが、ハスの開花を待ってファインダーを覗いている所に遭遇したことがあった。
ハスの開花時間は種類によって異なり、平均して午前5時~午後3時位だというが、この池のハスは何時頃咲き始めるのだろうか?

カメラマンは5時前からここで開花を待っていたのかもしれない。

それにしても見事なハスで、「極楽」に行った様だった。

ふと、昨日のことを思い出した。
昨日は、寺尾南小学校にお話の出前に行った。ここに行き始めてから8年にもなる。

カエルがテーマのブックトークと読み聞かせと、語りをした。
大型絵本「おじいちゃんのごくらく、ごくらく」も読んだ。

子供たちは、この本をしんみりと聴いていた。
1年生の女の子が、
「おじいちゃん死んじゃったけど、毎日、お線香あげてるよ。」
と言っていた。子どもの清らかな心にいつも力をもらって帰ってくる。

「極楽、極楽」そうつぶやきながら、ハス池を後にした。






2007/11/25 16:25:35|絵本
字のない絵本、ほんとの絵本
ある絵本作家がこう言っていた。
「近頃のお母さんたちは、絵本を教育の道具だと思っているだからなあ~」
 批判しているようでもあり、あきらめているようでもあるつぶやきだった。
 
 そういう絵本への近づきかたは多い。私も含めて・・・
でも、その世界そのものの楽しさは読んでいればすぐに気づくものだ。

 字のない絵本、ほとんど字のない絵本は、絵の素晴らしさだけで人を惹きつけなくてはならない分、質の高いものだけが生き残っている。この楽しさを伝えたくて、読み聞かせのプログラムに入れることもある。ページを繰って見せているだけ。もうこれは「読み聞かせ」なんかじゃない。でも、見ている子ども達の反応でページをめくってもいいタイミングが分かるから不思議。最初は、シーンと静まりかえっているけれど、そのうち、「あっつ!」「あそこにいる!」などなどいろいろな反応が返ってくる。


絵を見ながら読み聞かせている子どもとストーリーを語り合う時間。
自分なりのストーリーを紡いでいく時間。
字のない絵本はゆたかな時間を与えてくれる絵本だ。

 かさ太田大八さんの絵。女の子の持っている赤いかさだけに色がついている。絵だけの絵本。不思議な雰囲気があり、しかも温かみがある絵本。赤いかさをさして、黒いかさを持った女の子がお父さんを駅まで迎えに行く。いろんな角度からこの子を描いているところがまたいい。
1975年に出版されているので30年以上たっている絵本の中の古典。作者の太田大八さんは、「詩人と絵描き」という谷川俊太郎さんとの対談集の中で、この本について語っています。昔は傘を持って、駅までのお迎えという子どもの仕事が存在したと。今は、百円の傘があるからこういうのはない・・・。



 おふろやさん
昭和の銭湯の風景がそのまま絵本になっていた。
これを読み聞かせたところ、息子が銭湯に行ってみたいと言い出して、町の銭湯に行った。


 夏の一日
この絵本の中には、忘れていた子供のころの夏があった。
夏の日差しや、ズック靴で踏んだ土の感触や草いきれまでもが鮮やかによみがえってきた。私は、クワガタを捕りにいく絵本の中の少年に完全に同化して読んでしまった。蝉時雨が頭の上から降ってくるようだった。少ない文。はっきりした色使いの絵が青い空と白い雲を読む人の心にも焼き付けてくれるようだ。

 旅の絵本 シリーズ

安野光雅さんの作品
読めば、いや、見れば見るほど発見がある。
ページをめくりながら親子で会話できる作品。
作品の中に、赤ずきんちゃんをはじめとするお話の主人公や場面が隠されている。この発見がまた楽しい。
花の匂いをかいでいる牛を見つけて、子どもが「あっ!フェルジナンドだ!」と言った時、思わず感激して抱き合ってしまったほどだ。「はなのすきなうし」ばかりではない、センダックの「かいじゅうたちのいるところ」のかいじゅうたちも行進している。
一巻で、子ども達が小川にヨットを浮かべているのだが、遊んでいるうちに見失ってしまう。ずっと後のページで下流の川にそのヨットを発見した時もうれしかった。






2007/10/20 9:34:02|絵本
「ビロードのうさぎ」を読んで涙・・・
 「ビロードのうさぎ」

    マージェリィ・W・ビアンコ原作
    酒井駒子 絵・抄訳
    ブロンズ新社
    ¥1,500+税
 


読書週間ともなると、読み聞かせや語りの出前のピーク時期。

語りが終わって、ふらっと立ち寄った大型ショピングストアーの書籍売り場の中のこれまた、大型絵本コーナーで、古典的名作と聞いていたのに読んだことがなかった「ビロードうさぎ」を読んだ。というより「ビロードうさぎ」に出会ってしまったのだ!

