表千家 梅月軒 茶道教室
 
2016/12/08 9:48:12|茶事茶会
峯巖院様を偲んで
銅鑼の打音が静まると大読経が始まり、大信寺の境内に厳かな空気が漂う。

今年も御家流茶道16世・安藤綾信家元からのお招きにより、徳川忠長卿御遠忌に
謹んで参列させていただいた。

忠長卿は諡(おくりな)を峯巖院という。高崎の地で今もなお安藤家が
ご供養されていることについては、去年のブログに記したとおり。

厳粛な法要の後、家元と次期家元、松浦元高崎市長に遅めのご挨拶を
いたしましてから、参列者と忠長卿の廟へ向かいます。



峯巖院殿御宝塔


廟に香華を奉げ御霊を弔い、場所を書院に移し峯巖院様御影に献茶を奉じ
偲びます。これを献茶式といいます。

今年は安藤綾冠次期家元(後嗣)による献茶のお点前


艶やかな袱紗捌きが特徴的でつい見入ってしまうところですが、
最後に袱紗を台子の脚に括り付けるのが風流。

JR高崎駅から近く、そこから聞こえてくるSLの汽笛が室内にも響くので、
静寂の中にノスタルジックを感じた参列者も多かったことでしょう。

峯巖院殿御影


本堂の様子


今年は大河ドラマ「真田丸」が何かと話題の年。
私も毎週欠かさず正信・正純父子(敵役だが)の活躍を妻と楽しみに観ている。

家元もそんな真田丸にちなみ、本日の床のお軸に安藤家所蔵の片桐且元の
消息を選ばれたとのこと。且元といえば、大坂方と徳川方の折衝役として、
ドラマのように胃の痛い日々を過ごしたことでしょう。

国家安康・君臣豊楽で有名な方広寺鐘銘論争では上野介正純に論破される且元。
翻弄されやすくあわれなイメージの且元ですが実際はどのような人物であったのか、
人となりが垣間見れる貴重な書状を拝見させていただいた。

安藤重信公宛て片桐且元書状


また、薄茶席のお道具すべてに「酉」があしなわれているのが酉好きの私には
おもしろいと感じる趣向でした。

鶴、鳳凰、鶏、雀、雷鳥・・・


亭主役の女性の帯まで鶴柄だったことは偶然とのこと。
お軸の雷鳥図、こちらも将軍家・安藤家に由来ある品として家元が直に説明しに
来てくださった。

来年は酉年であるから、ゆく年くる年感があって師走月であることを堪能さ
せていただいた。

ここで家元が「お見せしたいものが」と、徐に取り出された「安藤家展」図録に
目が輝く。安藤家・本多木村家の歴史談義に周りから掛けられる声も聞こえて
いないくらい交歓、ここだけ別世界となっていたようです。

図録にあるいくつかのお道具も本日の会期中に


この度も厳粛で格式ある追善供養茶会にお招きいただきありがとうございました。
また、当家に対しましてもこのようなお気遣いを賜り恩沢洪大に存じます。







2016/10/11 19:10:05|茶事茶会
小江戸抹茶席
歌麿を活かした街づくりイベントとして、10月1日から10日まで歌麿まつりが開催されました。

同日開催の歌麿夢芝居(栃木文化会館)は連日満員御礼の大盛況だったようですが、こちら巴波川沿いの横山郷土館においては、古都の風情を堪能していただくために抹茶席を設けました。言うなれば、歌麿が愛した栃木町の良き時代(ロマン)で一服がコンセプトなわけです。

文化庁登録有形文化財と長ったらしい肩書が付いておりますが市民にはおなじみ横山邸


去年に引き続き、当社中が席持ちを務めます


と言いましても去年は、栃木市からお話をいただいて準備を進めていた矢先、9月の
豪雨に見舞われ巴波川が氾濫。横山郷土館も浸水被害を受け抹茶席は中止になりました。

今年も万事に備えて準備を進めてきましたが、昨日までの荒天から好天に恵まれました


会場となる大広間での準備風景


茶席は午前に1席、午後に2席のスケジュールで観光客をはじめ、顔なじみの方にも
お越しいただいておりました。

野鳥のさえずりと庭園からの心地よい秋風。終始、和やかな爽秋の時間を過ごして
いただけたことでしょう。



栃木観光のお供になるように、おもてなしの心も添えて抹茶をお出しします


横山邸といえば名所の中庭。水戸藩士であった横山定助が武家を嫌って商人を志し、この栃木で荒物商や銀行業を営みました。その横山家の隆盛を物語る栃木屈指の日本庭園です。

「あら先生、床のお花は飾られていないのですか?」な〜んて問答はありませんでしたが、

本日は床に花を生けず、このすばらしい日本庭園を床の花に見立てた趣向にいたしました




塚田歴史資料館と岡田記念館の間にある横山邸ですから、川沿いが賑わうメインの
歌麿道中にこの抹茶席をもってくると、喫茶を求める観光客が増えそうな気がいたします。

お弟子さんたちも沈着にお点前、水屋作務を熟していました。日頃の稽古の成果が
発揮できたようです。また、勉強にもなったことでしょう。お疲れさまでした。







2016/06/10 19:30:00|茶事茶会
第三十回 柳営茶会
文京区の護国寺茶寮において、第30回となる柳営茶会へ長男と共にお伺いいたしました。

東京は明け方まで雨がパラついていた模様ですが、梅雨入りが発表されていたとは
露知らず。会場に着いたころには曇り空でスーツ着用には過ごしやすいなんて
思っておりました。