子どもに愛されたうさぎのぬいぐるみが本物のうさぎになる。

読んでいて、不覚にも涙が出てしまった・・・
私の後ろには、3歳くらいの男の子を連れた若いお母さんがいたので、ずっとその場に立ち尽くして、涙が乾くのを待つしかなかった。

とてもセンチメンタルであったかい本。遠い昔、寒い夜にもぐりこんでいった母親の布団のあたたかさと優しさに似た感覚の本。


この概略はアマゾンによると・・・


「子どもに愛されたことで、本物になったぬいぐるみのウサギ。本書は、時代を超えて、作りものを本物に変える愛の力を語り伝えてくれる。クリスマスプレゼントとして1人の男の子に贈られたビロードのウサギは、ほかのおもちゃたちと一緒に子ども部屋に住んでいた。いつか、男の子が自分を遊び相手に選んでくれる日を待ち望んで。恥ずかしがりやのウサギの友だちは、ぼろぼろの革のウマ。子ども部屋の住人の中でも一番かしこいウマは、ウサギにおもちゃたちの願いを教えてくれた。それは、「人間の愛を受けて、『本物』になる」こと。「本物っていうのは、身体の作りのことではないんだ」と、革のウマは言う。「きみの身に起こることさ。人間の子どもが長い間きみを愛してくれたとき、ただの遊び相手じゃなくて、心からきみを愛してくれたとき、きみは本物になれるんだ」
1922年に初版が刊行されて以来、多くのこどもたちを魅了してきた、センチメンタルな古典名作。おもちゃにもきっと心があるはずと思っている子どもたちにはぴったりの1冊だ。(読み聞かせるなら何才でも。ただし、8才以上の子どもたちならひとりで読める)」

 息子が小さい頃、図書館で借りた本の中に、女優の古村比呂さんが書いたくまのぬいぐるみの話があった。
 愛されていた熊のぬいぐるみも、飽きっぽい子に忘れられて押入れにいれられてしまう。そこで、ねずみにかじられててボロボロになっていく・・・
 息子は「ねえ、かわいそうだよ。助けなくちゃ・・・」
と、本を閉じた後も心配していた。一週間くらいそのことを口にしていた。
 作者は、ものの大切さでも教えたいという意図で書いたのかもしれないが、なんてひどい本なのだと思った。
 この本はぬいぐるみの熊の目線で書かれているからある意味、井戸にとじこめられた貞子にも似た恐怖があった。作者に熊が救い出されて幸せになる続編を書くよう訴えたかった。


 子どもにはやはり、ハッピーエンドのお話がいい。と、先日、お話仲間と話したばかりだ。

 恐ろしいやまんばが出てきても、お話の中では、ヨモギの汁でとけてしまったり、和尚様の知恵で退治されてしまって、物語の外には出てこない。グリムの昔話でも魔女や魔物は退治されて終わる。
 来週も、ハッピーエンドの昔語りをしなくては!と思った。

ああ、そうそう、勿論「ビロードうさぎ」は購入した。どこかで是非読み聞かせたい






2007/10/18 19:26:11|絵本
栃木の長者伝説を考える
  栃木の長者伝説を考える

   佐野の朝日長者

むかし、赤見に朝日長者とよばれる長者が住んでいた。この長者は、出流原弁天様に、毎日おまいりしては、子どもが授かるよう祈っていた。
長者の願いがかなって、ある日かわいい玉のような赤んぼうが生まれ、鶴姫と名づけられた。長者は目に入れてもいたくのかわいがりようだった。姫は美しい娘にそだった。ところがある日姫が神隠しにあって姿を消してしまった。長者が嘆き悲しんでいると、弁天様からのお告げがあった。
「おまえの娘は、弁天池の鯉になって苦しんでいる。かわいい娘を救いたいなら、お前の持っている金銀財宝を全部捨てなさい」と。
朝日長者は次の日、村人をたのんで、すべての財宝を赤見の山に埋め、
「朝日さす、夕日輝くこの山に、うるし千ばい、朱千ばい」という歌を残したという。

朝日長者や夕日長者は全国的に残されている長者の名だが、話の中身はそれぞれだ。

     今市の一夜長者

これは、朝日長者が一夜にしてほろびてしまったいきさつが伝えられている。

朝日があたるところに屋敷を構えているところから「朝日長者」、夕日があたるところに屋敷をかまえているから「夕日長者」というのも一般的だ。

「朝日長者」と「夕日長者」の娘と息子が恋に落ちる話も伝わっているが、いつも結末は悲劇的だ。


さて、鹿沼で民話の語り部をしている友人が、公民館で高齢者に地域に伝わる伝説を語ると、「このはなしの長者はあの家だ」「この長者のいえはどこどこだ」と実名入りで教えてくれるのだそうだ。鹿沼の歴史の深さを感じる話だ。こういった話を引き出せるのは、彼女のあったかい人柄と民話語りがあってのことだと思う。

昨日、都賀町のきのこと山菜とりの名人Nさんから長者の話を聞いた。
粟野街道沿いに、「まぐそ長者」と呼ばれる長者屋敷がある。むかしは粟野街道を材木を積んだ馬車が往来した。この馬車馬が道に落としたまぐそ(馬ふん)を自分の田畑の肥やしにして土地を肥やし、長者になったという。今はやりの表現をとれば「有機農法」であり「リサイクル」であり「地球にやさしい」長者様なのである。

バブリーなIT長者とは違って、昔の言い伝えには、財をなしたひとの努力や知恵が語りこめられていて興味深い。

このほかにも、屋敷のまわりにシュロの木が沢山生えているところから「シュロの木長者」と呼ばれる長者屋敷があるという。


財をなした長者のいわれ話はいろいろな所に残っている。
伝説に出てくる長者とは、少し趣を異にしているが、現代判の「長者」や「大尽」がいる。

近年、県内のある有名なお祭りの屋台で、ほくほくの美味しい「じゃがバタ」を販売し、それが売れに売れて長者屋敷を建てた人がいてこの家を「じゃがバタ長者」とか、「じゃがバタ御殿」とか言うのだそうだ。そういえば、長蛇の列に並んでおいしいじゃがバタを食べた思い出があるが、あのじゃがバタの作り主だったのだろうか・・・






2007/10/09 19:56:15|絵本
ねずみの楽土 山形県に伝わる昔話
 
山形県に伝わるむかしばなし、「ねずみの楽土」
 これは一般には「ねずみ浄土」として伝わっている話の類話です。



  ねずみの楽土


昔むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがありました。

ある日、おじいさんが、
「おばあさんや、今日は山へたきぎひろいに行くから、お弁当を作っておくれ」といいました。おばあさんは、黒豆と白豆を煮(に)て、それからおむすびも作ってお弁当に入れました。

おじいさんはそれをもって、山へ出かけました。お昼になったので、おじいさんは小高いところでお弁当を食べようとして、お弁当のふたをとりました。すると、黒豆がころころころがって、穴の中に落ちてしまいました。

そのとき、穴の中から、
黒豆つんばい、ちゃかつんばい、ぽーつ、ぽつ
という声が聞こえてきました。
(あっ、おもしろい)と思って、こんどは白豆をその穴に入れてみると、
白豆つんばい、ちゃかつんばい、ぽーつ、ぽつ
という声が聞こえてきました。
(あれ、おもしろい)と思って、おじいさんはお弁当のおかずの豆をみんな穴の中へ入れてしまいました。

そればかりか、おむすびまで入れてしまうと、

おむすびころころ、すってんしゃんぽーつ、ぽつ

という声が聞こえてきました。(これはおもしろい)と思っているうちに、おじいさんも穴の中にころがり落ちてしまいました。

その穴の中にはねずみがいました。そこには大きなざしきがあって、めずらしい宝物(たからもの)がたくさんありました。ねずみは、
「よくいらっしゃいました」
といって、おじいさんを酒やさかなでもてなしました。そのうえ、おじいさんは、おみやげに宝物までもらってかえりました。

これを聞いた、となりのよくふかじいさんは、おばあさんに黒豆と白豆をにてもらい、おむすびも作ってもらって山へ行きました。
 穴に着くなり、よくふかじいさんは、穴の中に黒豆を入れてみましたが、何の声も聞こえてきません。
白豆を入れてみましたが何の声も聞こえてきません。
 そこで今度は、おむすびをむりやり穴の中へおしこみました。やっぱり何の声も聞こえてなかったので、よくふかじいさんは、自分で穴の中にころがりこみました。

 するとそこには、聞いていたとおり、ねずみの宝物がいっぱいありました。

よくふかじいさんは、すぐに宝物がほしくなりました。そこで、ねずみをおどして宝物をもらってかえろうとして、
「ニャーン」といいました。

そのとたん、穴の中がまっくらになり、やっとのことでいのちからがらにげてきましたとさ。


 「ねずみ浄土」では、欲深じいさんは、出口がみつからずに、とうとう、もぐらになってしまいましたとさ。で終わります。

「だからな、あんまり欲かくもんじゃないんだぞ」
とむすんで、教訓話として語る人もいます。






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