メトロを出てすぐの護国寺山門


これはこれは。山門を潜ると実写版眠り猫がお出迎え


新書院で受付を済ませますと早速、柳営会の方が旧平戸藩松浦家伝来の
鎮信流の濃茶席へご案内くださいました。

不昧軒


席入りの時間まで待合から不昧軒の庭園を拝見し寛いでいます








松浦章ご宗家には、はじめてお会いしましたがユニークな方で。私などは、なかなか
ユーモアなことが言える性分ではないので、常にウケを狙って周りを楽しませることに
長けている長男などは、一見ふざけているようで、実は亭主役や師範役に向いているの
かもしれませんね。

濃厚な濃茶をいただき、大名松浦家の武家茶道を堪能。著名な静山公の書も
拝見することができました。

続いては、本日の柳営茶会にお招きくださいました旧磐城平藩安藤家伝来の
御家流の薄茶席へご案内いただきました。

月窓軒




御家流宗家の安藤綾信様とは去年12月、高崎大信寺の徳川忠長卿追福茶会で
お会いして以来、こうして再びお招きいただいた次第です。



月窓軒の床には、安藤様がお強請りをしてコ川恒孝様に御作していただいた
花入れが飾られておりました。

銘「徳」


この日の御家流お席のテーマは「大奥」。江戸城大奥のきらびやかなイメージを
再現されたお席でしたので「さっきこの辺に居らした男性のお客さんからも『何だか
わからないけど楽しい!』と褒めていただきました」とご宗家からご挨拶があり、
皆様の笑いを誘っておりました。

そのテーマ通り、お道具も安藤家伝来の大奥や将軍家御台所ゆかりの品々で彩られ、
なるほど男女問わず「何だか楽しい」。私は正客でしたが天目台でいただいた茶碗は
何と綱吉公や吉宗公もお使いになったという萩焼の茶碗で驚愕いたしました。

まさに一期一会の茶碗、このご配意には大変栄誉な事と思いました。

金森宗和公作茶杓の由来をご説明くださるご宗家


忠霊堂で点心をはさみ、最後にご案内いただいたのは小堀遠州流の濃茶席です。
「小堀遠州」お茶を知らない人でも一度は聞いた事があるのではないでしょうか。

コ川ご宗家来席のため急遽生けたという二葉葵


柳営茶会に相応しい将軍家ゆかりの牡丹之間とお道具の数々


質素な侘びさびとはまた趣が異なる、きれいさびを堪能。

小堀宗圓16代家元と


今回、ご案内をくださった(柳営会)丸根松平家当主の信次様


茶人でもある氏とは書籍「子孫たちの証言」で共に掲載された間柄でもあります。
そんな話もちらほらと弾みました。お世話になりました。

ご厚意いただいた安藤様におかれましては御礼の申し上げようもありません。

ご深慮いただきました柳営会の皆様には色々とお計らいいただき、衷心より
御礼申し上げます。

武家茶道3席の正客としてご配意いただき、おかげをもちまして合縁奇縁ある
有意義な仲夏の一日を過ごすことが叶いました。







2016/06/03 19:10:00|些事ブログ
戸田展
招待券を頂いていたので「戸田展」を観覧して参りました。

宇都宮藩主戸田氏−その歴史と文芸−


特筆すべきは、南蘋派(なんぴんは)の画人でもあった戸田忠翰(ただなか)公の作品。

公の作画初期から円熟期まで、初公開品も含めた計34点の画軸を展示。

それはそれは目を見張るほどの画才ですばらしいの一言。
所謂、殿様芸を超越した緻密な花鳥図に、3度もブースを往来してしまいました。

異なる雅号や烙印のひとつひとつを取って見ても、実にセンスのある御人だったのだなと感心しましたね。

また、おもしろいのが一点一点の解説パネルに込められていた解説者のコメント。

例えば「徐々に上手くなっています」「だいぶ上手になりました」
「ムキムキの白鷺」「師との合作なので気合い入ってます」などなど。

あはは、まるで学校の通信簿の評価のようでニンマリとしてしまいました。学芸員さんなりの忠翰公へのエールのようにも思えて楽しかったですよ。

現・戸田家当主の忠邦さんとは、宇都宮城址まつりでお会いした時にでも、所蔵品についてお話を伺いたいと思います。

東京での若沖展に参ってしまっていたのに対して、今展示会は存分に堪能することができたのは言うまでもありません。







2016/05/12 20:38:05|些事ブログ
若沖展
東京都美術館で展覧中の「若沖展」に出かけたのですが、

着くなりびっくりしましたね。


なんとチケットを買うのに1時間待ち。


さらに美術館へ入るのに3時間待ち。


初夏の暑さで気分を悪くしてダウンする方、途中リタイアする方まで。


さらに入館してから展示室まで30分待ち。

待つこと4時間半、やっとの思いで展示室に入ったのもつかの間、足の踏み場もないくらいごった返しており、観覧どころではありませんでした。

30年前にまだ幼かった息子たちを連れて行った「つくば博」など問題ではないなと、今回ばかりは。

平日にもかかわらずこの混み様では、土日や最終日はどうなることやら。主催者側には、少し混雑緩和を考えてほしいところだ。

しかし、それだけ伊藤若沖という奇才の絵師が、現代人をも魅了してやまないということでしょう。

唯一手に入れたパンフレット。


出来れば近くで見たかったですね。